女はいっそ可愛らしくにっこりと笑った。
「はい、そうです。だからあなたたちは私の監視下に置く必要があったのです」
「じゃあなんであいつらを…」
―殺すことができなかったのか。
殺したいほど憎らしい奴ら。…ランタルナを苛めたあいつらを。
女は残念そうに言った。
「あなたの力はそんな目的で使用するものではないからです。残念ですが彼女には一度、そういうめにあってもらう必要がありました。―あなたの能力を引き出すためにね」
「…知っていて見殺しにしたのか」
「おや?それは心外ですね。実は、私も最近まで幽閉されていたのです。私の夢想人があそこまで汚らわしい行為を行うとは思いもよりませんでしたが、結果それがあなたを目覚めさせたのですよ」
シリウスはだんだん自分がいらついてきていることに気が付いた。
能力?
目覚めた?
ふざけるな。そんなくだらない理由で、あいつは苦しい思いをしなきゃいけなかったのか。
女は急に眉をひそめた。
「そんな怖い顔をするのはやめてください。あなたのせっかくの綺麗な目が台無しです」
「お前は誰だ!幽閉って…誰にされていた!?」
尖ったシリウスの声に、女はため息をついた。
「私の名前は…そうですね、仮に『ラプス』とでも名乗っておきましょうか。訳があって、本名を明かすことは許されていないので。―そして、私を幽閉していたのはあなたたち夢想人が『王』と呼ぶ者。私はとある出来事をきっかけに、長い長い刑期を過ごすことになったのです」
続く