初めて自分ひとりで作った、料理らしい料理は何だったろうか。


記憶の細い細~い糸を手繰ってみる。


なにしろ我が家は母も父もお料理上手で、かたちばかりでも包丁を握るようになって久しい現在でさえ、母が作ってくれていた <お煮しめ> や <まぜごはん> など味を再現できたことは一度としてないし、高校生の頃に父が気まぐれにお弁当を作ってくれた時など蓋を取った瞬間に級友から 「今日のお弁当はお父さんが作ったんだね」 とツッコまれるほどの出来映えだった。


たぶん。

たぶんだけれども、わたしがひとりで作り上げた最初の料理らしい料理は <そうめん丼> であったろうと思う。


<そうめん丼>


この字面から想像されるのはどんな料理なのだろう。

以前ともだちに話したときは、親子丼の具がそうめんの上に乗っているのを想像したらしかったが、そうではない。


そうめんが、具なのである。


出汁はカツオ。

くし切りのタマネギを煮て、茹でたそうめんを入れる。

ほどよきところで割りほぐした卵を流しいれて、蓋をし蒸したのち、丼によそうのだ。


丼の中身はもちろん、白いごはんである。


つまり、炭水化物の上に、炭水化物たっぷりの具。

栄養学的には、ごはんでごはんを食べているようなものだろう。


わたしはそれを両親に食べさせた。


にこにこ笑って感想を待つ出来の悪い末娘に、父は言った。

「うまくできてるじゃないかー」


それを聞いてさらに笑顔になってしまった物分りの悪い末娘に、母は言った。

「ちょっとあまい(味が薄い)けど、よくできてるねえ」







涙なしには語れない親心・・・ (--)