問 「法隆寺を建てたのは誰でしょう」
答 「大工さん」


子供の頃、こんなナゾナゾをやったりやられたりといった経験は誰しもあるだろう。


わたしが小学生の時の先生は、そんな答えを懸念したのかもしれない。
テスト問題はこうなっていた。


<聖徳太子が建てた寺院は何>


かしこい。


さてテストが終わって、後の席の人から前の席へと回答用紙が集められているとき、クラスの I くんが声高らかに言った。

「聖徳太子が建てたとは法隆寺やろー?」


何事かと皆が振り返ると、鬼の首を取ったように続ける I くん。

「Cはさ、答えにS念寺って書いとったばい」


S念寺というのは、町にある浄土宗のお寺である。

答えが思い出せなかったCちゃんは、空欄で出すよりはと、頭に浮かんだお寺の名前を書いたのだろう。

いいじゃないか。 正しい児童の姿勢だ。


しかし、どうしても面白い話題であるわけで、クラス中に笑い声が沸き起こってしまった。

自慢げにCちゃんを見下ろす I くんの顔。

I くんは運動神経もいいし成績もいい方だったのだが、ガキ大将というよりは虐めっ子。
前年に本当のガキ大将であったKくんが転校してしまってから、どうも自分が学年のトップだと勘違いしてしまった感があった。


今にも泣きだしそうなCちゃんを見て、わたしはため息をついた。

こういうのはどうも嫌いだ。


「なんで I くん、その答え知っとーと?」


「見たもん」


「Cちゃんは I くんの列じゃないとに? いつ見たと?」


青くなる I くん。
しーんと静まる一同。

成績のいい彼だからカンニングではないのだろうが、それでもテスト中に他人の答えを覗き見たのは間違いないようで、バツの悪そうな彼が今度は泣き出しそうになってしまった。


身を以って知る、自業自得。







それにしても昔はあったんだなあ・・・小さい正義感。