ネコたちに恋の季節が到来した。


オンナノコたちは遠くまで通る悩ましい声で呼びかけ、オトコノコたちはただでさえ少ないオンナノコを巡って、地域の顔なじみはおろか恋の旅猫 ( よその縄張りからやってきたライバル ) たちとまで闘わなくてはならない。

まさに試練の季節である。



うちの周囲にはオトコノコが多く、毎晩オンナノコと縄張りを賭けての抗争があちらこちらで繰り広げられている。

昨夜の舞台は、我が家の庭だった。

さっそく、掃出窓を開けて至近距離から観察することにする。



最近、お隣さんとお向かいさんに餌場を得ることが出来るようになったノラネコ。

それまでの荒んだ生活を如実に表すボロ雑巾のような毛並みも、栄養事情とともにちょっとだけツヤが出てきた。


しかし相手の旅猫は、若さもさることながら毛並みが美しい。

普通の灰トラなのだがビロードのような短毛、しかも顔立ちまで整っている。

さらに分が悪いことには、このネコ、かなりの実力派である。


本当に強いネコは、声を荒げない。

落ち着いて相手を正面からみつめ、激しい挑発にも 「 クルル・・・クルルル・・・ 」 と喉の奥を小さく鳴らすだけである。

恋の季節が始まって幾日というこの時期、身体に傷ひとつ負っていないのは、その強さの証だろう。


片や弱いネコも自分の分の悪さはよく解っているのだが、オトコノコたるもの、出会ってしまった以上は闘わねばならぬネコの悲しい性。

総毛を逆立てて斜に構え、頭を低くして相手を睨みつけるが、口元に吹き出る泡と周囲を見られない余裕のなさが傍目にもハッキリと見てとれる。


もう何度もやりあっていると見える身体中の傷が痛々しく、普段ふてぶてしいノラとはいえ、ちょっと可哀想なほどである。

もちろん、結果は有無を言わさぬ旅猫クンの圧勝であった。




こうして若いオトコノコがこぞって恋の旅路に出るこの季節。

昨日発行の週刊タウン誌にも、オトコノコの迷いネコを探す記事が満載だった。


そんななかの1件が、コレ。


namenekoka


ヤンキーである。

ナメ猫を地でいく筋金入りである。

写真には頭しか写っていないが、なんとなく首から下は学ラン姿であってほしい面構えである。


きっと一睨みで旅先のネコたちを牛耳ることができるだろうから、旅に出たまま戻ってこない可能性が高いのではないか・・・。




よそさまのネコに、オトコの猫生を垣間見る旅の季節なのだった (--)