母子家庭の幼い姉妹が自宅で殺害される。死体発見時から母親が行方不明のため、母親犯行説が浮上。日本新報甲府支局の南は本社栄転を掛け、特ダネを狙って精力的に事件情報を収集。警察のネタ元から犯人の情報を掴み、紙面のトップを飾る記事を書いた。だがそれは大誤報となる。巧妙な罠に翻弄されながらも、新聞記者としての矜持と野心の狭間で真実を追う男の戦い。組織は自分たちを守る際、個人を切り捨て、その中で個人は身を守るにはあまりにも弱い。また弱い個人も野望・野心によって判断を誤ってしまい、「危険な罠」はそのようなところを狙って仕掛けられている。南もそのような心理の中で事件に巻き込まれていく。
南には「裏を取る」という決定的なミスがあった。そこについてどのように考えていたのか?事の重大さについて軽く考えていたように思えた。記者の常識と世間の常識の違い、今の若い世代のものの考え方が背景にリアルに描かれていると同時に不祥事があったとき、組織はどのように鎮静化させていくか、その中で個人は犠牲となることも、生々しく書かれている。また、反面で今の日本が置かれている格差社会の問題を、犯罪に巻き込まれた母子家庭とそれを取り巻く環境を通して物語に半得させている。政治家・官僚・新聞社・加害者・被害者・ネット・様々な要素が絡み合って行く読み応えのある長編ミステリーです。