生前、父は困っていた。
左の耳掃除をし始めると、必ず咳き込んでしまうのだ。

耳掻きはあれで結構な硬度があるから、咳き込んだ拍子に鼓膜を傷つける可能性もある。
柔らかければいいのかと綿棒を突っ込んでみても結果は同じで、これでは思うように耳掃除もできやしない。


そんなことを思い出したのは、姉が耳掃除をしていたからだった。

なんと姉は、右の耳を掃除し始めると咳き込むのだ。


私 「・・・いつから?」
姉 「え?げほっ むかしからだよ。げほげほ」





ああ、こんなところに、紛れもない父のDNA。