給料日だった。
U くんの給料も出したのだが、彼は入院中である。
かといってわたしが持っているわけにもいかず、仕事で外出したついでにバスに揺られて見舞いに行ってきた。
病院は <聖フランシスコ病院> ・・・いかにも長崎チックな名前である。
ここだけではなく周囲にはキリスト教系の名前を持つ建物や施設が多く、もちろんそのほとんどが教会を併設しており、ときどき見られる墓にも十字架が立っている。
※ 注
十字架の立つ墓というと映画で見るようなものを想像しがちだが
長崎では違う。
普通の縦長の墓石の上に、石の十字架が立っているのである。
西病棟の2階に、U くんの病室はあった。
3人部屋の、よりにもよって一番奥・・・窓際 (--)
手前のお二人に会釈をしながら奥へとすすむ。
「 よっ 」
カーテンのかげからヒョイと顔を出したら、U くんが両腕を差し伸べた。
誰が抱きつくというのか。
「 いや、そこまでサービスはしないからね 」
「 勢いで来るかと思いました 」
左肺を手術したばかりで、まだ引き攣れるような、不自然な筋肉痛みたいな痛みがあるという。
右腕には、チューブの先に大きな点滴のビニールボトルがつながっていた。
痛々しいこと、この上ない姿である。
「 とにかく仕事のことは忘れて、ゆっくりやすんでね 」
そう声をかけてから気がついた。
眼鏡だ。
U くんが眼鏡をかけている。
「 言ったじゃないですか、普段はコンタクトだって 」
そういえば聞いた覚えがあるような、ないような・・・。
「 わたし、眼鏡かけてて長身細身な人って大好きなんだけど 」
「 うん、うん♪ 」
「 ・・・U くん、見事に眼鏡が似合わないんだねえ 」
落胆激しい患者が、約一名。
見舞いになったんだか、ならなかったんだか (--)