下手な鉄砲は最悪に当たる
今年上半期最大のサプライズと言っていいだろう。北米公開直後から、並み居る大作群と互角の争いをしたにとどまらず、それ以降も興行成績を落とさず破格の大ヒットとなっている本作。
作りはいたって単純だ。ある青年が憧れの女性を振り向かせたいと雑貨店で買ったまじないグッズを使ったら、とんでもない効き目で周囲のものすべてを巻き込む大騒動になるという話。大騒動の顛末はホラーテイストで作られているので、ハラハラドキドキの展開から目が離せないという寸法だ。
主人公のベアは、心優しい青年だが内向的な性格で、憧れであるバイト仲間のニッキーに想いを打ち明けられずにいる。
冒頭はそんなベアの告白のシーンから始まる。真剣な表情で愛を語るベア。しかし目の前にいたのは、ヒロインというのにはちょっと・・・という女性。と同時に横から男性のNGの声が。行きつけのダイナーの店員さんを使って予行演習をしていたというオチだ。
あれ?何かベタな展開に違和感を覚える。その後、バイト仲間4人でバーに飲みに行くことになり、帰り道で運命の瞬間が訪れる。
早く帰りたいというニッキーを車に乗せて二人きりになるまではよかったのだが、ベアにはその先へ進む勇気がない。会話もぎこちないままニッキーの自宅に到着。「何をやっているんだ、俺は」とまじないグッズであるワンウィッシュウィローを取り出す。引き返そうと車のエンジンをかけると、家の扉の前でこちらを見つめているニッキーの姿に気付く。
そこからのニッキーは、人が変わったかのようにベアのことだけを見つめて、常にそばにいようとするようになる。ベアが少しでも離れようとすると大げさに泣きわめき、手が付けられない有様になっていく。
いろいろなサイトなどで事前に見た紹介記事は決してネタバレをしているわけではないが、本作は予想した内容のとおりに進んでいく。
それぞれの場面はおもしろい。画面の隅にぼやーっと映るニッキーが明らかにこちらを見続けていたり、非番のニッキーがベアに「行ってらっしゃい」と言うが玄関の扉が粘着テープで固定されていたり。
しかし、ワンウィッシュウィローは飛び道具のままで特段の深掘りはなかったし、いわくがありそうな愛猫の死も話の核心には繋がってこなかったし、途中の場面でニッキーの内側から助けを呼ぶ声がするが、そこから発展せずに最後まで自意識は押し込まれたままだし、物語の展開におけるトリック要素がないので、感嘆するような次元の驚きは見られない。つまり、基本ベタなのである。
ベタは言い換えれば王道でもあるわけで、それがこれほどまでの大ヒットにつながった要素の一つなのかもしれない。ただ、こうなるだろうなと思った人物が(手法はどうであれ)そのとおりになると、映画を観ることが確認作業のようになってしまって、個人的には少し残念であった。
ただ、そうした状況があったとしても、本作が間違いなく観ておくべき1本と言えるのは、ニッキー役のI.ナヴァレッテの怪演である。まじないに取りつかれて以降のジェットコースターのような感情の起伏、何かを貼り付けたような不気味な作り笑顔に代表される数々の顔芸。デジタル加工によるものではないとすれば凄まじいの一言である。いくら憧れの女性だったとしても、幻滅を通り越して絶望に包まれることだろう。
本作がある意味よくできていると思うのは、登場人物に同情するところがあまりないというところである。そもそもベアの煮え切らなさというか、弱い部分につけこまれて起きてしまったことだし、ニッキーは被害者であるが、他のバイト仲間ともども実はあまり素行に問題がなかったとは言えず、結構みなさん自業自得要素あるよね、と思ってしまった。
(75点)
