弐位のチラシの裏ブログ

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 ゲーム大好きな大阪のオバチャンがチラシの裏的なブログを書いてます。

 

 

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 1週目クリア
 倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
 1人目の福沢のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
 4人目は荒井のシナリオ:いみぐい村→エンディング№74・75を見る
 5人目は細田のシナリオ:トイレの恋→エンディング№270~272見る
 6人目は新堂のシナリオ:吉田ババア→エンディング№001~005を見る
 7話目はシナリオ:うしろの正面:エンディング№426~431を見る


 2週目開始!
 倉田のシナリオ:呪われたロッカー→エンディング№376~383を見る
 1人目は岩下のシナリオ:ポプリ→エンディング№213~217を見る
 2人目は細田のシナリオ:サトリサマ→エンディング№262~265を見る
 3人目は福沢のシナリオ:彼と彼女の秘密→エンディング№140~142、144・145を見る(143は後で見る予定)
 4人目は風間のシナリオ:ひとり七不思議→エンディング№181~187を見る
 5人目は新堂のシナリオ:ゲーム実況怪談→エンディング№53・54を見る
 6人目は荒井のシナリオ:時田君の自主製作映画→エンディング№58~61・63(62は後で見る予定)


 語り部6人の話が終わったが、7人目はまだ姿を見せない。
 「全員の話が終わったぜ。どうするんだ?」
 新堂に促された。どうしよう。
  • もうしばらく待ちましょう
  • 荒井さんの意見を聞きたい
  • 帰りましょう
 シナリオ:交換日記の怖い話開始!


 最後に話をしてくれた荒井の意見を聞いてみよう。
 「あのう、荒井さん、何か意見はありますか?」
 「意見?僕にこの状況でどんな意見を言えというのですか?」
 お開きにした方がいいな、と坂上が思って、立ち上がろうとした時だった。
 「こんにちは」
 突然ドアが開き、まだ幼い印象の残る女の子が立っていた。元木早苗だった。
 「あっれ~、早苗ちゃんじゃない!」と福沢が驚いて声を上げた。
 「あ、玲子ちゃん、こんにちは~。他の皆さんも初めましてです~。どうぞ、よしなに~」
 「あ、もしかして7人目って、早苗ちゃんのことだったの?」
 「えっと、私は・・・」
 「私はこの集会に呼ばれたわけじゃないの。
 それは・・・帰っちゃダメ!」
 元木は突然振り向くと、ドアから出て行こうとする新堂を厳しい口調で呼び止めた。
 「俺はもう帰るんだよ。お前が7人目で最後の話をしてくれるってんなら別だけどな」といらついた口調で新堂が言った。
 「私は7人目じゃないです」
 「じゃあ帰るぜ」
 「今帰ると、あなた死んじゃいますよ」
 「変な冗談言ってると、俺も本気で怒るぜ」
 「私が7話目をしてあげます。7人目が来る前に」
 「本当か?」
 「ええ、来ますよ。この中の一人を殺しに」
 元木は、坂上のことを見てにっこりと笑った。


 今度は岩下が帰ると言い出した。
 「あなた、死んじゃいますよ」
 「うふふ、私が殺されるっていうの?もしそんな奴がいたら、死ぬ前に先に殺してあげるから大丈夫よ」
 「一人でも帰ると、この中の誰かが間違いなく死ぬの。だから、帰っちゃだめなの。呪いを解かなきゃならないから」
 元木は誰も逃がさないように部室の前に立ちはだかった。
 「皆さん、席に戻ってください」
 全員が席に座るのを確かめると、7人目のために用意された席に元木が腰を下ろした。
 「私が最後の話をします。坂上君、それでいい?」
  • お願いします
  • 7人目を待ちましょう
 「おばあちゃんが教えてくれたの。急いで行かないと、大変なことになっちゃうって。
 あ、そうだ、坂上君。私があなたを助けにきた理由。私と結婚することになってるの。だから、おばあちゃんが助けにいきなさいって言ってたの。
 あなたが死んじゃうと、私、一生結婚できないんだもん。
 これは運命だから。私との結婚を約束してくれるなら、あなたを守ります。それから7話目を話してあげるの」
 「僕で良かったら、喜んで」
 岩下と荒井は興味なさそうに俯いて黙ったいたが、他メンバーは笑って祝福してくれた。
 「皆さん、ありがとうございます。それじゃあ、話すね。
 ・・・皆さん、初めまして、私は1年も元木早苗といいます。
 この集会に呼ばれた7人目ではないんですけれど、7人目が来る前に私が最後の話をしますね。
 これは私のおばあちゃんから聞いた話なんです。私のおばあちゃんは私の中に住んでいるんだけれど、時々私の身体から抜け出ていっちゃうんです。
 それでね、いろんなものを見てくるんですよ。これは、そのおばあちゃんが見た話。つい、最近起こった話なんですよ」


 この学校に神田拓郎という生徒がいた。神田には彼女がいたが、とっても嫉妬深かった。
 スマホは毎日チェックするし、彼のスケジュールは全部把握していないと気が済まない。
 女の子が側に近づいただけで、しつこく問い詰めたり、ヒステリーを起こして異常に怒ったり。
 神田はそんな彼女が怖くなり、別れたいと思うようになった。
 そんな時、神田のことを好きだという女の子が現れた。
 その女の子は、神田に近づくようになったが、もちろん嫉妬深い彼女は、それを知ってものすごく怒った。
 でも、神田は目を盗んでその女の子と付き合うようになった。でも、さらにややこしいことに、その女の子に片思いしている人がいた。
 世間でいうところの四角関係というやつだったが、それから何日かして神田が死んでしまった。


 線路を枕代わりに、睡眠薬を飲んでそのまま眠り、そこに電車がやってきて、車輪に頭を轢かれて死んでしまったのだ。
 頭はグシャグシャに潰れて復元できなかった。神田の死は、自殺ということで片付けられた。


 「ねえ、坂上君。神田さんが死んだのって、自殺だと思う?それとも他殺だと思う?もし他殺なら、犯人は誰かしら?」と、なぜか元木が坂上に尋ねてきた。
  • 自殺した
  • ヒステリーな彼女が殺した
  • 神田さんを思ってた女の子
  • その子に片思いしていた男
  • その他の誰か
 「私は他殺だと思うんです。私のおばあちゃんも、どうして彼が死んでしまったのは教えてくれないんですよ。
 でもね、もうすぐ7人目がやってきますから。7人目は誰だと思います?そう、神田君です」
 「どうしてあいつがやってくんだよ!」と突然、新堂が声を荒げた。
 「新堂さって、神田さんのこと知ってるんですか?」
 「俺と同じクラスだったからな。でも、俺はただ知っている程度の仲さ。
 神田のことだったら岩下の方が詳しいんじゃないのか?岩下と神田と付き合っているって噂だったからな」
 「さあ、どうかしら。あなた、見たの?私と神田君に何かあったとことを見たのかしら?
 私、嘘つきは嫌いなの。
 もし、私が本当に神田という男と付き合っていたとしたら、私はきっとその男のことを殺したいたいと思ったでしょうね。
 それより、福沢さんだったかしら?あなた、神田君のこと、密かに想っていたそうね。最近、神田君が新しい女と付き合い始めたって話を聞いたわ。確か、名前は福沢玲子」
 「きゃははは、岩下さん、突然何を言い出すんですかぁ?
 確かに、私が神田さんのことが好きだったのは認めますけど、私のせいで彼が自殺したっていうのは違うと思うなあ。だって、彼が死んで一番悲しかったのは私ですよ?
 私は知ってるんだけどなあ。神田さんが自殺じゃないってこと。岩下さんは誰よりもよくわかっていますよねえ。神田さんを殺した張本人だから。きゃはははは」
 「私が殺したって言うんだったら、証拠を見せてみなさいな」
 福沢と岩下がにらみ合っていると、荒井が口をはさんできた。
 「この話にはもう一人登場人物がいますよね。神田さんと新しく付き合い始めた福沢さんのことを好きだった男性。僕ね、実はその男、思い当たるんですよ。
 細田さんって、福沢さんのこと好きなんじゃないですか?あなた、ここに来てからずっとチラチラと福沢さんのこと見てますよね?」
 「ばれちゃったかな?実は、1年に僕好みの子が来たなあなんて、ずっと福沢さんのこと見てたんだよね。もっとも、片思いだけど・・・
 まさか、今日こうして一緒に話ができるなんて、思ってみなかったよ。いや、恥ずかしいなあ。
 でもね、福沢さんて人気あるじゃないですか。彼女のことを好きな男性って僕だけですか?
 風間さんなんて、僕よりずっと親しげに福沢さんと話していますけれど?うくくく」
 「今度はボクまで疑われるのかい?全女性に愛の手を差し伸べるのは、ボクの義務なんだ。
 福沢さんを好きだというのなら、荒井君も候補に入るんじゃない?
 それに神田を殺したというのであれば、新堂だってその可能性は十分ある。新堂は神田を恐喝していたよね?
 いつも小遣いをせびっていたから、それを警察に相談するって神田が言ってたって噂、聞いたよ」
 「ぶっ殺すぞ!」
 「そう熱くなるなよ。ボクが言いたいのは、ここに集まった語り部は多かれ少なかれ神田に関係のある奴ばかりじゃないの。
 まだ気づかないの?ボクたちはどうしてこの場に集まった?こりゃあ、日野が仕組んだ罠だよね?
 あいつ、神田と仲が良かったからなあ。彼なりに犯人と突き止めたかったんでしょ?
 ということでボクは帰るよ」
 風間の手がドアのノブにかかった時、元木が叫んだ。
 「待って!私、7人目が来るって言いましたよね?それまで帰っちゃダメです」
 「悪いけど、これ以上の束縛は勘弁してほしい」
 「ダメ!今、ドアを開けたら殺されちゃう。もう、神田さんは来てるんだから。そして、その扉の向こうに立ってるんだから。
 ねえ、坂上君。あなた、私の話、信じてくれますか?」
 「神田さん、この部室のドアの前にいますね。おばあちゃんが言ってたんですけど、神田さんはね、誰でもいいから一人殺さないと成仏できないんです。
 自分と同じように、誰かの首を取らないとだめなんです。
 この中にね、神田さんも殺した人がいるんだよ。どういう理由があったのか、どうして殺さなければいけなかったのか、それは追及しないけれど、その人が犠牲になるべきだと思うの。それが誰かは、私にはわからないけど」
 「ボクは帰る!」
 いつになく興奮している風間が立ち上がり、窓に駆け寄った。しかし、窓は開かないので、椅子を手に持ち窓にたたきつけようとする。
 「そんなことをしても、窓は割れないですよ。
 この部屋は、神田さんに呪われているから。完全に密閉されてるんです。
 誰かが一人死ぬまで、この部屋からは永久に出られないんですよ」
 「お前が殺したんだろ!お前が責任を取って犠牲になるべきじゃないのか、岩下」
 「私が殺した証拠があるの?証拠もないくせに勝手なこと言ってる新堂君こそ、怪しいんじゃないの?」
 福沢も黙っていなかった。
 「あんたが、私の神田さんも殺したんだわ!私と神田さんが付き合うことに嫉妬したんだわ。
 でもさ、神田さんがいなくなったからって、あんたみたいなブタ野郎とは死んでも付き合わないからね!責任とって、あんたが死になさいよ!」
 「福沢さん、そんなこと言わないで。君は僕の女神様なんだから。僕はね、遠くから君のことを見て想像するだけで幸せなんだからさあ」
 「神田さんが怒っています。
 このままだったら、神田さんが部室に入ってきちゃいますよ。そうしたら、一人だけじゃなくて、みんな殺されちゃいますからね~」
 元木がそう言ったときには、もう手遅れだった。ドアは超常的な力で消し飛び、そこに一人の男子生徒が立っていた。多分神田さんなのだろう。彼は首から上がなかった。
 「ボクが岩下にちょっかいを出したことは謝るよ!でも、キミを殺したのはボクじゃないだろ?」
 風間は土下座し、許しを請うた。
 「俺がお前にしたことは、ちょっとした出来心で小遣いをせびっただけなんだよ。何も警察沙汰にするほどのことじゃないだろうが」
 新堂は逃げ腰になり、震える声で必死に言った。
 「あれはちょっとした冗談だったの。岩下さんがあなたとの仲を見せつけるから、横取りしてやろうと思ったのよ。別に、振るつもりはなかったのよ。ごめんね、私のこと殺さないで!」
 福沢は、手を合わせて祈っている。
 「僕は関係ないんだ。そりゃあ、福沢さんを奪ったあなたのことが憎くて、階段から突飛ばしたり、鞄の中に画びょうを入れたりしましたけれど。そんなことで死んだりしませんよね?」
 細田は、部屋の片隅に体を押し込むようにして、少しでも遠くに逃げようとしている。
 荒井は何も言わず、逃げようともせず、ただじっと座ったまま俯いている。
 「あんたなんか殺されて当然だわ。誰もがあんたのこと、殺したいと思ってたんじゃないかしら?私が憎い?だったら、私を殺せば?」
 岩下も逃げようとせず、椅子に座ったまま神田のことを睨みつけた。

 坂上の頭の中に、神田の声が響いた。
 「誰を殺せばいい。誰を生贄にすれば俺は救われる?この中の誰か一人。お前が決めろ」
 (苛立ちを隠せずあんな態度を取る風間さんを初めて見た。きっと、風間さんは何かを隠しているに違いない。
 それに風間さんなら、自力で何とかしてくれそうに思えた。
 大丈夫、風間さんならきっと何とかしてくれるはずだ)
 「わかった」と返事らしき声が坂上の頭の中で響いた。そして、神田はみんなが囲んでいる机の周りを歩く。
 そして、風間の後ろでピタっと止まった。その時、明かりがぱっと消えた。と、同時にものすごい叫びと、何かをへし折るような音が聞こえてきた。
 ほどなくして、電気が点いた。
 そこには、首をもがれて倒れている風間の死体が転がっていた。
 そして、部室の入り口に、ちぎった風間の首をつけた神田が立っていた。
 引きちぎられた時の恐ろしい形相のままの風間の顔が穏やかな笑顔に変貌していく。
 「あー怖かった。死ぬかと思ったよ」
 それは、神田の身体を付けた風間だった。
 「何をそんなに驚いているんだい、みんな。ボクだよ、鳴神学園のスーパースター、風間望だよ。
 首をもぎ取られたときはどうなることかと思ったけれど、すぐに神田の胴体と合体したからさ。
 人間、頭さえ生きていれば、どうにかなっちゃうもんだね。あっはっはっは。
 さぁて、それじゃあ問題も無事解決したようだし、ボクはお先に失礼するよ。この元ボクの身体も片付けないとならないからね」
 そういうと、風間は床に倒れている元自分の身体を軽々と担いで、走り去っていってしまった。
 「良かったです~。誰も死ななくて済みましたね」
 元木が笑顔で言った。


 あの集会の日から、1週間が過ぎた。
 あれからというもの、坂上は風間に気に入られてしまい、毎日なんだかんだと付き合わされている。
 坂上にたこ焼きを奢らせながら風間が言い出した。
 「坂上君、今日は紹介したい人間がいるんだ」
 「誰ですか?」
 「あ、来た来た」
 風間が大きく手を振った。すると、向こうの人込みをかき分けて現れた人物は、風間にそっくりだった。
 「風間さんって双子だったんですか」
 「何を言っているんだい。これは内緒の話だから大きな声では言えないんだが、坂上君は秘密は守れるね?」
 「はい、もちろんです」
 「彼はね、首をもぎ取られた元の身体なんだよ。
 あの日さ、首がもげちゃったボクの身体を持ち帰ったじゃないの。それでさ、処分に困ってしまってね。
 途方に暮れていたら、数日後、首から新しい頭が生えてきたんだよ。人間って、頭が取れると新しく生えてくるだねえ。あっはっはっは。
 だからさ、しばらく様子を見ていたんだけれど、昨日あたりからこうして動くようになってね。僕のスペアにぴったりなんだよ。
 これから、学校に行ったり、つらいことはこのスペアにやらせようと思ってね」
 もう一人の風間がしゃべりだした。
 「こんな奴の言うことなんか信じちゃ駄目だよ。昨日ボクが寝ていたら、寝込みを襲ってボクのことを縛り付けたのさ。それで今まで抜け出せなくてね。
 ボクが本物で、スペアはこっちね」
 「それより坂上君、ボクは二人いるんだよ。さっさともう一舟、買っておいでよ」
 (まさか、これ以上、風間さんが増えることは・・・ありそうで怖い)



 エンディング№462:増える風間さん
 エンディング数 86/657 達成度13%
 キャラクター図鑑 57/122 達成度46%
 イラストギャラリー 54/283 達成度19%

 

 

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 最後に話をしてくれた荒井の意見を聞いてみよう。
 「あのう、荒井さん、何か意見はありますか?」
 「意見?僕にこの状況でどんな意見を言えというのですか?」
 お開きにした方がいいな、と坂上が思って、立ち上がろうとした時だった。
 「こんにちは」
 突然ドアが開き、まだ幼い印象の残る女の子が立っていた。元木早苗だった。
 「あっれ~、早苗ちゃんじゃない!」と福沢が驚いて声を上げた。
 「あ、玲子ちゃん、こんにちは~。他の皆さんも初めましてです~。どうぞ、よしなに~」
 「あ、もしかして7人目って、早苗ちゃんのことだったの?」
 「えっと、私は・・・」

 

 

 「私はこの集会に呼ばれたわけじゃないの。
 それは・・・帰っちゃダメ!」
 元木は突然振り向くと、ドアから出て行こうとする新堂を厳しい口調で呼び止めた。
 「俺はもう帰るんだよ。お前が7人目で最後の話をしてくれるってんなら別だけどな」といらついた口調で新堂が言った。
 「私は7人目じゃないです」
 「じゃあ帰るぜ」
 「今帰ると、あなた死んじゃいますよ」
 「変な冗談言ってると、俺も本気で怒るぜ」
 「私が7話目をしてあげます。7人目が来る前に」
 「本当か?」
 「ええ、来ますよ。この中の一人を殺しに」
 元木は、坂上のことを見てにっこりと笑った。


 今度は岩下が帰ると言い出した。
 「あなた、死んじゃいますよ」
 「うふふ、私が殺されるっていうの?もしそんな奴がいたら、死ぬ前に先に殺してあげるから大丈夫よ」
 「一人でも帰ると、この中の誰かが間違いなく死ぬの。だから、帰っちゃだめなの。呪いを解かなきゃならないから」
 元木は誰も逃がさないように部室の前に立ちはだかった。
 「皆さん、席に戻ってください」
 全員が席に座るのを確かめると、7人目のために用意された席に元木が腰を下ろした。
 「私が最後の話をします。坂上君、それでいい?」

 

 

  • お願いします
  • 7人目を待ちましょう

 「おばあちゃんが教えてくれたの。急いで行かないと、大変なことになっちゃうって。
 あ、そうだ、坂上君。私があなたを助けにきた理由。私と結婚することになってるの。だから、おばあちゃんが助けにいきなさいって言ってたの。
 あなたが死んじゃうと、私、一生結婚できないんだもん。
 これは運命だから。私との結婚を約束してくれるなら、あなたを守ります。それから7話目を話してあげるの」

 

 

 「僕で良かったら、喜んで」
 岩下と荒井は興味なさそうに俯いて黙ったいたが、他メンバーは笑って祝福してくれた。
 「皆さん、ありがとうございます。それじゃあ、話すね。
 ・・・皆さん、初めまして、私は1年も元木早苗といいます。
 この集会に呼ばれた7人目ではないんですけれど、7人目が来る前に私が最後の話をしますね。
 これは私のおばあちゃんから聞いた話なんです。私のおばあちゃんは私の中に住んでいるんだけれど、時々私の身体から抜け出ていっちゃうんです。
 それでね、いろんなものを見てくるんですよ。これは、そのおばあちゃんが見た話。つい、最近起こった話なんですよ」


 この学校に神田拓郎という生徒がいた。神田には彼女がいたが、とっても嫉妬深かった。
 スマホは毎日チェックするし、彼のスケジュールは全部把握していないと気が済まない。
 女の子が側に近づいただけで、しつこく問い詰めたり、ヒステリーを起こして異常に怒ったり。
 神田はそんな彼女が怖くなり、別れたいと思うようになった。
 そんな時、神田のことを好きだという女の子が現れた。
 その女の子は、神田に近づくようになったが、もちろん嫉妬深い彼女は、それを知ってものすごく怒った。
 でも、神田は目を盗んでその女の子と付き合うようになった。でも、さらにややこしいことに、その女の子に片思いしている人がいた。
 世間でいうところの四角関係というやつだったが、それから何日かして神田が死んでしまった。


 線路を枕代わりに、睡眠薬を飲んでそのまま眠り、そこに電車がやってきて、車輪に頭を轢かれて死んでしまったのだ。
 頭はグシャグシャに潰れて復元できなかった。神田の死は、自殺ということで片付けられた。


 「ねえ、坂上君。神田さんが死んだのって、自殺だと思う?それとも他殺だと思う?もし他殺なら、犯人は誰かしら?」と、なぜか元木が坂上に尋ねてきた。

 

 

  • 自殺した
  • ヒステリーな彼女が殺した
  • 神田さんを思ってた女の子
  • その子に片思いしていた男
  • その他の誰か

 「私は他殺だと思うんです。私のおばあちゃんも、どうして彼が死んでしまったのは教えてくれないんですよ。
 でもね、もうすぐ7人目がやってきますから。7人目は誰だと思います?そう、神田君です」
 「どうしてあいつがやってくんだよ!」と突然、新堂が声を荒げた。
 「新堂さって、神田さんのこと知ってるんですか?」
 「俺と同じクラスだったからな。でも、俺はただ知っている程度の仲さ。
 神田のことだったら岩下の方が詳しいんじゃないのか?岩下と神田と付き合っているって噂だったからな」
 「さあ、どうかしら。あなた、見たの?私と神田君に何かあったとことを見たのかしら?
 私、嘘つきは嫌いなの。
 もし、私が本当に神田という男と付き合っていたとしたら、私はきっとその男のことを殺したいたいと思ったでしょうね。
 それより、福沢さんだったかしら?あなた、神田君のこと、密かに想っていたそうね。最近、神田君が新しい女と付き合い始めたって話を聞いたわ。確か、名前は福沢玲子」
 「きゃははは、岩下さん、突然何を言い出すんですかぁ?
 確かに、私が神田さんのことが好きだったのは認めますけど、私のせいで彼が自殺したっていうのは違うと思うなあ。だって、彼が死んで一番悲しかったのは私ですよ?
 私は知ってるんだけどなあ。神田さんが自殺じゃないってこと。岩下さんは誰よりもよくわかっていますよねえ。神田さんを殺した張本人だから。きゃはははは」
 「私が殺したって言うんだったら、証拠を見せてみなさいな」
 福沢と岩下がにらみ合っていると、荒井が口をはさんできた。
 「この話にはもう一人登場人物がいますよね。神田さんと新しく付き合い始めた福沢さんのことを好きだった男性。僕ね、実はその男、思い当たるんですよ。
 細田さんって、福沢さんのこと好きなんじゃないですか?あなた、ここに来てからずっとチラチラと福沢さんのこと見てますよね?」
 「ばれちゃったかな?実は、1年に僕好みの子が来たなあなんて、ずっと福沢さんのこと見てたんだよね。もっとも、片思いだけど・・・
 まさか、今日こうして一緒に話ができるなんて、思ってみなかったよ。いや、恥ずかしいなあ。
 でもね、福沢さんて人気あるじゃないですか。彼女のことを好きな男性って僕だけですか?
 風間さんなんて、僕よりずっと親しげに福沢さんと話していますけれど?うくくく」
 「今度はボクまで疑われるのかい?全女性に愛の手を差し伸べるのは、ボクの義務なんだ。
 福沢さんを好きだというのなら、荒井君も候補に入るんじゃない?
 それに神田を殺したというのであれば、新堂だってその可能性は十分ある。新堂は神田を恐喝していたよね?
 いつも小遣いをせびっていたから、それを警察に相談するって神田が言ってたって噂、聞いたよ」
 「ぶっ殺すぞ!」
 「そう熱くなるなよ。ボクが言いたいのは、ここに集まった語り部は多かれ少なかれ神田に関係のある奴ばかりじゃないの。
 まだ気づかないの?ボクたちはどうしてこの場に集まった?こりゃあ、日野が仕組んだ罠だよね?
 あいつ、神田と仲が良かったからなあ。彼なりに犯人と突き止めたかったんでしょ?
 ということでボクは帰るよ」
 風間の手がドアのノブにかかった時、元木が叫んだ。
 「待って!私、7人目が来るって言いましたよね?それまで帰っちゃダメです」
 「悪いけど、これ以上の束縛は勘弁してほしい」
 「ダメ!今、ドアを開けたら殺されちゃう。もう、神田さんは来てるんだから。そして、その扉の向こうに立ってるんだから。
 ねえ、坂上君。あなた、私の話、信じてくれますか?」

 

 

 「神田さん、この部室のドアの前にいますね。おばあちゃんが言ってたんですけど、神田さんはね、誰でもいいから一人殺さないと成仏できないんです。
 自分と同じように、誰かの首を取らないとだめなんです。
 この中にね、神田さんも殺した人がいるんだよ。どういう理由があったのか、どうして殺さなければいけなかったのか、それは追及しないけれど、その人が犠牲になるべきだと思うの。それが誰かは、私にはわからないけど」
 「ボクは帰る!」
 いつになく興奮している風間が立ち上がり、窓に駆け寄った。しかし、窓は開かないので、椅子を手に持ち窓にたたきつけようとする。
 「そんなことをしても、窓は割れないですよ。
 この部屋は、神田さんに呪われているから。完全に密閉されてるんです。
 誰かが一人死ぬまで、この部屋からは永久に出られないんですよ」
 「お前が殺したんだろ!お前が責任を取って犠牲になるべきじゃないのか、岩下」
 「私が殺した証拠があるの?証拠もないくせに勝手なこと言ってる新堂君こそ、怪しいんじゃないの?」
 福沢も黙っていなかった。
 「あんたが、私の神田さんも殺したんだわ!私と神田さんが付き合うことに嫉妬したんだわ。
 でもさ、神田さんがいなくなったからって、あんたみたいなブタ野郎とは死んでも付き合わないからね!責任とって、あんたが死になさいよ!」
 「福沢さん、そんなこと言わないで。君は僕の女神様なんだから。僕はね、遠くから君のことを見て想像するだけで幸せなんだからさあ」
 「神田さんが怒っています。
 このままだったら、神田さんが部室に入ってきちゃいますよ。そうしたら、一人だけじゃなくて、みんな殺されちゃいますからね~」
 元木がそう言ったときには、もう手遅れだった。ドアは超常的な力で消し飛び、そこに一人の男子生徒が立っていた。多分神田さんなのだろう。彼は首から上がなかった。
 「ボクが岩下にちょっかいを出したことは謝るよ!でも、キミを殺したのはボクじゃないだろ?」
 風間は土下座し、許しを請うた。
 「俺がお前にしたことは、ちょっとした出来心で小遣いをせびっただけなんだよ。何も警察沙汰にするほどのことじゃないだろうが」
 新堂は逃げ腰になり、震える声で必死に言った。
 「あれはちょっとした冗談だったの。岩下さんがあなたとの仲を見せつけるから、横取りしてやろうと思ったのよ。別に、振るつもりはなかったのよ。ごめんね、私のこと殺さないで!」
 福沢は、手を合わせて祈っている。
 「僕は関係ないんだ。そりゃあ、福沢さんを奪ったあなたのことが憎くて、階段から突飛ばしたり、鞄の中に画びょうを入れたりしましたけれど。そんなことで死んだりしませんよね?」
 細田は、部屋の片隅に体を押し込むようにして、少しでも遠くに逃げようとしている。
 荒井は何も言わず、逃げようともせず、ただじっと座ったまま俯いている。
 「あんたなんか殺されて当然だわ。誰もがあんたのこと、殺したいと思ってたんじゃないかしら?私が憎い?だったら、私を殺せば?」
 岩下も逃げようとせず、椅子に座ったまま神田のことを睨みつけた。

 坂上の頭の中に、神田の声が響いた。
 「誰を殺せばいい。誰を生贄にすれば俺は救われる?この中の誰か一人。お前が決めろ」

 

 

  • 岩下明美
  • 風間望
  • 新堂誠
  • 細田友春
  • 荒井昭二
  • 福沢玲子
  • 自分
  • 元木早苗

 (神田さんは殺されたというよりもきっと自殺なのだろう。岩下さんが神田さんを追い詰め、自殺するように仕向けた。
 それに彼女は、人に裏切られるのは許せないと言っていた。でも、岩下さんは人を裏切らないのだろうか。
 人を服従させることと、他人を愛することは違うはずだ。岩下さんは、神田さんの愛情を裏切り続けたのではないか、と。そんな彼女に責任を取ってもらうしか道はないだろう)
 「わかった」と返事らしき声が坂上の頭の中で響いた。そして、神田はみんなが囲んでいる机の周りを歩く。
 そして、岩下の後ろでピタっと止まった。その時、明かりがぱっと消えた。と、同時にものすごい叫びと、何かをへし折るような音が聞こえてきた。
 ほどなくして、電気が点いた。
 そこには、首をもがれて倒れている岩下の死体が転がっていた。
 そして、部室の入り口に、ちぎった岩下の首をつけた神田が立っていた。
 「これでやっと成仏できる」
 引きちぎられた時の恐ろしい形相のままの岩下の頭を乗せた胴体は、くるりと背を向け、そのまま廊下に消えていった。
 岩下が悪いと決めつけ、指名した坂上は、吐き気を催し、嗚咽する。
 「誰も死なせないつもりでいたのに!おばあちゃん、大事なときに助けてくれなった」と元木が泣いている。
 「元木さんは、何も悪くないよ。むしろ、僕たちを助けようとしてくれたんだから」と坂上が慰めた。
 「さっき、俺の頭の中で声が聞こえたんだ。神田の声だった。
 誰を生贄にするべきが選べ、と。それで俺は願っちまったんだよ。岩下明美が生贄になるげきだ、と。
 岩下が死んだのは俺のせいだ・・・うううっ」
 新堂がそういうと、みんな泣き崩れた。全員の頭の中で、神田が犠牲者を選べという声が聞こえていたそうだ。
 そして、あろうことか全員が生贄に岩下さんを選んでいたのだ。
 「おばあちゃん、酷いよ」
 元木はそんなことをぶつぶつ呟きながら放心状態で、部室を出て行ってしまった。
 この6人は岩下を殺した共犯者なのだ。この十字架を一生背負っていく仲間なのだ。


 あの集会の日から、1週間が過ぎた。
 あの日、岩下が死んだお陰で、その死体を処理しなければならなかった。美術部に行ってのこぎりは拝借し、彼女の死体を切断した。
 そして、元木を含めた7人がそれぞれバラバラになった死体の一部を持ち帰ることになった。全員が共犯者として、罪を背負っていくことにしたのだから。
 坂上は右手の部分を持ち帰ったのだが、まだ家の押し入れに放り込んだままだ。そろそろ臭いでバレそうだ。
 あの時のメンバーとは廊下で偶然すれ違うこともあったが、互いに目をそらし何もなかった振りをする。おそらく、これからもずっとそうだろう。
 それぞれが心の奥深くに十字架をしまい込んで一生を送るのだろう。
 不思議なことに、あれだけこの企画をやりたがっていた日野が、やりたくなくなったと無責任な一言で、企画を取りやめてしまった。
 鳴神学園は今日も何事もなかったような振りをしている。
 


 エンディング№461:背負った十字架の重さ
 エンディング数 85/657 達成度12%
 キャラクター図鑑 57/122 達成度46%
 イラストギャラリー 54/283 達成度19%

 

 

 

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 アパシー鳴神学園七不思議はどうかな?


 1週目クリア
 倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
 1人目の福沢のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
 4人目は荒井のシナリオ:いみぐい村→エンディング№74・75を見る
 5人目は細田のシナリオ:トイレの恋→エンディング№270~272見る
 6人目は新堂のシナリオ:吉田ババア→エンディング№001~005を見る
 7話目はシナリオ:うしろの正面:エンディング№426~431を見る


 2週目開始!
 倉田のシナリオ:呪われたロッカー→エンディング№376~383を見る
 1人目は岩下のシナリオ:ポプリ→エンディング№213~217を見る
 2人目は細田のシナリオ:サトリサマ→エンディング№262~265を見る
 3人目は福沢のシナリオ:彼と彼女の秘密→エンディング№140~142、144・145を見る(143は後で見る予定)
 4人目は風間のシナリオ:ひとり七不思議→エンディング№181~187を見る
 5人目は新堂のシナリオ:ゲーム実況怪談→エンディング№53・54を見る
 6人目は荒井のシナリオ:時田君の自主製作映画→エンディング№58~61・63(62は後で見る予定)


 語り部6人の話が終わったが、7人目はまだ姿を見せない。
 「全員の話が終わったぜ。どうするんだ?」
 新堂に促された。どうしよう。

 

  • もうしばらく待ちましょう
  • 荒井さんの意見を聞きたい
  • 帰りましょう

 シナリオ:交換日記の怖い話開始!


 最後に話をしてくれた荒井の意見を聞いてみよう。
 「あのう、荒井さん、何か意見はありますか?」
 「意見?僕にこの状況でどんな意見を言えというのですか?」
 お開きにした方がいいな、と坂上が思って、立ち上がろうとした時だった。
 「こんにちは」
 突然ドアが開き、まだ幼い印象の残る女の子が立っていた。元木早苗だった。
 「あっれ~、早苗ちゃんじゃない!」と福沢が驚いて声を上げた。
 「あ、玲子ちゃん、こんにちは~。他の皆さんも初めましてです~。どうぞ、よしなに~」
 「あ、もしかして7人目って、早苗ちゃんのことだったの?」
 「えっと、私は・・・」

 

 

 「私はこの集会に呼ばれたわけじゃないの。
 それは・・・帰っちゃダメ!」
 元木は突然振り向くと、ドアから出て行こうとする新堂を厳しい口調で呼び止めた。
 「俺はもう帰るんだよ。お前が7人目で最後の話をしてくれるってんなら別だけどな」といらついた口調で新堂が言った。
 「私は7人目じゃないです」
 「じゃあ帰るぜ」
 「今帰ると、あなた死んじゃいますよ」
 「変な冗談言ってると、俺も本気で怒るぜ」
 「私が7話目をしてあげます。7人目が来る前に」
 「本当か?」
 「ええ、来ますよ。この中の一人を殺しに」
 元木は、坂上のことを見てにっこりと笑った。


 今度は岩下が帰ると言い出した。
 「あなた、死んじゃいますよ」
 「うふふ、私が殺されるっていうの?もしそんな奴がいたら、死ぬ前に先に殺してあげるから大丈夫よ」
 「一人でも帰ると、この中の誰かが間違いなく死ぬの。だから、帰っちゃだめなの。呪いを解かなきゃならないから」
 元木は誰も逃がさないように部室の前に立ちはだかった。
 「皆さん、席に戻ってください」
 全員が席に座るのを確かめると、7人目のために用意された席に元木が腰を下ろした。
 「私が最後の話をします。坂上君、それでいい?」

 

 

  • お願いします
  • 7人目を待ちましょう

 「おばあちゃんが教えてくれたの。急いで行かないと、大変なことになっちゃうって。
 あ、そうだ、坂上君。私があなたを助けにきた理由。私と結婚することになってるの。だから、おばあちゃんが助けにいきなさいって言ってたの。
 あなたが死んじゃうと、私、一生結婚できないんだもん。
 これは運命だから。私との結婚を約束してくれるなら、あなたを守ります。それから7話目を話してあげるの」

 

 

 もしこの世に運命の赤い糸があるなら、こういう出会いがあってもいいかもしれないと思った坂上は、心を決めた。
 「今日初めて会ったばかりだけれど、運命的な出会いを感じるから。僕で良かったら、喜んで」
 岩下と荒井は興味なさそうに俯いて黙ったいたが、他メンバーは笑って祝福してくれた。
 「皆さん、ありがとうございます。それじゃあ、話すね。
 ・・・皆さん、初めまして、私は1年も元木早苗といいます。
 この集会に呼ばれた7人目ではないんですけれど、7人目が来る前に私が最後の話をしますね。
 これは私のおばあちゃんから聞いた話なんです。私のおばあちゃんは私の中に住んでいるんだけれど、時々私の身体から抜け出ていっちゃうんです。
 それでね、いろんなものを見てくるんですよ。これは、そのおばあちゃんが見た話。つい、最近起こった話なんですよ」


 この学校に神田拓郎という生徒がいた。神田には彼女がいたが、とっても嫉妬深かった。
 スマホは毎日チェックするし、彼のスケジュールは全部把握していないと気が済まない。
 女の子が側に近づいただけで、しつこく問い詰めたり、ヒステリーを起こして異常に怒ったり。
 神田はそんな彼女が怖くなり、別れたいと思うようになった。
 そんな時、神田のことを好きだという女の子が現れた。
 その女の子は、神田に近づくようになったが、もちろん嫉妬深い彼女は、それを知ってものすごく怒った。
 でも、神田は目を盗んでその女の子と付き合うようになった。でも、さらにややこしいことに、その女の子に片思いしている人がいた。
 世間でいうところの四角関係というやつだったが、それから何日かして神田が死んでしまった。


 線路を枕代わりに、睡眠薬を飲んでそのまま眠り、そこに電車がやってきて、車輪に頭を轢かれて死んでしまったのだ。
 頭はグシャグシャに潰れて復元できなかった。神田の死は、自殺ということで片付けられた。


 「ねえ、坂上君。神田さんが死んだのって、自殺だと思う?それとも他殺だと思う?もし他殺なら、犯人は誰かしら?」と、なぜか元木が坂上に尋ねてきた。

 

 

  • 自殺した
  • ヒステリーな彼女が殺した
  • 神田さんを思ってた女の子
  • その子に片思いしていた男
  • その他の誰か

 「私は他殺だと思うんです。私のおばあちゃんも、どうして彼が死んでしまったのは教えてくれないんですよ。
 でもね、もうすぐ7人目がやってきますから。7人目は誰だと思います?そう、神田君です」
 「どうしてあいつがやってくんだよ!」と突然、新堂が声を荒げた。
 「新堂さって、神田さんのこと知ってるんですか?」
 「俺と同じクラスだったからな。でも、俺はただ知っている程度の仲さ。
 神田のことだったら岩下の方が詳しいんじゃないのか?岩下と神田と付き合っているって噂だったからな」
 「さあ、どうかしら。あなた、見たの?私と神田君に何かあったとことを見たのかしら?
 私、嘘つきは嫌いなの。
 もし、私が本当に神田という男と付き合っていたとしたら、私はきっとその男のことを殺したいたいと思ったでしょうね。
 それより、福沢さんだったかしら?あなた、神田君のこと、密かに想っていたそうね。最近、神田君が新しい女と付き合い始めたって話を聞いたわ。確か、名前は福沢玲子」
 「きゃははは、岩下さん、突然何を言い出すんですかぁ?
 確かに、私が神田さんのことが好きだったのは認めますけど、私のせいで彼が自殺したっていうのは違うと思うなあ。だって、彼が死んで一番悲しかったのは私ですよ?
 私は知ってるんだけどなあ。神田さんが自殺じゃないってこと。岩下さんは誰よりもよくわかっていますよねえ。神田さんを殺した張本人だから。きゃはははは」
 「私が殺したって言うんだったら、証拠を見せてみなさいな」
 福沢と岩下がにらみ合っていると、荒井が口をはさんできた。
 「この話にはもう一人登場人物がいますよね。神田さんと新しく付き合い始めた福沢さんのことを好きだった男性。僕ね、実はその男、思い当たるんですよ。
 細田さんって、福沢さんのこと好きなんじゃないですか?あなた、ここに来てからずっとチラチラと福沢さんのこと見てますよね?」
 「ばれちゃったかな?実は、1年に僕好みの子が来たなあなんて、ずっと福沢さんのこと見てたんだよね。もっとも、片思いだけど・・・
 まさか、今日こうして一緒に話ができるなんて、思ってみなかったよ。いや、恥ずかしいなあ。
 でもね、福沢さんて人気あるじゃないですか。彼女のことを好きな男性って僕だけですか?
 風間さんなんて、僕よりずっと親しげに福沢さんと話していますけれど?うくくく」
 「今度はボクまで疑われるのかい?全女性に愛の手を差し伸べるのは、ボクの義務なんだ。
 福沢さんを好きだというのなら、荒井君も候補に入るんじゃない?
 それに神田を殺したというのであれば、新堂だってその可能性は十分ある。新堂は神田を恐喝していたよね?
 いつも小遣いをせびっていたから、それを警察に相談するって神田が言ってたって噂、聞いたよ」
 「ぶっ殺すぞ!」
 「そう熱くなるなよ。ボクが言いたいのは、ここに集まった語り部は多かれ少なかれ神田に関係のある奴ばかりじゃないの。
 まだ気づかないの?ボクたちはどうしてこの場に集まった?こりゃあ、日野が仕組んだ罠だよね?
 あいつ、神田と仲が良かったからなあ。彼なりに犯人と突き止めたかったんでしょ?
 ということでボクは帰るよ」
 風間の手がドアのノブにかかった時、元木が叫んだ。
 「待って!私、7人目が来るって言いましたよね?それまで帰っちゃダメです」
 「悪いけど、これ以上の束縛は勘弁してほしい」
 「ダメ!今、ドアを開けたら殺されちゃう。もう、神田さんは来てるんだから。そして、その扉の向こうに立ってるんだから。
 ねえ、坂上君。あなた、私の話、信じてくれますか?」

 

 

  • 信じているよ
  • さすがに信じられない
  • 結婚は中止だ。君はおかしい

 思わず坂上がそう言ってしまうと、元木はドアまで走って行った。
 「坂上君、私を信用できないんだ。それなのに、私と結婚してくれるって言った。例え今は私のことが信じられなかったとしても、これから一緒に付き合う中で信頼は生まれるものだと思ったの。
 おばあちゃんもそう言ってたし。だから、私は、坂上君との運命を素直に話した。でも、そんなのやっぱり無理だった。
 坂上君も、私の事、気持ち悪いって目で見てる。私と結婚してくれるって言葉は嘘だったの?」

 

 

 「私、おばあちゃんの言葉を信じたんです。坂上君は、私のことを理解してくれる優しい男性だって。そして、一緒になることでお互いに幸せになれるからって。
 でも、おばあちゃんも間違っていることってあるんだなぁと理解できましたから。あの時、あなたが本心で言ってないってわかっていましたから。そして今の言葉もすべて嘘ですね」


 元木が勢いよくドアを開けると、一人の男子生徒がたっていた。多分が彼が神田なのだろう。彼は首から上がなかった。
 「今おばあちゃんが言いました。この中の誰か一人を生贄として差し出せば、ほかのみんなは助かることができるって。
 でも、この中に一人だけ、本当に神田さんを殺した人がいるんですよね。
 もしかしたら、一人じゃなくて、2人、3人の共犯者がいるのかも。ふふふ、あなた方は自分が犯人であることに一生怯えて生きていくのでしょうね。
 悩みというものは共有することで安らぐものですよ。あなた方全員で、一人の生贄を決めてしまえばいいんです。神田さんの恨みを晴らすためには、誰か一人だけ生贄を捧げればいいんですよ。
 そして、生き残った人たちで、この秘密を共有していけばいいのです。うふふふ」
 新堂「お前が生贄に相応しい」
 岩下「神田君のこと知らないの、あなただけだもの」
 風間「キミが生贄になれば、それで解決すると思うよ」
 荒井「僕たち6人は共犯者になりますが、罪悪感も1/6になりますからね。ヒヒヒ」
 細田「せっかくできた親友がいなくなっちゃうのは残念だけど、心でつながった新しい友達が新しく5人もできるんだもの、仕方ないよね」
 福沢「寂しくないよ、坂上君。今日という命日には、みんなでお墓参りに行くからさ。私たち、坂上君のこと忘れないからね。キャハハハ」
 坂上「どうして僕が生贄になるんだよ!」
 6人の語り部たちは坂上の身体をつかみ、自由を奪うとそのまま首のない神田の前に連れて行った。
 首のない神田は、ゆっくりと両手を上げると、坂上の頭をがっしりと鷲掴みにして、グリグリと頭をひねり出した。
 「痛い、痛いよ!」
 坂上はあらぬ角度に首がねじ曲がっていくのを感じながら、視界に元木が映るのを見た。そんな元木は、この上ないほどの極上の笑顔を見せていた。


 エンディング№460:そして一人が生贄になる
 エンディング数 84/657 達成度12%
 キャラクター図鑑 57/122 達成度46%
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 語り部6人の話が終わったが、7人目はまだ姿を見せない。
 「全員の話が終わったぜ。どうするんだ?」
 新堂に促された。どうしよう。

 

  • もうしばらく待ちましょう
  • 荒井さんの意見を聞きたい
  • 帰りましょう

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 最後に話をしてくれた荒井の意見を聞いてみよう。
 「あのう、荒井さん、何か意見はありますか?」
 「意見?僕にこの状況でどんな意見を言えというのですか?」
 お開きにした方がいいな、と坂上が思って、立ち上がろうとした時だった。
 「こんにちは」
 突然ドアが開き、まだ幼い印象の残る女の子が立っていた。元木早苗だった。
 「あっれ~、早苗ちゃんじゃない!」と福沢が驚いて声を上げた。
 「あ、玲子ちゃん、こんにちは~。他の皆さんも初めましてです~。どうぞ、よしなに~」
 「あ、もしかして7人目って、早苗ちゃんのことだったの?」
 「えっと、私は・・・」

 

 

 「私はこの集会に呼ばれたわけじゃないの。
 それは・・・帰っちゃダメ!」
 元木は突然振り向くと、ドアから出て行こうとする新堂を厳しい口調で呼び止めた。
 「俺はもう帰るんだよ。お前が7人目で最後の話をしてくれるってんなら別だけどな」といらついた口調で新堂が言った。
 「私は7人目じゃないです」
 「じゃあ帰るぜ」
 「今帰ると、あなた死んじゃいますよ」
 「変な冗談言ってると、俺も本気で怒るぜ」
 「私が7話目をしてあげます。7人目が来る前に」
 「本当か?」
 「ええ、来ますよ。この中の一人を殺しに」
 元木は、坂上のことを見てにっこりと笑った。


 今度は岩下が帰ると言い出した。
 「あなた、死んじゃいますよ」
 「うふふ、私が殺されるっていうの?もしそんな奴がいたら、死ぬ前に先に殺してあげるから大丈夫よ」
 「一人でも帰ると、この中の誰かが間違いなく死ぬの。だから、帰っちゃだめなの。呪いを解かなきゃならないから」
 元木は誰も逃がさないように部室の前に立ちはだかった。
 「皆さん、席に戻ってください」
 全員が席に座るのを確かめると、7人目のために用意された席に元木が腰を下ろした。
 「私が最後の話をします。坂上君、それでいい?」

 

 

  • お願いします
  • 7人目を待ちましょう

 「おばあちゃんが教えてくれたの。急いで行かないと、大変なことになっちゃうって。
 あ、そうだ、坂上君。私があなたを助けにきた理由。私と結婚することになってるの。だから、おばあちゃんが助けにいきなさいって言ってたの。
 あなたが死んじゃうと、私、一生結婚できないんだもん。
 これは運命だから。私との結婚を約束してくれるなら、あなたを守ります。それから7話目を話してあげるの」

 

 

 もしこの世に運命の赤い糸があるなら、こういう出会いがあってもいいかもしれないと思った坂上は、心を決めた。
 「今日初めて会ったばかりだけれど、運命的な出会いを感じるから。僕で良かったら、喜んで」
 岩下と荒井は興味なさそうに俯いて黙ったいたが、他メンバーは笑って祝福してくれた。
 「皆さん、ありがとうございます。それじゃあ、話すね。
 ・・・皆さん、初めまして、私は1年も元木早苗といいます。
 この集会に呼ばれた7人目ではないんですけれど、7人目が来る前に私が最後の話をしますね。
 これは私のおばあちゃんから聞いた話なんです。私のおばあちゃんは私の中に住んでいるんだけれど、時々私の身体から抜け出ていっちゃうんです。
 それでね、いろんなものを見てくるんですよ。これは、そのおばあちゃんが見た話。つい、最近起こった話なんですよ」


 この学校に神田拓郎という生徒がいた。神田には彼女がいたが、とっても嫉妬深かった。
 スマホは毎日チェックするし、彼のスケジュールは全部把握していないと気が済まない。
 女の子が側に近づいただけで、しつこく問い詰めたり、ヒステリーを起こして異常に怒ったり。
 神田はそんな彼女が怖くなり、別れたいと思うようになった。
 そんな時、神田のことを好きだという女の子が現れた。
 その女の子は、神田に近づくようになったが、もちろん嫉妬深い彼女は、それを知ってものすごく怒った。
 でも、神田は目を盗んでその女の子と付き合うようになった。でも、さらにややこしいことに、その女の子に片思いしている人がいた。
 世間でいうところの四角関係というやつだったが、それから何日かして神田が死んでしまった。


 線路を枕代わりに、睡眠薬を飲んでそのまま眠り、そこに電車がやってきて、車輪に頭を轢かれて死んでしまったのだ。
 頭はグシャグシャに潰れて復元できなかった。神田の死は、自殺ということで片付けられた。


 「ねえ、坂上君。神田さんが死んだのって、自殺だと思う?それとも他殺だと思う?もし他殺なら、犯人は誰かしら?」と、なぜか元木が坂上に尋ねてきた。

 

 

  • 自殺した
  • ヒステリーな彼女が殺した
  • 神田さんを思ってた女の子
  • その子に片思いしていた男
  • その他の誰か

 「私は他殺だと思うんです。私のおばあちゃんも、どうして彼が死んでしまったのは教えてくれないんですよ。
 でもね、もうすぐ7人目がやってきますから。7人目は誰だと思います?そう、神田君です」
 「どうしてあいつがやってくんだよ!」と突然、新堂が声を荒げた。
 「新堂さって、神田さんのこと知ってるんですか?」
 「俺と同じクラスだったからな。でも、俺はただ知っている程度の仲さ。
 神田のことだったら岩下の方が詳しいんじゃないのか?岩下と神田と付き合っているって噂だったからな」
 「さあ、どうかしら。あなた、見たの?私と神田君に何かあったとことを見たのかしら?
 私、嘘つきは嫌いなの。
 もし、私が本当に神田という男と付き合っていたとしたら、私はきっとその男のことを殺したいたいと思ったでしょうね。
 それより、福沢さんだったかしら?あなた、神田君のこと、密かに想っていたそうね。最近、神田君が新しい女と付き合い始めたって話を聞いたわ。確か、名前は福沢玲子」
 「きゃははは、岩下さん、突然何を言い出すんですかぁ?
 確かに、私が神田さんのことが好きだったのは認めますけど、私のせいで彼が自殺したっていうのは違うと思うなあ。だって、彼が死んで一番悲しかったのは私ですよ?
 私は知ってるんだけどなあ。神田さんが自殺じゃないってこと。岩下さんは誰よりもよくわかっていますよねえ。神田さんを殺した張本人だから。きゃはははは」
 「私が殺したって言うんだったら、証拠を見せてみなさいな」
 福沢と岩下がにらみ合っていると、荒井が口をはさんできた。
 「この話にはもう一人登場人物がいますよね。神田さんと新しく付き合い始めた福沢さんのことを好きだった男性。僕ね、実はその男、思い当たるんですよ。
 細田さんって、福沢さんのこと好きなんじゃないですか?あなた、ここに来てからずっとチラチラと福沢さんのこと見てますよね?」
 「ばれちゃったかな?実は、1年に僕好みの子が来たなあなんて、ずっと福沢さんのこと見てたんだよね。もっとも、片思いだけど・・・
 まさか、今日こうして一緒に話ができるなんて、思ってみなかったよ。いや、恥ずかしいなあ。
 でもね、福沢さんて人気あるじゃないですか。彼女のことを好きな男性って僕だけですか?
 風間さんなんて、僕よりずっと親しげに福沢さんと話していますけれど?うくくく」
 「今度はボクまで疑われるのかい?全女性に愛の手を差し伸べるのは、ボクの義務なんだ。
 福沢さんを好きだというのなら、荒井君も候補に入るんじゃない?
 それに神田を殺したというのであれば、新堂だってその可能性は十分ある。新堂は神田を恐喝していたよね?
 いつも小遣いをせびっていたから、それを警察に相談するって神田が言ってたって噂、聞いたよ」
 「ぶっ殺すぞ!」
 「そう熱くなるなよ。ボクが言いたいのは、ここに集まった語り部は多かれ少なかれ神田に関係のある奴ばかりじゃないの。
 まだ気づかないの?ボクたちはどうしてこの場に集まった?こりゃあ、日野が仕組んだ罠だよね?
 あいつ、神田と仲が良かったからなあ。彼なりに犯人と突き止めたかったんでしょ?
 ということでボクは帰るよ」
 風間の手がドアのノブにかかった時、元木が叫んだ。
 「待って!私、7人目が来るって言いましたよね?それまで帰っちゃダメです」
 「悪いけど、これ以上の束縛は勘弁してほしい」
 「ダメ!今、ドアを開けたら殺されちゃう。もう、神田さんは来てるんだから。そして、その扉の向こうに立ってるんだから。
 ねえ、坂上君。あなた、私の話、信じてくれますか?」

 

 

  • 信じているよ
  • さすがに信じられない
  • 結婚は中止だ。君はおかしい

 思わず坂上がそう言ってしまうと、元木はドアまで走って行った。
 「坂上君、私を信用できないんだ。それなのに、私と結婚してくれるって言った。例え今は私のことが信じられなかったとしても、これから一緒に付き合う中で信頼は生まれるものだと思ったの。
 おばあちゃんもそう言ってたし。だから、私は、坂上君との運命を素直に話した。でも、そんなのやっぱり無理だった。
 坂上君も、私の事、気持ち悪いって目で見てる。私と結婚してくれるって言葉は嘘だったの?」

 

 

  • 嘘じゃない!
  • 嘘だったんだ・・・

 「あれが嘘で言ったんじゃない!」と叫ぶように坂上が言った。
 元木は変わっているが、やっぱり普通の女の子だった。そう坂上が思ったら、彼女がいとおしく見えて仕方がなかった。
 「ごめん、この状況に、ついあんなことを言ってしまった。ごめん、僕は君を信用できるよう努力すべきだった。
 今更こんなこと言うと怒られそうだけど、さっきの約束はまだ有効かな?」
 「ありがとう。やっぱり、坂上君はちゃんと考えてくれる人だね。末永くよろしくお願いします」


 その時、突然誰かがドアをノックした。
 元木が嬉しそうに言った。
 「これは神田さんです。彼はもう死んでいるから自分からは入れないんですよ。さあ、入れてあげましょうね」
 元木が勢いよくドアを開けると、一人の男子生徒がたっていた。多分が彼が神田なのだろう。彼は首から上がなかった。
 その時、元木の身体がガクガクと激しく揺れ始め、口から白い煙のようなものが現れた。
 その煙の中に、とても恐ろしい形相をした女の顔が浮かび、そいつが神田に襲い掛かると、神田の姿が幻のように消えた。
 それを見届けた鬼のような形相をした顔は、とても穏やかで優しい顔に変化して、元木の口の中に吸い込まれていった。
 「元木さん!」
 がっくりと崩れ落ちた元木の身体を坂上が支えると、元木はゆっくりと目を開けた。
 「おばあちゃんが、もう大丈夫だって。良かったね。誰も死ななくて」


 それから1週間が経った。
 あれ以来、集会で知り合った語り部のみんなと会うことは一度もなかった。結局、神田を誰が殺したのか、それ以前に自殺だったのか他殺だったのかもわからなかった。
 もし、人間としての良心の呵責を感じるのならが、あとは自分で罪を償えばよい。自分の出る幕ではない、と坂上を思った。
 そして、あれ以来、坂上は元木をよく話すようなり。偶然では片づけられない運命をいうものを、彼女と出会ったことにより信じられるようになった。
 坂上は昨日、学校の七不思議の特集の原稿をまとめたが、さすがに7話目のあの部室での出来事は書けなかった。
 仕方がないので、『七つ目の話を聞くと悪いことが起きる。だから、ここに書くことはできない』と記しておいた。


 エンディング№459:運命の人
 エンディング数 83/657 達成度12%
 キャラクター図鑑 57/122 達成度46%
 イラストギャラリー 54/283 達成度19%

 

 

 

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  • もうしばらく待ちましょう
  • 荒井さんの意見を聞きたい
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 最後に話をしてくれた荒井の意見を聞いてみよう。
 「あのう、荒井さん、何か意見はありますか?」
 「意見?僕にこの状況でどんな意見を言えというのですか?」
 お開きにした方がいいな、と坂上が思って、立ち上がろうとした時だった。
 「こんにちは」
 突然ドアが開き、まだ幼い印象の残る女の子が立っていた。元木早苗だった。
 「あっれ~、早苗ちゃんじゃない!」と福沢が驚いて声を上げた。
 「あ、玲子ちゃん、こんにちは~。他の皆さんも初めましてです~。どうぞ、よしなに~」
 「あ、もしかして7人目って、早苗ちゃんのことだったの?」
 「えっと、私は・・・」

 

 

 「私はこの集会に呼ばれたわけじゃないの。
 それは・・・帰っちゃダメ!」
 元木は突然振り向くと、ドアから出て行こうとする新堂を厳しい口調で呼び止めた。
 「俺はもう帰るんだよ。お前が7人目で最後の話をしてくれるってんなら別だけどな」といらついた口調で新堂が言った。
 「私は7人目じゃないです」
 「じゃあ帰るぜ」
 「今帰ると、あなた死んじゃいますよ」
 「変な冗談言ってると、俺も本気で怒るぜ」
 「私が7話目をしてあげます。7人目が来る前に」
 「本当か?」
 「ええ、来ますよ。この中の一人を殺しに」
 元木は、坂上のことを見てにっこりと笑った。


 今度は岩下が帰ると言い出した。
 「あなた、死んじゃいますよ」
 「うふふ、私が殺されるっていうの?もしそんな奴がいたら、死ぬ前に先に殺してあげるから大丈夫よ」
 「一人でも帰ると、この中の誰かが間違いなく死ぬの。だから、帰っちゃだめなの。呪いを解かなきゃならないから」
 元木は誰も逃がさないように部室の前に立ちはだかった。
 「皆さん、席に戻ってください」
 全員が席に座るのを確かめると、7人目のために用意された席に元木が腰を下ろした。
 「私が最後の話をします。坂上君、それでいい?」

 

 

  • お願いします
  • 7人目を待ちましょう

 「あ、お願いしま・・・」
 「ちょっと待って」と坂上の言葉を福沢が止めた。
 「早苗ちゃん、今日のこの集まりのこと話したっけ?」
 「ううん。でもね、おばあちゃんが教えてくれたの。急いで行かないと、大変なことになっちゃうって。
 あ、そうだ、坂上君。私があなたを助けにきた理由。私と結婚することになってるの。だから、おばあちゃんが助けにいきなさいって言ってたの。
 あなたが死んじゃうと、私、一生結婚できないんだもん。
 これは運命だから。私との結婚を約束してくれるなら、あなたを守ります。それから7話目を話してあげるの」

 

 

  • 彼女を信じて結婚すると言う
  • 結婚すると嘘を吐く
  • そんなこと約束できないと言う

 「元木さん、悪いんですが、僕は自分で人生の伴侶を探したいと思っています。結婚の約束までして7話目を聞きたいとは思えません。
 さあ、みなさん帰りましょう」
 元木は俯いて唇をかみしめていた。そして、彼女の目から大粒の涙が零れ落ちた。
 「わかった。おばあちゃんには、私から話しておくから。坂上君とは結婚できないってことを・・・」
 みんな帰り支度を始めて帰って行った。
 部室には、福沢、元木、坂上の3人が残った。
 福沢は一生懸命元木の機嫌をとろうとしているが、元木は相変わらず泣いている。
 元木は、「玲子ちゃん、私たちを二人にしてくれるかな」と泣きながら言うと、福沢は、「坂上君、これ以上早苗ちゃんにひどいこと言ったら、私が承知しないからね」と捨て台詞を吐いて出て行った。


 「私、素敵な奥さんになってテレビの『新婚さん、よってらっしゃい』に出るのが夢だった。
 あなたのこと忘れるよう努力する。だけどね、私の最後のお願い聞いてくれないかな?」
 元木は坂上の目をまっすぐに見つめて言った。

 

 

 「そう、私の最後のお願いを聞いてもらえないんだね。わかった、さよなら!」
 元木はそう言うと部室から出て行ってしまった。
 その時、突然ドアが開いて福沢が顔をのぞかせて、「坂上君のバカ」とだけ言った。
 そして、ドアが閉まり、走り去る足音が聞こえてきた。
 坂上は一人で後片付けをして、ふと窓の外を見ると、すっかり日が沈んでいた。
 振り返るった坂上は悲鳴を上げた。
 「ぎゃああああ!」
 「脅かすなよ。びっくりしただろ」
 日野だった。
 「いやー、7話目を話す予定だったのに、突然先生に呼ばれちゃってさ。進路相談でどうしても話したいことがあるって。
 それで、話は集まったのか?」
 「まあ、6話は集まりましたけど」
 「そうか、6話では七不思議にならないな。よし、そこに座れ、坂上」
 「もう遅いですし。日野先輩が話してくれるのであれば、後日改めて聞かせていただいても・・・」
 血まみれの包丁が見え、声にならない悲鳴を上げる坂上に横目に、日野がしゃべり続ける。
 「俺は急いでいるって何度も言ったんだけどさ。お前の進路がどうだ、推薦を取るためにはあれが足りない、これが足りない。
 俺は七不思議の特集を後輩に任せているから、その場に行かなければならないんだっつーのに。
 本当にわかってくれないから、今日おろしたてのこの包丁、使っちゃったよ。さて、座れ、坂上」
 「は、はい」
 震える声で答えた坂上は、椅子に腰を落とした。
 そして、元木の「一人でも帰ると、この中の誰かが間違いなく死ぬの。だから、帰っちゃだめなの。呪いを解かなきゃならないから」という言葉を思い出す坂上。
 「許してください、僕を殺さないでください」
 「なあ、坂上。俺が話す7話目は凄いぞ。この新聞部は、実は呪われた話があるんだ。それをお前に話してやる。
 実を言うとな、今から20年以上前、この部室で今回と同じような七不思議の集会が行われたんだ。その時な、語り部に一人にサイコパスがいたんた。
 彼は、話を頼まれたやってきたのはいいものの、怖い話を用意していなかったんだ。
 そのサイコパスは誰よりも目立って、誰よりも怖い話をしたくてたまらなかったんだ。そこで、そいつは思いついた。
 怖い話をするのではなく、怖い思いを実際にしてもらおうってな。そして、聞き役の前でこれからこの語り部の中から一人を殺すって言い出したんだ。包丁を持ってな。
 そして、選べと言ったんだよ。誰を殺すかをさ。
 ところが、聞き役の新聞部員は冗談だろうと思ったのさ。だから、言った。
 殺すなら語り部じゃなく自分を殺せってね。
 聞き役をそう言うんだから、そいつはまじめにその言葉を受け止めて、聞き役の新聞部員を刺したんだ。包丁で、何度も何度も。体に穴が開くほどめった刺しだ。
 という話が新聞部に伝わっているんだ。それでな、俺もそれにあやかって、この集会を企画したんだよ。
 サイコパスが見つからなかったから、結局、その役は俺が自ら務めることにしたわけさ。
 で、ここに来たんだが、もう、みんな帰ってしまった。あの先生の責任だ。畜生。でも、この集会をきちんとした形で終わらせなければならない。
 だから、坂上。俺かお前のどちらかが死ななくてはならないんだが、どうすればいいと思う?
 そういえば途中で、語り部に呼んだ福沢ともう一人女の子会ったよ。あの二人、ぶつぶつとお前の名前を挙げて文句を言ってからさ。ついでに刺してきた。」


 エンディング№458:サイコパス日野貞夫
 エンディング数 82/657 達成度12%
 キャラクター図鑑 57/122 達成度46%
 イラストギャラリー 53/283 達成度18%

 

 

 

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 アパシー鳴神学園七不思議はどうかな?


 1週目クリア
 倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
 1人目の福沢のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
 4人目は荒井のシナリオ:いみぐい村→エンディング№74・75を見る
 5人目は細田のシナリオ:トイレの恋→エンディング№270~272見る
 6人目は新堂のシナリオ:吉田ババア→エンディング№001~005を見る
 7話目はシナリオ:うしろの正面:エンディング№426~431を見る


 2週目開始!
 倉田のシナリオ:呪われたロッカー→エンディング№376~383を見る
 1人目は岩下のシナリオ:ポプリ→エンディング№213~217を見る
 2人目は細田のシナリオ:サトリサマ→エンディング№262~265を見る
 3人目は福沢のシナリオ:彼と彼女の秘密→エンディング№140~142、144・145を見る(143は後で見る予定)
 4人目は風間のシナリオ:ひとり七不思議→エンディング№181~187を見る
 5人目は新堂のシナリオ:ゲーム実況怪談→エンディング№53・54を見る
 6人目は荒井のシナリオ:時田君の自主製作映画→エンディング№58~61・63(62は後で見る予定)


 語り部6人の話が終わったが、7人目はまだ姿を見せない。
 「全員の話が終わったぜ。どうするんだ?」
 新堂に促された。どうしよう。

 

  • もうしばらく待ちましょう
  • 荒井さんの意見を聞きたい
  • 帰りましょう

 シナリオ:交換日記の怖い話開始!


 最後に話をしてくれた荒井の意見を聞いてみよう。
 「あのう、荒井さん、何か意見はありますか?」
 「意見?僕にこの状況でどんな意見を言えというのですか?」
 お開きにした方がいいな、と坂上が思って、立ち上がろうとした時だった。
 「こんにちは」
 突然ドアが開き、まだ幼い印象の残る女の子が立っていた。元木早苗だった。
 「あっれ~、早苗ちゃんじゃない!」と福沢が驚いて声を上げた。
 「あ、玲子ちゃん、こんにちは~。他の皆さんも初めましてです~。どうぞ、よしなに~」
 「あ、もしかして7人目って、早苗ちゃんのことだったの?」
 「えっと、私は・・・」

 

 

 「私はこの集会に呼ばれたわけじゃないの。
 それは・・・帰っちゃダメ!」
 元木は突然振り向くと、ドアから出て行こうとする新堂を厳しい口調で呼び止めた。
 「俺はもう帰るんだよ。お前が7人目で最後の話をしてくれるってんなら別だけどな」といらついた口調で新堂が言った。
 「私は7人目じゃないです」
 「じゃあ帰るぜ」
 「今帰ると、あなた死んじゃいますよ」
 「変な冗談言ってると、俺も本気で怒るぜ」
 「私が7話目をしてあげます。7人目が来る前に」
 「本当か?」
 「ええ、来ますよ。この中の一人を殺しに」
 元木は、坂上のことを見てにっこりと笑った。


 今度は岩下が帰ると言い出した。
 「あなた、死んじゃいますよ」
 「うふふ、私が殺されるっていうの?もしそんな奴がいたら、死ぬ前に先に殺してあげるから大丈夫よ」
 「一人でも帰ると、この中の誰かが間違いなく死ぬの。だから、帰っちゃだめなの。呪いを解かなきゃならないから」
 元木は誰も逃がさないように部室の前に立ちはだかった。
 「皆さん、席に戻ってください」
 全員が席に座るのを確かめると、7人目のために用意された席に元木が腰を下ろした。
 「私が最後の話をします。坂上君、それでいい?」

 

 

  • お願いします
  • 7人目を待ちましょう

 「あ、お願いしま・・・」
 「ちょっと待って」と坂上の言葉を福沢が止めた。
 「早苗ちゃん、今日のこの集まりのこと話したっけ?」
 「ううん。でもね、おばあちゃんが教えてくれたの。急いで行かないと、大変なことになっちゃうって。
 あ、そうだ、坂上君。私があなたを助けにきた理由。私と結婚することになってるの。だから、おばあちゃんが助けにいきなさいって言ってたの。
 あなたが死んじゃうと、私、一生結婚できないんだもん。
 これは運命だから。私との結婚を約束してくれるなら、あなたを守ります。それから7話目を話してあげるの」

 

 

  • 彼女を信じて結婚すると言う
  • 結婚すると嘘を吐く
  • そんなこと約束できないと言う

 「元木さん、悪いんですが、僕は自分で人生の伴侶を探したいと思っています。結婚の約束までして7話目を聞きたいとは思えません。
 さあ、みなさん帰りましょう」
 元木は俯いて唇をかみしめていた。そして、彼女の目から大粒の涙が零れ落ちた。
 「わかった。おばあちゃんには、私から話しておくから。坂上君とは結婚できないってことを・・・」
 みんな帰り支度を始めて帰って行った。
 部室には、福沢、元木、坂上の3人が残った。
 福沢は一生懸命元木の機嫌をとろうとしているが、元木は相変わらず泣いている。
 元木は、「玲子ちゃん、私たちを二人にしてくれるかな」と泣きながら言うと、福沢は、「坂上君、これ以上早苗ちゃんにひどいこと言ったら、私が承知しないからね」と捨て台詞を吐いて出て行った。


 「私、素敵な奥さんになってテレビの『新婚さん、よってらっしゃい』に出るのが夢だった。
 あなたのこと忘れるよう努力する。だけどね、私の最後のお願い聞いてくれないかな?」
 元木は坂上の目をまっすぐに見つめて言った。

 

 

  • うん
  • 聞けないよ

 坂上は、反射的に頷いていた。
 「嬉しいな。私とキスしてくれないかな。坂上君とのいい思い出にしたいの」
 「キスならいいよ」
 坂上が元木の唇に口づけると、何か嫌のものを感じた。坂上の唇が元木の唇から離れない。
 そして、坂上の唇の中に、元木の口から何か得体のしれないものが入り込んきて、喉の奥に入り込もうとしている。
 坂上がこらえきれずそれを飲み込むと、元木がやっと離れた。
 元木は満面の笑みを浮かべている。
 「私、あなたのことを忘れられそうにもないみたい。だから、あなたの中に私のご先祖様を何人かわけてあげたの。
 私の中のおじいちゃんやおばあちゃんを、坂上君にも分けてあげたから、私たち別れられないの。どんなことがあってもね。
 でも、私がいなくてもこれからはおじいちゃんとおばあちゃんが守ってくれるから、安心して」
 坂上の口の中から何やら白い煙がもうもうと吐き出され、やがて人の形を形成し、坂上の口を使ってしゃべり始めた。
 「この腐れ坊主が!孫娘の唇を奪っておいて、今更逃げられると思うてか!
 これから孫娘に相応しい日本男児になれるように毎日修行を命じる!」
 「坂上君、これで『新婚さん、よってらっしゃい』に出られるね。うちのご先祖様が大好きな番組だから、頑張ってでようね。うふふふ」

 エンディング№457:夫婦エクトプラズム
 エンディング数 81/657 達成度12%
 キャラクター図鑑 57/122 達成度46%
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 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
 4人目は荒井のシナリオ:いみぐい村→エンディング№74・75を見る
 5人目は細田のシナリオ:トイレの恋→エンディング№270~272見る
 6人目は新堂のシナリオ:吉田ババア→エンディング№001~005を見る
 7話目はシナリオ:うしろの正面:エンディング№426~431を見る


 2週目開始!
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 3人目は福沢のシナリオ:彼と彼女の秘密→エンディング№140~142、144・145を見る(143は後で見る予定)
 4人目は風間のシナリオ:ひとり七不思議→エンディング№181~187を見る
 5人目は新堂のシナリオ:ゲーム実況怪談→エンディング№53・54を見る
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 語り部6人の話が終わったが、7人目はまだ姿を見せない。
 「全員の話が終わったぜ。どうするんだ?」
 新堂に促された。どうしよう。
  • もうしばらく待ちましょう
  • 荒井さんの意見を聞きたい
  • 帰りましょう
 シナリオ:交換日記の怖い話開始!


 最後に話をしてくれた荒井の意見を聞いてみよう。
 「あのう、荒井さん、何か意見はありますか?」
 「意見?僕にこの状況でどんな意見を言えというのですか?」
 お開きにした方がいいな、と坂上が思って、立ち上がろうとした時だった。
 「こんにちは」
 突然ドアが開き、まだ幼い印象の残る女の子が立っていた。元木早苗だった。
 「あっれ~、早苗ちゃんじゃない!」と福沢が驚いて声を上げた。
 「あ、玲子ちゃん、こんにちは~。他の皆さんも初めましてです~。どうぞ、よしなに~」
 「あ、もしかして7人目って、早苗ちゃんのことだったの?」
 「えっと、私は・・・」
  • 黙って聞いている
  • 7人目なんですよね?
  • 7人目ではないですよね?
 坂上は黙って元木の次の言葉に注目した。
 「7人目というわけじゃないんだけど。おばあちゃんが、行きなさいって言うので~」
 (七不思議の集会のことは、僕と、新聞部との人たちと、日野先輩に声をかけられた7人の人以外は知らないはずなのに)と坂上が思っていると、福沢が、
 「気にしないでね。早苗ちゃんは時々、ヘンなことを言い出すことがあるから。でも。とってもいい子だよ」とフォローする。
 ずっと居眠りをしていた風間がいつの間にか目を覚まして、
 「そうとも、こんん可愛い女の子が、悪い子であるわけがないさ。早く入っておいで。なんだったらボクの膝の上に座ってもいいんだよ」と声を掛けた。
 「それでは、おじゃまします~」
 遠慮がちに入室してきた元木を、坂上は空いている席に案内した。
 「皆さん、改めまして、よろしくお願いします~。私、1年の元木早苗といいます。玲子ちゃんのクラスメイトです~」
 「元木さん、日野先輩にここを教えてもらったわけじゃないんだよね?」
 「はい。あ。ところで、あなたが坂上修一君?」
 「そうだけど」
 (どうして、この子は僕の名前を知っているのだろう)
 元木は可愛らしく微笑むと、不思議なことを口走った。
 「そう、良かった。まだ生きてるので~」
 「え・・・」
 「おばあちゃんがね、ここで坂上君が困っているだろうから、助けに行ってあげなさいって言ってたの」
 「は?」
 福沢が必死にフォローするかのように、目の前で手をひらひらとさせて、その場の空気を変えようとした。
 「あ~細かいことは聞かなかったことにして!運が良ければ、その目で超常現象を確認できると思うから。
 それよりさ、怖い話をさせるんだったら、早苗ちゃんはピッタリだと思うよ。7人目はいつまで待っても来ないみたいだし。
 ね、早苗ちゃんもいい?」
 「はい~、私でよろしければ」
 「さっさと話してもらって、お開きにしようぜ」と新堂が口を開いた。
 「では、元木さん、よろしくお願いします」と坂上は言った。


 これはまだ携帯が一般的になる前の時代の話。
 この学校のあるクラスで、交換日記が流行った。
 はじめは数人の女の子のグループが始めたのだが、その様子があまりにも楽しそうなので、あっという間に、他のクラスメイトにも広まった。
 みんなそれぞれ、仲良しのグループに分かれて、好きな人の名を書き合ったり、自分がおすすめしたいものなんかを書いたり、先生の悪口で盛り上がったりしていた。
 その流行の陰で交換日記のグループに入り損ねた女の子がいた。名前は、大本真美。
 彼女はあまり人付き合いがうまい方ではなく、人の輪に入ることが苦手で、誘われても断ってしまうような自ら壁を作ってしまうような人だった。
 それに、学校は勉強をしに来るところだからという生真面目な一面が強くて、勉強そっちのけで学園生活を楽しんでいるクラスメイトたちを毛嫌いしている部分もありました。
 別に孤立するほどの嫌われ者ではないが、付き合い下手な彼女には、交換日記で互いの秘密を見せ合いっこするほど心を許してくれるような友達もいなかった。
 休み時間にきゃあきゃあと交換日記の話題で騒いでいる子たちを横目で眺めながら、大本は胸の中に湧き上がる敗北感と孤独を、必死に押し隠していた。
 表面上は『そんなものにうつつを抜かすより先に、学生としてやらなければならないことがあるんじゃないの?』と涼しい顔をしていたが、内面では、交換日記に激しい憧れを抱いていた。


 そんなある日のこと。
 大本がいつものように家路を歩いていると、塀の向こうの見慣れた木の洞に、何かがねじ込まれているのが見えた。
 どうやら、それは丸められたノートのようだった。
 大本は木の洞に手を伸ばして、そのノートを引き抜くと、風雨に晒されたように古びていたが、表紙には交換日記と書かれていた。
 彼女はボロボロのノートを開いたが、前半部分は、長い間放置されているうちに水が染みこんだせいか、紙が癒着していた。
 そこで比較的損傷の少ない後ろの方のページを選んでめくると、こんなことが書かれていた。
 『僕と交換日記をしませんか?』
 開いたページの左上に、ぽつんとそれだけが書いてあり、そこから後は何も記されてはなかった。


 大本は誰のものかわからないそのノートを、こっそり持ち帰った。
 『僕と交換日記をしませんか?』
 それは、几帳面そうな性格がうかがえる、読みやすい字だった。
 大本は、字の綺麗な少年と交換日記をしているんだ、という少しロマンチックな想像をしてその書き込みの下に続けて書いた。
 『あなたは誰?うちの学校の生徒なの?いつから交換日記の相手を待ち続けているの?』


 そして、翌日の朝、登校するついでに、同じ木の洞へノートを押し込んだ。
 しかし、数日たっても、ノートに何の変化のないことに落胆しているうちに、大本は、一度希望を持って裏切られた分、さらに暗い感情は強まって行った。


 次の週のある日、大本はいつものようにあの木の側を通りかかった。
 気のせいか、いつもとは少し違う形でノートが突っ込まれていたので、大本は、急いでノートを抜き取り、その場で開いた。
 すると、大本の書き込みの下に、例の几帳面そうな文字で返答が書かれていた。
 『こんにちは。書き込みありがとうございます。僕は他校の生徒です。この学校に通う人と、ずっと交換日記をしていました。でも、ある日突然、相手から返事がこなくなったんです。
 僕は相手の名前しか知らなかったから、何があったのか調べる手段もなくて、つい、新しい交換日記の相手を募るようなことを書いてしまったんです。
 それが2年前のことです。まさか、今になって書き込んでくれる人が現れるとは、思ってもみなせんでした。よろしければ、本当に僕と交換日記をしていただけないでしょうか?』


 大本は家に持って帰ると、ペンを執った。
 『いいわよ。私は大本真美。まずはあなたのことを知りたいわ。あなたはどこの高校に通っているの?
 2年前にいつの生徒と交換日記をしていたということは、今は3年生ぐらいかしら?以前の交換日記の相手とも、こうして顔も知らない状態でやりとりしていたの?
 突然音信不通だなんて、可愛そうね。私、その人について調べてあげましょうか?』


 大本は次の日の朝、木の洞の中にノートを戻した。
 そして、数日後、ようやく待ち望んでいた変化があった。
 『お返事ありがとうございます。よろしくお願いします。前の交換日記の相手とも、やはりこんな風に偶然やりとりがはじまったんです。
 2年前の突然の音信不通にショックを受けましたが、こうして新しいご縁が見つかったので、すっかり未練も晴れました。調査の件は、気持ちだけいただいておきます。
 それよりも、僕はもっと大本さんのことが知りたいです。差支えのない範囲で、いろいろと書いていただければ嬉しいです。僕は、桂雅彦といいます』
 彼は必要以上に自分のことを書いていませんでしたが、この落ち着いた文体と丁寧な口調は、大本の胸をときめかせた。
 (こんな素敵な文章が書ける人なんですもの、きっと頭が良くて知的な感じの文学青年ね)
 彼女の中で、勝手に妄想が膨らんだ。
 まるで彼女は、桂さんのことを不遇な自分を助け出すために現れた、白馬の王子様であるかのように感じた。
 桂の日記は、こんな一文で締めくくられていた。
 『一つお願いがあります。このノートの前半部分は読まないでいただきたいのです。前の相手とのやりとりが残っていて、読むことも読まれることも心苦しいのです。どうかお願いします』
 大本はあくまでも強気な返事を書いた。
 『わかったわ。私は余計な詮索は嫌いだし、読もうにも、すっかりページがくっついちゃってるから、読めないの。安心してね』
 そして、彼のリクエストに応えて、自分のことを書き始めた。
 自分が2年生であること、進路の希望はある程度固まっていて、それに向けて努力をしていること・・・そんな、相手に都合よく見えることだけを書いた。
 最後に、クラスで交換日記が流行っていることを記し、ついでに小耳に挟んだルールを書いた。
 当時彼女のクラスで流行っていた交換日記にはあるルールがった。それは他人の日記の文章に、赤いペンと青いペンで下線を引くことで、読み手の意思を伝えるというものだった。


 他人の日記の文章全体に赤いペンで線を引くと、同意、好意、喜びなどの前向きな感情を表し、文章の一部に青いペンで線を引くと、否定、反感、悲しみなど、後ろ向きなニュアンスを現した。
 そして、そこから余白に矢印を引っ張って、コメントを書き込む。
 大本は、クラスの女の子たちが、そんな秘密めいたやり取りをしているのを盗み見て、交換日記をするときには、そのルールを試してみたいなって思っていた。
 『結構便利システムなのよ。せっかくだから、あなたも私の分に線を引いてみてね。じゃあ、末永くよろしくね』


 いつものように木の洞にノートを入れて数日後、大本の書き込みのあちこちには、赤い線がいっぱい引かれて、コメントが添えられていた。
 ノートの前半は見ないという約束や、大本さんの進路や努力に対しての部分、ルールを採用したいという意見や、『末永くよろしくね』の箇所にも、賛同の赤線が引かれていた。
 そして、心待ちにしていた桂からの返信に目を通した。
 『こんにちは、桂です。僕のお願いを聞いてくれてありがとう。君は2年生のうちから将来を見据えていて、えらいと思うな。
 僕はその時に努力しなかったことを、遅まきながら悔やんでいます。赤い線と青い線のルール?面白いものがあるんだね。僕もさっそくやってみました。
 交換日記なのに、話し合っている感じがして、けっこう楽しいね。こちらこそよろしく』
 桂の新しい書き込みに対しても、彼女は賛同や喜びの赤線を、どんどん引いて行った。
 しかし、桂の書いたこんな一文が、大本の手を止めた。
 『大本さんのクラスでは交換日記が流行っているそうだけど、今、誰かと交換日記をしているの?』
 大本は、いつか桂と直接会うことがあった時、嘘つきだと思われたくなかったので、みじめさを押し殺して真実を記した。
 『交換日記は、あなた以外の誰ともしてないわ。誰にも誘われなかったからなの。
 学生は勉強をしに学校へ通うべきだと思ってるし、将来を見据えて、今から努力を積み重ねていくべきだと考えているの。
 だから、そういう人間を軽蔑し、避けている。それに私は、あまり人付き合いがうまい方じゃないの。
 やっぱり、心のどこかでそういう連中を見下しているのかもしれない。でも、こういう意見は煙たいんでしょうね。あなたにも嫌われてしまうかもしれない。
 でも、あなたの顔が見えないから、こんなことも素直に書けてしまう。私がバカなんだわ。こんなこと書いても、ネガティブだし嫌われるだけだよね』
 そこには、寂しさ、誇り、反省、後悔・・・クラスメイトの前では出すことのない、大本の本当の気持ちがつづられていた。


 あんなことを書いてしまっては、もう返事は来ないかもれいない。
 そんな心配をよそに、桂から帰って来たノートにや、いたるところに赤線が引いたあったが、『私がバカなんだわ』という一文には青線が引かれ、『そんなことない!』というコメントがついていた。
 『大本さんはしっかりした魅力的は人だと思う。学生の本文について、将来を見据えた勉強の必要性について、きちんと理解している高校生は珍しいよ。
 たしかに、考え方が正しければ高圧的な態度に出ていい、ということはないけれど、でも僕はこう思う。あの時、僕の側に君のような人がいてくれたなら・・・
 僕の不真面目で怠惰な生活に警鐘を鳴らしてくれる人がいたなら、僕はもっと早く目を覚まして、進路について考えていただろう。
 誰もが切羽詰まってから、きっと君の正しさを理解し、尊敬し、ありがたく思うはずだよ。
 なによりも、自分の態度を反省しているのが偉いね。自分のことを客観的に見て反省することは、難しい。
 君は自分が孤独だと思っているようだけど、その誠実さは、クラスの誰かには伝わっていると、僕は思うよ』
 大本は、感動のあまり涙を流した。そしてノートに向かって、何度も、ありがとう、と呟いた。
 桂に認められたことで、大本は失いかけた自信を取り戻すことができた。
 (そうよ、やっぱり私は正しいんだわ。受験に備えることの大切さを理解しているのは、私だけなんだから、私は別にそんな人たちを群れる必要はない。
 一人でも大丈夫。いつか私のことを理解してくれる人たちに囲まれて生きる日がやって来るはず)


 次の日から、大本は、一人でいることに寂しさを感じることはなくなった。
 だから、二人の交換日記は順調に続いた。
 むしろ、学校でため込んでいる孤独や反発を慰めてくれる桂の言葉は、大本にとって、なくてはならないものになっていった。
 それに自分の発言が、自信を失いがちな桂の支えになっていることを確信し、彼から頼られる喜びすら感じていた。
 桂が大本に好意を持っていることは密かに感じていたが、それ以上の進展は全くなかった。


 実は大本は同じクラスの畑中亨が好きだった。
 畑中は、クラスで孤立している大本に話しかけてくれる数少ない人だった。
 畑中は、宿題を忘れた、と言ってノートを借りに来て、
 「頭がいいだけじゃなくて、マジメだし、努力家だよな」なんて、声を掛けてくれていたので、大本は密かに、畑中は自分のことが好きなんじゃないか、と思っていた。
 そんなわけで、大本は桂をキープしつつ、畑中からの求愛を待っていた。
 ところがある日、畑中がある女の子に告白し、相手もそれを受け入れたのだ。
 その一部始終は、休み時間の教室で、クラスメイトたちの前で堂々と行われて、当然大本を目撃していた。もともと畑中は、ボクシング部で強くてかっこよくて、クラスの人気者だったから。


 その日の放課後、忘れ物を取りに大本が教室に戻った時、帰らずに残っていた女の子たちが、大本についてウワサしているのを聞いてしまった。
 「大本さんさ、畑中が告白したとき、すごい顔してたよね」
 「あの人、鬼みたいな顔してたよ」
 「へー、やっぱり大本さん、畑中のことが好きだったんだ」
 「でもさ、畑中ってずっとアユミちゃん狙いじゃん。見ててもわかんないのかな?」
 「畑中がよくノートを借りにいったから・・・」
 「あー、誤解しちゃったのね。自分のことが好きなんだって」
 「なんかかわいそー。畑中、影ではかなり大本の悪口言ってたのにさ」
 「そうそう、『大本にはノート書く以外の取柄はない』なんてきっぱり言っちゃってね~」
 「畑中も卑怯だよね。ノート借りるときは調子いいくせに。まあ、大本さんの態度もさ、調子乗ってるというか」
 「学級委員でもないのにいつも偉そうにしているし、ムカつくのもわかるかなって」
 「いい気味かもね」
 「きゃははは」


 大本は気づかれないよう、その場を去り、走って走って交換日記の隠し場所のある木ののころまで来たが、汗と涙で顔がグチャグチャになっていた。
 大本はノートを取り出し、その場で書き込むと、またすぐ元に戻した。
 『今日学校でひどいことがあった。もう明日から学校行けない。死にたいよ。助けて』


 翌日大本は学校を休んだ。頭まで布団をかぶって、泣きながら一日を過ごしたが、夕方になって、あの日記の返事が気になって仕方がなくなくなり、あの木の下へ向かった。
 ノートを開くと、まったく予想をしていなかったことが書かれていた。
 『じゃあ、会おうか。
 君が本当に僕の助けを必要としているのなら、会おう。夜中の2時にこの木の下に来て欲しい。僕は君と会えるまで、毎日待っているから』


 夜の2時なると、大本はこっそり家を抜け出し、いつもの木の元に向かったが、途中で、桂と会えなかったらどうしよう、という考えた頭をよぎった。
 なんらかの事情で、桂がこちらに向かえないこともあるでしょうし、もし会えなかったら、待ち合わせ場所に来たということと、彼への感謝の気持ちを日記に書き残しておいたほうがいいだろう、と大木は考えた。


 手ぶらだった彼女は、文房具を取りに家に戻ったと思いますか?
 彼女も家に戻るよりは、一刻も早く、待ち合わせの場所に向かったほうがいいと思った。おかげで、木の下には約束の時間の5分前に着くことができた。
 木の下には誰もいなかったので、大本はその場で桂を待つことにした。
 ところが、決められた時間を過ぎても、桂は現れない。
 時間を持て余した大本は、ノートを開いた。すると、昼間の書き込みに新しい文章が付け加えられていた。
 『君が本当に僕の助けを必要としているのなら、会おう。夜中の2時にこの木の下に来て欲しい。
 僕には君を連れて行くことしかできない。
 僕が手伝ってあげるから、気を楽にして』
 大本がなんとなく嫌な予感を覚えながら首をかしげた寸簡、大本の喉に何かが食い込んできた。
 何者かに襲われて、背後から紐で絞められている!大本はそう思い、慌てて喉に手を当てたが、そこには何もなかった。それなのに、喉の肉が何かが食い込んでいるかのように凹んでいる。
 大本はパニックに陥りつつ、息苦しさから逃れるため、顔を上に向けた。
 すると、木の枝から首を吊っている男の子が、大本を見つめていた。
 見えない力に、大本の意識はどんどんと遠ざかっていった。


 大本は次の日、例の木で首を吊っている状態で発見された。
 畑中の一件は、クラス内でもともと孤立していたことを苦にしての自殺だと片付けら、それ以上調べられることはありませんでした。


 「元木さん、ありがとうございました。今のお話、新聞に載せても、大丈夫ですよね」
 「はい、もちろんです~」
 「では、時間も遅くなってしまいましたので、今日はここでお開きにしたいと思います」
 「そう?僕がもっと話してあげようかと思ったんだけど」
 「おいおい細田君、坂上君がこれでいいって言ってるんだし、何も問題はないじゃないか。それともどうしてもトイレの話をもっとしたいというのであれば、それは坂上君と二人で気のすむまで語り給え」と風間が言った。
 「坂上君、ぼ、僕でよかったら・・・」
 「いえ、結構です」
 「じゃあな」と新堂が挨拶も早々に帰って行ってしまい、それをきっかけに皆口々に別れの挨拶を言うと、部室を後にしていった。


 最後に残った坂上が、部室の電気を消し、廊下に出ると、辺りはすっかり夜の闇の中に沈んでいた。
 下校途中、坂上はいつも目にしていた大きな樹に立ち寄った。元木の話に登場したのは、たぶんこの木だ。
 深い洞の中に恐る恐る手を差し入れると、指先に何かが触れ、それと同時に、背後から誰かがささやく声が聞こえてきた。
 「ワタシト、コウカンニッキ、シナイ?」
 慌てて洞から手を出そうとした坂上だったが、意思に反して洞の中の物をつかみだしてしまっていた。それは古びたノートで、表紙には交換日記と書かれている・・・
 坂上は必死にそのノートから離れようとしたが、手は何かに操られたかのように、ノートのページをめくり始めた。そこには、神経質そうな女の子に字で
 『私と交換日記しない?』
 と、書かれていた。
 すると、また同じ声が聞こえてきた。
 「ネェ。コウカンニッキ、シマショウ」
 その時、坂上の方を叩くものがいた。振り返ると、元木が立っていた。
 「良かったです。まだ生きてます~。
 おばあちゃんの言ったとおりです。坂上君は怖がりなのに、そういうものに近づいてしまう。そういう相の持ち主なんですよ。これからは私がお傍でしっかり見張っておりますから」
 そう言って、地面に落ちたノートを鞄にしまった。
 「これは私が責任を持って祓っておきますから。鳴神学園には恐ろしいものがたくさんおりますゆえ、好奇心から首を突っ込むのはやめてくださいね。
 それこそ、命がいくつあっても足りませんから~」
 「元木さん、どうして僕を助けてくれるの?」
 「それは坂上君が私の旦那様・・・きゃっ、言っちゃった。今の事は聞かなかったことにしてくださいね~」

 エンディング№456:首括りの樹の下で
 エンディング数 80/657 達成度12%
 キャラクター図鑑 57/122 達成度46%
 イラストギャラリー 52/283 達成度18%

 

 

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 アパシー鳴神学園七不思議はどうかな?


 1週目クリア
 倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
 1人目の福沢のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
 4人目は荒井のシナリオ:いみぐい村→エンディング№74・75を見る
 5人目は細田のシナリオ:トイレの恋→エンディング№270~272見る
 6人目は新堂のシナリオ:吉田ババア→エンディング№001~005を見る
 7話目はシナリオ:うしろの正面:エンディング№426~431を見る


 2週目開始!
 倉田のシナリオ:呪われたロッカー→エンディング№376~383を見る
 1人目は岩下のシナリオ:ポプリ→エンディング№213~217を見る
 2人目は細田のシナリオ:サトリサマ→エンディング№262~265を見る
 3人目は福沢のシナリオ:彼と彼女の秘密→エンディング№140~142、144・145を見る(143は後で見る予定)
 4人目は風間のシナリオ:ひとり七不思議→エンディング№181~187を見る
 5人目は新堂のシナリオ:ゲーム実況怪談→エンディング№53・54を見る
 6人目は荒井のシナリオ:時田君の自主製作映画→エンディング№58~61・63(62は後で見る予定)


 語り部6人の話が終わったが、7人目はまだ姿を見せない。
 「全員の話が終わったぜ。どうするんだ?」
 新堂に促された。どうしよう。

 

  • もうしばらく待ちましょう
  • 荒井さんの意見を聞きたい
  • 帰りましょう

 シナリオ:交換日記の怖い話開始!


 最後に話をしてくれた荒井の意見を聞いてみよう。
 「あのう、荒井さん、何か意見はありますか?」
 「意見?僕にこの状況でどんな意見を言えというのですか?」
 お開きにした方がいいな、と坂上が思って、立ち上がろうとした時だった。
 「こんにちは」
 突然ドアが開き、まだ幼い印象の残る女の子が立っていた。元木早苗だった。
 「あっれ~、早苗ちゃんじゃない!」と福沢が驚いて声を上げた。
 「あ、玲子ちゃん、こんにちは~。他の皆さんも初めましてです~。どうぞ、よしなに~」
 「あ、もしかして7人目って、早苗ちゃんのことだったの?」
 「えっと、私は・・・」

 

 

  • 黙って聞いている
  • 7人目なんですよね?
  • 7人目ではないですよね?

 坂上は黙って元木の次の言葉に注目した。
 「7人目というわけじゃないんだけど。おばあちゃんが、行きなさいって言うので~」
 (七不思議の集会のことは、僕と、新聞部との人たちと、日野先輩に声をかけられた7人の人以外は知らないはずなのに)と坂上が思っていると、福沢が、
 「気にしないでね。早苗ちゃんは時々、ヘンなことを言い出すことがあるから。でも。とってもいい子だよ」とフォローする。
 ずっと居眠りをしていた風間がいつの間にか目を覚まして、
 「そうとも、こんん可愛い女の子が、悪い子であるわけがないさ。早く入っておいで。なんだったらボクの膝の上に座ってもいいんだよ」と声を掛けた。
 「それでは、おじゃまします~」
 遠慮がちに入室してきた元木を、坂上は空いている席に案内した。
 「皆さん、改めまして、よろしくお願いします~。私、1年の元木早苗といいます。玲子ちゃんのクラスメイトです~」
 「元木さん、日野先輩にここを教えてもらったわけじゃないんだよね?」
 「はい。あ。ところで、あなたが坂上修一君?」
 「そうだけど」
 (どうして、この子は僕の名前を知っているのだろう)
 元木は可愛らしく微笑むと、不思議なことを口走った。
 「そう、良かった。まだ生きてるので~」
 「え・・・」
 「おばあちゃんがね、ここで坂上君が困っているだろうから、助けに行ってあげなさいって言ってたの」
 「は?」
 福沢が必死にフォローするかのように、目の前で手をひらひらとさせて、その場の空気を変えようとした。
 「あ~細かいことは聞かなかったことにして!運が良ければ、その目で超常現象を確認できると思うから。
 それよりさ、怖い話をさせるんだったら、早苗ちゃんはピッタリだと思うよ。7人目はいつまで待っても来ないみたいだし。
 ね、早苗ちゃんもいい?」
 「はい~、私でよろしければ」
 「さっさと話してもらって、お開きにしようぜ」と新堂が口を開いた。
 「では、元木さん、よろしくお願いします」と坂上は言った。


 これはまだ携帯が一般的になる前の時代の話。
 この学校のあるクラスで、交換日記が流行った。
 はじめは数人の女の子のグループが始めたのだが、その様子があまりにも楽しそうなので、あっという間に、他のクラスメイトにも広まった。
 みんなそれぞれ、仲良しのグループに分かれて、好きな人の名を書き合ったり、自分がおすすめしたいものなんかを書いたり、先生の悪口で盛り上がったりしていた。
 その流行の陰で交換日記のグループに入り損ねた女の子がいた。名前は、大本真美。
 彼女はあまり人付き合いがうまい方ではなく、人の輪に入ることが苦手で、誘われても断ってしまうような自ら壁を作ってしまうような人だった。
 それに、学校は勉強をしに来るところだからという生真面目な一面が強くて、勉強そっちのけで学園生活を楽しんでいるクラスメイトたちを毛嫌いしている部分もありました。
 別に孤立するほどの嫌われ者ではないが、付き合い下手な彼女には、交換日記で互いの秘密を見せ合いっこするほど心を許してくれるような友達もいなかった。
 休み時間にきゃあきゃあと交換日記の話題で騒いでいる子たちを横目で眺めながら、大本は胸の中に湧き上がる敗北感と孤独を、必死に押し隠していた。
 表面上は『そんなものにうつつを抜かすより先に、学生としてやらなければならないことがあるんじゃないの?』と涼しい顔をしていたが、内面では、交換日記に激しい憧れを抱いていた。


 そんなある日のこと。
 大本がいつものように家路を歩いていると、塀の向こうの見慣れた木の洞に、何かがねじ込まれているのが見えた。
 どうやら、それは丸められたノートのようだった。
 大本は木の洞に手を伸ばして、そのノートを引き抜くと、風雨に晒されたように古びていたが、表紙には交換日記と書かれていた。
 彼女はボロボロのノートを開いたが、前半部分は、長い間放置されているうちに水が染みこんだせいか、紙が癒着していた。
 そこで比較的損傷の少ない後ろの方のページを選んでめくると、こんなことが書かれていた。
 『僕と交換日記をしませんか?』
 開いたページの左上に、ぽつんとそれだけが書いてあり、そこから後は何も記されてはなかった。


 大本は誰のものかわからないそのノートを、こっそり持ち帰った。
 『僕と交換日記をしませんか?』
 それは、几帳面そうな性格がうかがえる、読みやすい字だった。
 大本は、字の綺麗な少年と交換日記をしているんだ、という少しロマンチックな想像をしてその書き込みの下に続けて書いた。
 『あなたは誰?うちの学校の生徒なの?いつから交換日記の相手を待ち続けているの?』


 そして、翌日の朝、登校するついでに、同じ木の洞へノートを押し込んだ。
 しかし、数日たっても、ノートに何の変化のないことに落胆しているうちに、大本は、一度希望を持って裏切られた分、さらに暗い感情は強まって行った。


 次の週のある日、大本はいつものようにあの木の側を通りかかった。
 気のせいか、いつもとは少し違う形でノートが突っ込まれていたので、大本は、急いでノートを抜き取り、その場で開いた。
 すると、大本の書き込みの下に、例の几帳面そうな文字で返答が書かれていた。
 『こんにちは。書き込みありがとうございます。僕は他校の生徒です。この学校に通う人と、ずっと交換日記をしていました。でも、ある日突然、相手から返事がこなくなったんです。
 僕は相手の名前しか知らなかったから、何があったのか調べる手段もなくて、つい、新しい交換日記の相手を募るようなことを書いてしまったんです。
 それが2年前のことです。まさか、今になって書き込んでくれる人が現れるとは、思ってもみなせんでした。よろしければ、本当に僕と交換日記をしていただけないでしょうか?』


 大本は家に持って帰ると、ペンを執った。
 『いいわよ。私は大本真美。まずはあなたのことを知りたいわ。あなたはどこの高校に通っているの?
 2年前にいつの生徒と交換日記をしていたということは、今は3年生ぐらいかしら?以前の交換日記の相手とも、こうして顔も知らない状態でやりとりしていたの?
 突然音信不通だなんて、可愛そうね。私、その人について調べてあげましょうか?』


 大本は次の日の朝、木の洞の中にノートを戻した。
 そして、数日後、ようやく待ち望んでいた変化があった。
 『お返事ありがとうございます。よろしくお願いします。前の交換日記の相手とも、やはりこんな風に偶然やりとりがはじまったんです。
 2年前の突然の音信不通にショックを受けましたが、こうして新しいご縁が見つかったので、すっかり未練も晴れました。調査の件は、気持ちだけいただいておきます。
 それよりも、僕はもっと大本さんのことが知りたいです。差支えのない範囲で、いろいろと書いていただければ嬉しいです。僕は、桂雅彦といいます』
 彼は必要以上に自分のことを書いていませんでしたが、この落ち着いた文体と丁寧な口調は、大本の胸をときめかせた。
 (こんな素敵な文章が書ける人なんですもの、きっと頭が良くて知的な感じの文学青年ね)
 彼女の中で、勝手に妄想が膨らんだ。
 まるで彼女は、桂さんのことを不遇な自分を助け出すために現れた、白馬の王子様であるかのように感じた。
 桂の日記は、こんな一文で締めくくられていた。
 『一つお願いがあります。このノートの前半部分は読まないでいただきたいのです。前の相手とのやりとりが残っていて、読むことも読まれることも心苦しいのです。どうかお願いします』
 大本はあくまでも強気な返事を書いた。
 『わかったわ。私は余計な詮索は嫌いだし、読もうにも、すっかりページがくっついちゃってるから、読めないの。安心してね』
 そして、彼のリクエストに応えて、自分のことを書き始めた。
 自分が2年生であること、進路の希望はある程度固まっていて、それに向けて努力をしていること・・・そんな、相手に都合よく見えることだけを書いた。
 最後に、クラスで交換日記が流行っていることを記し、ついでに小耳に挟んだルールを書いた。
 当時彼女のクラスで流行っていた交換日記にはあるルールがった。それは他人の日記の文章に、赤いペンと青いペンで下線を引くことで、読み手の意思を伝えるというものだった。


 他人の日記の文章全体に赤いペンで線を引くと、同意、好意、喜びなどの前向きな感情を表し、文章の一部に青いペンで線を引くと、否定、反感、悲しみなど、後ろ向きなニュアンスを現した。
 そして、そこから余白に矢印を引っ張って、コメントを書き込む。
 大本は、クラスの女の子たちが、そんな秘密めいたやり取りをしているのを盗み見て、交換日記をするときには、そのルールを試してみたいなって思っていた。
 『結構便利システムなのよ。せっかくだから、あなたも私の分に線を引いてみてね。じゃあ、末永くよろしくね』


 いつものように木の洞にノートを入れて数日後、大本の書き込みのあちこちには、赤い線がいっぱい引かれて、コメントが添えられていた。
 ノートの前半は見ないという約束や、大本さんの進路や努力に対しての部分、ルールを採用したいという意見や、『末永くよろしくね』の箇所にも、賛同の赤線が引かれていた。
 そして、心待ちにしていた桂からの返信に目を通した。
 『こんにちは、桂です。僕のお願いを聞いてくれてありがとう。君は2年生のうちから将来を見据えていて、えらいと思うな。
 僕はその時に努力しなかったことを、遅まきながら悔やんでいます。赤い線と青い線のルール?面白いものがあるんだね。僕もさっそくやってみました。
 交換日記なのに、話し合っている感じがして、けっこう楽しいね。こちらこそよろしく』
 桂の新しい書き込みに対しても、彼女は賛同や喜びの赤線を、どんどん引いて行った。
 しかし、桂の書いたこんな一文が、大本の手を止めた。
 『大本さんのクラスでは交換日記が流行っているそうだけど、今、誰かと交換日記をしているの?』
 大本は、いつか桂と直接会うことがあった時、嘘つきだと思われたくなかったので、みじめさを押し殺して真実を記した。
 『交換日記は、あなた以外の誰ともしてないわ。誰にも誘われなかったからなの。
 学生は勉強をしに学校へ通うべきだと思ってるし、将来を見据えて、今から努力を積み重ねていくべきだと考えているの。
 だから、そういう人間を軽蔑し、避けている。それに私は、あまり人付き合いがうまい方じゃないの。
 やっぱり、心のどこかでそういう連中を見下しているのかもしれない。でも、こういう意見は煙たいんでしょうね。あなたにも嫌われてしまうかもしれない。
 でも、あなたの顔が見えないから、こんなことも素直に書けてしまう。私がバカなんだわ。こんなこと書いても、ネガティブだし嫌われるだけだよね』
 そこには、寂しさ、誇り、反省、後悔・・・クラスメイトの前では出すことのない、大本の本当の気持ちがつづられていた。


 あんなことを書いてしまっては、もう返事は来ないかもれいない。
 そんな心配をよそに、桂から帰って来たノートにや、いたるところに赤線が引いたあったが、『私がバカなんだわ』という一文には青線が引かれ、『そんなことない!』というコメントがついていた。
 『大本さんはしっかりした魅力的は人だと思う。学生の本文について、将来を見据えた勉強の必要性について、きちんと理解している高校生は珍しいよ。
 たしかに、考え方が正しければ高圧的な態度に出ていい、ということはないけれど、でも僕はこう思う。あの時、僕の側に君のような人がいてくれたなら・・・
 僕の不真面目で怠惰な生活に警鐘を鳴らしてくれる人がいたなら、僕はもっと早く目を覚まして、進路について考えていただろう。
 誰もが切羽詰まってから、きっと君の正しさを理解し、尊敬し、ありがたく思うはずだよ。
 なによりも、自分の態度を反省しているのが偉いね。自分のことを客観的に見て反省することは、難しい。
 君は自分が孤独だと思っているようだけど、その誠実さは、クラスの誰かには伝わっていると、僕は思うよ』
 大本は、感動のあまり涙を流した。そしてノートに向かって、何度も、ありがとう、と呟いた。
 桂に認められたことで、大本は失いかけた自信を取り戻すことができた。
 (そうよ、やっぱり私は正しいんだわ。受験に備えることの大切さを理解しているのは、私だけなんだから、私は別にそんな人たちを群れる必要はない。
 一人でも大丈夫。いつか私のことを理解してくれる人たちに囲まれて生きる日がやって来るはず)


 次の日から、大本は、一人でいることに寂しさを感じることはなくなった。
 だから、二人の交換日記は順調に続いた。
 むしろ、学校でため込んでいる孤独や反発を慰めてくれる桂の言葉は、大本にとって、なくてはならないものになっていった。
 それに自分の発言が、自信を失いがちな桂の支えになっていることを確信し、彼から頼られる喜びすら感じていた。
 桂が大本に好意を持っていることは密かに感じていたが、それ以上の進展は全くなかった。


 実は大本は同じクラスの畑中亨が好きだった。
 畑中は、クラスで孤立している大本に話しかけてくれる数少ない人だった。
 畑中は、宿題を忘れた、と言ってノートを借りに来て、
 「頭がいいだけじゃなくて、マジメだし、努力家だよな」なんて、声を掛けてくれていたので、大本は密かに、畑中は自分のことが好きなんじゃないか、と思っていた。
 そんなわけで、大本は桂をキープしつつ、畑中からの求愛を待っていた。
 ところがある日、畑中がある女の子に告白し、相手もそれを受け入れたのだ。
 その一部始終は、休み時間の教室で、クラスメイトたちの前で堂々と行われて、当然大本を目撃していた。もともと畑中は、ボクシング部で強くてかっこよくて、クラスの人気者だったから。


 その日の放課後、忘れ物を取りに大本が教室に戻った時、帰らずに残っていた女の子たちが、大本についてウワサしているのを聞いてしまった。
 「大本さんさ、畑中が告白したとき、すごい顔してたよね」
 「あの人、鬼みたいな顔してたよ」
 「へー、やっぱり大本さん、畑中のことが好きだったんだ」
 「でもさ、畑中ってずっとアユミちゃん狙いじゃん。見ててもわかんないのかな?」
 「畑中がよくノートを借りにいったから・・・」
 「あー、誤解しちゃったのね。自分のことが好きなんだって」
 「なんかかわいそー。畑中、影ではかなり大本の悪口言ってたのにさ」
 「そうそう、『大本にはノート書く以外の取柄はない』なんてきっぱり言っちゃってね~」
 「畑中も卑怯だよね。ノート借りるときは調子いいくせに。まあ、大本さんの態度もさ、調子乗ってるというか」
 「学級委員でもないのにいつも偉そうにしているし、ムカつくのもわかるかなって」
 「いい気味かもね」
 「きゃははは」


 大本は気づかれないよう、その場を去り、走って走って交換日記の隠し場所のある木ののころまで来たが、汗と涙で顔がグチャグチャになっていた。
 大本はノートを取り出し、その場で書き込むと、またすぐ元に戻した。
 『今日学校でひどいことがあった。もう明日から学校行けない。死にたいよ。助けて』


 翌日大本は学校を休んだ。頭まで布団をかぶって、泣きながら一日を過ごしたが、夕方になって、あの日記の返事が気になって仕方がなくなくなり、あの木の下へ向かった。
 ノートを開くと、まったく予想をしていなかったことが書かれていた。
 『じゃあ、会おうか。
 君が本当に僕の助けを必要としているのなら、会おう。夜中の2時にこの木の下に来て欲しい。僕は君と会えるまで、毎日待っているから』


 夜の2時なると、大本はこっそり家を抜け出し、いつもの木の元に向かったが、途中で、桂と会えなかったらどうしよう、という考えた頭をよぎった。
 なんらかの事情で、桂がこちらに向かえないこともあるでしょうし、もし会えなかったら、待ち合わせ場所に来たということと、彼への感謝の気持ちを日記に書き残しておいたほうがいいだろう、と大木は考えた。


 手ぶらだった彼女は、文房具を取りに家に戻ったと思いますか?

 

 

  • 戻った
  • 戻らなかった

 彼女は一度文房具を取りに戻って改めて出発したが、最初から早めに家を出ていたので、木の下には約束の時間の5分前に着くことができた。
 木の下には誰もいなかったので、大本はその場で桂を待つことにした。
 ところが、決められた時間を過ぎても、桂は現れない。
 時間を持て余した大本は、ノートを開いた。すると、昼間の書き込みに新しい文章が付け加えられていた。
 『君が本当に僕の助けを必要としているのなら、会おう。夜中の2時にこの木の下に来て欲しい。
 僕には君を連れて行くことしかできない。
 僕が手伝ってあげるから、気を楽にして』
 大本がなんとなく嫌な予感を覚えながら首をかしげた寸簡、大本の喉に何かが食い込んできた。
 何者かに襲われて、背後から紐で絞められている!大本はそう思い、慌てて喉に手を当てたが、そこには何もなかった。それなのに、喉の肉が何かが食い込んでいるかのように凹んでいる。
 大本はパニックに陥りつつ、息苦しさから逃れるため、顔を上に向けた。
 すると、木の枝から首を吊っている男の子が、大本を見つめていた。
 見えない力に、大本の意識はどんどんと遠ざかっていった。
 (このままじゃ、いや!いやよ!)
 大本はもだえ苦しみながら、鞄の中から筆記具を取り出し、『君が本当に僕の助けを必要としているのなら』の部分に青線を引くと、首の締め付けが少しだけ楽になった。
 『僕には君を連れて行くことしかできない、僕が手伝ってあげるから』
 大本は、桂からの返事に否定の意味の青い線を引いた。
 『死にたいよ。助けて』という発作的に書き込んでしまった自分の後ろ向きな言葉も青いペンで否定した。気が付くと喉を締め付ける圧力は完全に失われており、木の上を見上げても、そこにはもう何もなかった。


 大本は恐怖にもつれる足を引きずりながら、自分の部屋に駆け込み、布団が被って震えていたが、なぜかあの交換日記を持っていた。
 朝が来ても、自分が助かったことに確信が持てず、大本は机の上に投げ出したままにしておいたノートから逃げるようににして、学校に行った。
 もちろん、通学する時も、あの木の近くを通る気にはなれないので、普段は通らない回り道を選んだ。
 畑中の件に関する決まりの悪さも、女の子たちの嘲りも、昨夜の恐ろしい出来事に比べたら大したことではなかった。


 重い足取りで家に帰って、自分の部屋に入った大本は、机の上にノートを見て声にならない悲鳴をあげた。閉じたまま置いていたはずなのに、勝手にページが開いていたのだ。
 『どうしても、こちらに来るのはいやなのかい?』
 そこには、新たな書き込みがあり、大本はちゃんと返事をしなければならないと思った。
 (私が中途半端な気持ちで死にたいなんて書いたからいけなかったのよ。ちゃんと書いて、わかってもらわなきゃ)
 『ごめんなさい。どうしてもそっちには行きたくない。私は死にたくない。あなたの気持ちは嬉しいけど、私はまだ生きていたいのよ。こっちにいたいの。
 あなたのことは、きちんと供養させてもらいます。今までありがとう』


 その夜、不意にある疑問が大本の脳裏をよぎった。それはノートの前半部分には何が書かれていたのだろうか、ということだった。
 ノートを手にとってみると、紙と紙とがくっついてはいますが、へりの部分から剥がれてきていて、うまくやれば閉ざされていたページを読むことができそうだった。
 加湿器のスチームを当ててみたり、定規をすべりこませてみたり、慎重に長い時間をかけて作業を行い、ようやくページを開くことに成功した。


 一番最初のページには、こう書かれていた。
 『私と交換日記しませんか?』
 それは見慣れた桂の文字とは違うものだった。最初に交換日記をしようと誘ったのは、相手の方だった。
 その次は桂の書き込みがあり、桂と大本の時と同じようなやりとりで日記は進んでいった。
 日記の文章から察すると、桂の最初の交換日記の相手は女の子だった。
 大本たちと同じように、お互いに自分の愚痴を書いたり、それを励まし合ったり慰めあったりして、信頼や結束を強くしていったようです。
 そして、恋心を育んでいく過程がひしひしと伝わって来た。
 ある日、受験勉強に苦しんでいた桂が、深刻な書き込みをしていた。
 準備を怠った後悔、勉強しても成績が上がらない苦しみ、模試の結果、ライバルたちの成長ぶり、両親の期待・・・そこには桂の苦悩が書き連ねられていた。
 『いっそのこと死んでしまいたい』
 日記はそう結ばれており、それに対する彼女の返信は、
 『会おうか。今夜2時、例の木の下で待ってるよ』
 そう、桂と自分のやりとりとまったく同じだった。


 そのページを最後に、しばらく空白が続き、そして再開された書き込みは、大本が最初に目にした『僕と交換日記をしませんか?』という桂の誘いだった。
 「約束を破ったね」
 耳元で、背筋が凍りつくような冷たい男の声がした。
 大本は、それは桂の声なのだと思った。そして、恐怖で硬直した大本の前で、ノートのページが勝手にめくられていった。
 ページは、大本の最後の書き込みのところで止まり、途切れ途切れの赤線が引かれていった。


 ごめんなさい。『どうしてもそっちに』は『行きた』くな『い』。『私は死にた』くな『い』。
 『こ』っちにいたいの。あなたのことは供養し『ろ』というならどこかに頼む『し』、任せて『ちょうだい』。今まで『ありがとう』


 どうしてもそっちに行きたい。私は死にたい。ころしてちょうだい。ありがとう。


 大本は次の日、例の木で首を吊っている状態で発見された。
 畑中の一件は、クラス内でもともと孤立していたことを苦にしての自殺だと片付けら、それ以上調べられることはありませんでした。


 「その交換日記や、次々と人が首を吊る木なんですけど、実は、この学校の裏地にまだあるんですよ。皆さんも気を付けてくださいね」


 もし木の洞にノートを見つけても決して触れないでください。
 あ、実は私、うっかり触ってしまって、危ない目にあったことがあるんです。
 例によって前半部分はくっついていて読めず、かろうじて読める最初のページには、
 『私と交換日記をしない?』
 と書いてありました。後になって思えば、あれは大本さんの筆跡だったのでしょうね。その瞬間、私の全身は金縛りにあって、動けなくなったんです。
 それもで少しだけ体の自由が利くようになっていたので、鞄の中なら青いペンを取り出して、ノートの表紙に線を引いたんです。
 『学校に伝えられている、交換日記のルールを思い出しなさい』っておばあちゃんが教えてくれたら、私は力を振り絞って、交換日記という文字の交換の下に青い線を引きました。すると、ふっと呪縛が解けたんです。
 交換を否定したことで、交換日記を続けさせる呪いの効力は減ったようですが、それでもやっぱりたくさんの人の怨念が詰まった危険なものですから・・・
 皆さん、くれぐれも気を付けてくださいね。


 後味が悪いのか、皆一様に下を向き、黙り込んでいる。
 「元木さん、ありがとうございました。今のお話、新聞に載せても、大丈夫ですよね」
 「はい、もちろんです。おばあちゃんは、そのために行けって言っていたんですもの」
 「ところで、ひとつ気になることがあるのですが」と荒井が沈黙を破って口を開いた。
 「僕の元木早苗さんの噂は聞いたことがあります。この鳴神学園に大変能力の高い霊能者が入学してきた、と。
 できれば、一度その能力を後学のためにも一度拝見させていただきたいのですが」

 

 

 「駄目です。そんなものはここで見せなくていいです」
 「ちょっとタンマ!早苗ちゃん、こっち来て」
 元木は部室の隅に福沢に連れていかれてしまった。
 「皆さん、本日はお集りいただきまして、ありがとうございました」
 「おや、七不思議の方はもういいのかい?」と細田が聞いてきた。
 「はい、七不思議が集まりましたから、皆さんはお帰りいただいて大丈夫です」
 「そう?僕がもっと話してあげようかと思ったんだけど」
 「おい、坂上がいいって言ってんだから、いいだろうが。それにどうせ、お前の話はまたトイレだろ?」
 「ひどいですよ、新堂さん。僕は親友の坂上君のために、一肌脱いであげようかと・・・」
 「もう帰ろうぜ」
 「そうね、私はお先に失礼するわ」と岩下がさっさと一人で帰ってしまうと、それをきっかけに皆口々に別れの挨拶を言うと、部室を後にしていった。


 部室に残ったのは坂上ただ一人。
 「交換日記か・・・」
 実は、あの交換日記は坂上の鞄の中にあるのだ。
 坂上は鞄を拓いて、中から古ぼけたノートを取り出した。
 (まさか、僕がこのノートを持っているのを知って、わざと交換日記の話をしたんじゃないだろうか?
 あの樹でたくさんの人が首を吊ったなんてウワサ、聞いたことがない。
 それにあれは、大事な樹なんだから。いずれ、僕のものになる。絶対に誰にも邪魔させはしない。ひひひ)
 「やっぱり坂上君が持っていたんですね~」
 突然ドアが開き、元木が姿を見せた。そして、坂上に近づき、さっとノートを奪ってしまった。
 「このノートは私がお預かりしておきます。きちんと除霊しなければなりませんので~」
 「僕のノート・・・」
 「坂上君って、そんなに交換日記をしたいんですか?もしよかったら私としませんか」


 エンディング№454:交換日記の怖い話
 エンディング数 79/657 達成度12%
 キャラクター図鑑 57/122 達成度46%
 イラストギャラリー 52/283 達成度18%

 

 

 

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 1週目クリア
 倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
 1人目の福沢のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
 2人目の岩下のシナリオ:窓枠の中で→エンディング№310~313を見る
 3人目は風間のシナリオ:下半身ババア→エンディング№168・169を見る
 4人目は荒井のシナリオ:いみぐい村→エンディング№74・75を見る
 5人目は細田のシナリオ:トイレの恋→エンディング№270~272見る
 6人目は新堂のシナリオ:吉田ババア→エンディング№001~005を見る
 7話目はシナリオ:うしろの正面:エンディング№426~431を見る


 2週目開始!
 倉田のシナリオ:呪われたロッカー→エンディング№376~383を見る
 1人目は岩下のシナリオ:ポプリ→エンディング№213~217を見る
 2人目は細田のシナリオ:サトリサマ→エンディング№262~265を見る
 3人目は福沢のシナリオ:彼と彼女の秘密→エンディング№140~142、144・145を見る(143は後で見る予定)
 4人目は風間のシナリオ:ひとり七不思議→エンディング№181~187を見る
 5人目は新堂のシナリオ:ゲーム実況怪談→エンディング№53・54を見る
 6人目は荒井のシナリオ:時田君の自主製作映画→エンディング№58~61・63(62は後で見る予定)


 語り部6人の話が終わったが、7人目はまだ姿を見せない。
 「全員の話が終わったぜ。どうするんだ?」
 新堂に促された。どうしよう。
  • もうしばらく待ちましょう
  • 荒井さんの意見を聞きたい
  • 帰りましょう
 シナリオ:交換日記の怖い話開始!


 最後に話をしてくれた荒井の意見を聞いてみよう。
 「あのう、荒井さん、何か意見はありますか?」
 「意見?僕にこの状況でどんな意見を言えというのですか?」
 お開きにした方がいいな、と坂上が思って、立ち上がろうとした時だった。
 「こんにちは」
 突然ドアが開き、まだ幼い印象の残る女の子が立っていた。元木早苗だった。
 「あっれ~、早苗ちゃんじゃない!」と福沢が驚いて声を上げた。
 「あ、玲子ちゃん、こんにちは~。他の皆さんも初めましてです~。どうぞ、よしなに~」
 「あ、もしかして7人目って、早苗ちゃんのことだったの?」
 「えっと、私は・・・」
  • 黙って聞いている
  • 7人目なんですよね?
  • 7人目ではないですよね?
 坂上は黙って元木の次の言葉に注目した。
 「7人目というわけじゃないんだけど。おばあちゃんが、行きなさいって言うので~」
 (七不思議の集会のことは、僕と、新聞部との人たちと、日野先輩に声をかけられた7人の人以外は知らないはずなのに)と坂上が思っていると、福沢が、
 「気にしないでね。早苗ちゃんは時々、ヘンなことを言い出すことがあるから。でも。とってもいい子だよ」とフォローする。
 ずっと居眠りをしていた風間がいつの間にか目を覚まして、
 「そうとも、こんん可愛い女の子が、悪い子であるわけがないさ。早く入っておいで。なんだったらボクの膝の上に座ってもいいんだよ」と声を掛けた。
 「それでは、おじゃまします~」
 遠慮がちに入室してきた元木を、坂上は空いている席に案内した。
 「皆さん、改めまして、よろしくお願いします~。私、1年の元木早苗といいます。玲子ちゃんのクラスメイトです~」
 「元木さん、日野先輩にここを教えてもらったわけじゃないんだよね?」
 「はい。あ。ところで、あなたが坂上修一君?」
 「そうだけど」
 (どうして、この子は僕の名前を知っているのだろう)
 元木は可愛らしく微笑むと、不思議なことを口走った。
 「そう、良かった。まだ生きてるので~」
 「え・・・」
 「おばあちゃんがね、ここで坂上君が困っているだろうから、助けに行ってあげなさいって言ってたの」
 「は?」
 福沢が必死にフォローするかのように、目の前で手をひらひらとさせて、その場の空気を変えようとした。
 「あ~細かいことは聞かなかったことにして!運が良ければ、その目で超常現象を確認できると思うから。
 それよりさ、怖い話をさせるんだったら、早苗ちゃんはピッタリだと思うよ。7人目はいつまで待っても来ないみたいだし。
 ね、早苗ちゃんもいい?」
 「はい~、私でよろしければ」
 「さっさと話してもらって、お開きにしようぜ」と新堂が口を開いた。
 「では、元木さん、よろしくお願いします」と坂上は言った。


 これはまだ携帯が一般的になる前の時代の話。
 この学校のあるクラスで、交換日記が流行った。
 はじめは数人の女の子のグループが始めたのだが、その様子があまりにも楽しそうなので、あっという間に、他のクラスメイトにも広まった。
 みんなそれぞれ、仲良しのグループに分かれて、好きな人の名を書き合ったり、自分がおすすめしたいものなんかを書いたり、先生の悪口で盛り上がったりしていた。
 その流行の陰で交換日記のグループに入り損ねた女の子がいた。名前は、大本真美。
 彼女はあまり人付き合いがうまい方ではなく、人の輪に入ることが苦手で、誘われても断ってしまうような自ら壁を作ってしまうような人だった。
 それに、学校は勉強をしに来るところだからという生真面目な一面が強くて、勉強そっちのけで学園生活を楽しんでいるクラスメイトたちを毛嫌いしている部分もありました。
 別に孤立するほどの嫌われ者ではないが、付き合い下手な彼女には、交換日記で互いの秘密を見せ合いっこするほど心を許してくれるような友達もいなかった。
 休み時間にきゃあきゃあと交換日記の話題で騒いでいる子たちを横目で眺めながら、大本は胸の中に湧き上がる敗北感と孤独を、必死に押し隠していた。
 表面上は『そんなものにうつつを抜かすより先に、学生としてやらなければならないことがあるんじゃないの?』と涼しい顔をしていたが、内面では、交換日記に激しい憧れを抱いていた。


 そんなある日のこと。
 大本がいつものように家路を歩いていると、塀の向こうの見慣れた木の洞に、何かがねじ込まれているのが見えた。
 どうやら、それは丸められたノートのようだった。
 大本は木の洞に手を伸ばして、そのノートを引き抜くと、風雨に晒されたように古びていたが、表紙には交換日記と書かれていた。
 彼女はボロボロのノートを開いたが、前半部分は、長い間放置されているうちに水が染みこんだせいか、紙が癒着していた。
 そこで比較的損傷の少ない後ろの方のページを選んでめくると、こんなことが書かれていた。
 『僕と交換日記をしませんか?』
 開いたページの左上に、ぽつんとそれだけが書いてあり、そこから後は何も記されてはなかった。


 大本は誰のものかわからないそのノートを、こっそり持ち帰った。
 『僕と交換日記をしませんか?』
 それは、几帳面そうな性格がうかがえる、読みやすい字だった。
 大本は、字の綺麗な少年と交換日記をしているんだ、という少しロマンチックな想像をしてその書き込みの下に続けて書いた。
 『あなたは誰?うちの学校の生徒なの?いつから交換日記の相手を待ち続けているの?』


 そして、翌日の朝、登校するついでに、同じ木の洞へノートを押し込んだ。
 しかし、数日たっても、ノートに何の変化のないことに落胆しているうちに、大本は、一度希望を持って裏切られた分、さらに暗い感情は強まって行った。


 次の週のある日、大本はいつものようにあの木の側を通りかかった。
 気のせいか、いつもとは少し違う形でノートが突っ込まれていたので、大本は、急いでノートを抜き取り、その場で開いた。
 すると、大本の書き込みの下に、例の几帳面そうな文字で返答が書かれていた。
 『こんにちは。書き込みありがとうございます。僕は他校の生徒です。この学校に通う人と、ずっと交換日記をしていました。でも、ある日突然、相手から返事がこなくなったんです。
 僕は相手の名前しか知らなかったから、何があったのか調べる手段もなくて、つい、新しい交換日記の相手を募るようなことを書いてしまったんです。
 それが2年前のことです。まさか、今になって書き込んでくれる人が現れるとは、思ってもみなせんでした。よろしければ、本当に僕と交換日記をしていただけないでしょうか?』


 大本は家に持って帰ると、ペンを執った。
 『いいわよ。私は大本真美。まずはあなたのことを知りたいわ。あなたはどこの高校に通っているの?
 2年前にいつの生徒と交換日記をしていたということは、今は3年生ぐらいかしら?以前の交換日記の相手とも、こうして顔も知らない状態でやりとりしていたの?
 突然音信不通だなんて、可愛そうね。私、その人について調べてあげましょうか?』


 大本は次の日の朝、木の洞の中にノートを戻した。
 そして、数日後、ようやく待ち望んでいた変化があった。
 『お返事ありがとうございます。よろしくお願いします。前の交換日記の相手とも、やはりこんな風に偶然やりとりがはじまったんです。
 2年前の突然の音信不通にショックを受けましたが、こうして新しいご縁が見つかったので、すっかり未練も晴れました。調査の件は、気持ちだけいただいておきます。
 それよりも、僕はもっと大本さんのことが知りたいです。差支えのない範囲で、いろいろと書いていただければ嬉しいです。僕は、桂雅彦といいます』
 彼は必要以上に自分のことを書いていませんでしたが、この落ち着いた文体と丁寧な口調は、大本の胸をときめかせた。
 (こんな素敵な文章が書ける人なんですもの、きっと頭が良くて知的な感じの文学青年ね)
 彼女の中で、勝手に妄想が膨らんだ。
 まるで彼女は、桂さんのことを不遇な自分を助け出すために現れた、白馬の王子様であるかのように感じた。
 桂の日記は、こんな一文で締めくくられていた。
 『一つお願いがあります。このノートの前半部分は読まないでいただきたいのです。前の相手とのやりとりが残っていて、読むことも読まれることも心苦しいのです。どうかお願いします』
 大本はあくまでも強気な返事を書いた。
 『わかったわ。私は余計な詮索は嫌いだし、読もうにも、すっかりページがくっついちゃってるから、読めないの。安心してね』
 そして、彼のリクエストに応えて、自分のことを書き始めた。
 自分が2年生であること、進路の希望はある程度固まっていて、それに向けて努力をしていること・・・そんな、相手に都合よく見えることだけを書いた。
 最後に、クラスで交換日記が流行っていることを記し、ついでに小耳に挟んだルールを書いた。
 当時彼女のクラスで流行っていた交換日記にはあるルールがった。それは他人の日記の文章に、赤いペンと青いペンで下線を引くことで、読み手の意思を伝えるというものだった。


 他人の日記の文章全体に赤いペンで線を引くと、同意、好意、喜びなどの前向きな感情を表し、文章の一部に青いペンで線を引くと、否定、反感、悲しみなど、後ろ向きなニュアンスを現した。
 そして、そこから余白に矢印を引っ張って、コメントを書き込む。
 大本は、クラスの女の子たちが、そんな秘密めいたやり取りをしているのを盗み見て、交換日記をするときには、そのルールを試してみたいなって思っていた。
 『結構便利システムなのよ。せっかくだから、あなたも私の分に線を引いてみてね。じゃあ、末永くよろしくね』


 いつものように木の洞にノートを入れて数日後、大本の書き込みのあちこちには、赤い線がいっぱい引かれて、コメントが添えられていた。
 ノートの前半は見ないという約束や、大本さんの進路や努力に対しての部分、ルールを採用したいという意見や、『末永くよろしくね』の箇所にも、賛同の赤線が引かれていた。
 そして、心待ちにしていた桂からの返信に目を通した。
 『こんにちは、桂です。僕のお願いを聞いてくれてありがとう。君は2年生のうちから将来を見据えていて、えらいと思うな。
 僕はその時に努力しなかったことを、遅まきながら悔やんでいます。赤い線と青い線のルール?面白いものがあるんだね。僕もさっそくやってみました。
 交換日記なのに、話し合っている感じがして、けっこう楽しいね。こちらこそよろしく』
 桂の新しい書き込みに対しても、彼女は賛同や喜びの赤線を、どんどん引いて行った。
 しかし、桂の書いたこんな一文が、大本の手を止めた。
 『大本さんのクラスでは交換日記が流行っているそうだけど、今、誰かと交換日記をしているの?』
 大本は、いつか桂と直接会うことがあった時、嘘つきだと思われたくなかったので、みじめさを押し殺して真実を記した。
 『交換日記は、あなた以外の誰ともしてないわ。誰にも誘われなかったからなの。
 学生は勉強をしに学校へ通うべきだと思ってるし、将来を見据えて、今から努力を積み重ねていくべきだと考えているの。
 だから、そういう人間を軽蔑し、避けている。それに私は、あまり人付き合いがうまい方じゃないの。
 やっぱり、心のどこかでそういう連中を見下しているのかもしれない。でも、こういう意見は煙たいんでしょうね。あなたにも嫌われてしまうかもしれない。
 でも、あなたの顔が見えないから、こんなことも素直に書けてしまう。私がバカなんだわ。こんなこと書いても、ネガティブだし嫌われるだけだよね』
 そこには、寂しさ、誇り、反省、後悔・・・クラスメイトの前では出すことのない、大本の本当の気持ちがつづられていた。


 あんなことを書いてしまっては、もう返事は来ないかもれいない。
 そんな心配をよそに、桂から帰って来たノートにや、いたるところに赤線が引いたあったが、『私がバカなんだわ』という一文には青線が引かれ、『そんなことない!』というコメントがついていた。
 『大本さんはしっかりした魅力的は人だと思う。学生の本文について、将来を見据えた勉強の必要性について、きちんと理解している高校生は珍しいよ。
 たしかに、考え方が正しければ高圧的な態度に出ていい、ということはないけれど、でも僕はこう思う。あの時、僕の側に君のような人がいてくれたなら・・・
 僕の不真面目で怠惰な生活に警鐘を鳴らしてくれる人がいたなら、僕はもっと早く目を覚まして、進路について考えていただろう。
 誰もが切羽詰まってから、きっと君の正しさを理解し、尊敬し、ありがたく思うはずだよ。
 なによりも、自分の態度を反省しているのが偉いね。自分のことを客観的に見て反省することは、難しい。
 君は自分が孤独だと思っているようだけど、その誠実さは、クラスの誰かには伝わっていると、僕は思うよ』
 大本は、感動のあまり涙を流した。そしてノートに向かって、何度も、ありがとう、と呟いた。
 桂に認められたことで、大本は失いかけた自信を取り戻すことができた。
 (そうよ、やっぱり私は正しいんだわ。受験に備えることの大切さを理解しているのは、私だけなんだから、私は別にそんな人たちを群れる必要はない。
 一人でも大丈夫。いつか私のことを理解してくれる人たちに囲まれて生きる日がやって来るはず)


 次の日から、大本は、一人でいることに寂しさを感じることはなくなった。
 だから、二人の交換日記は順調に続いた。
 むしろ、学校でため込んでいる孤独や反発を慰めてくれる桂の言葉は、大本にとって、なくてはならないものになっていった。
 それに自分の発言が、自信を失いがちな桂の支えになっていることを確信し、彼から頼られる喜びすら感じていた。
 桂が大本に好意を持っていることは密かに感じていたが、それ以上の進展は全くなかった。


 実は大本は同じクラスの畑中亨が好きだった。
 畑中は、クラスで孤立している大本に話しかけてくれる数少ない人だった。
 畑中は、宿題を忘れた、と言ってノートを借りに来て、
 「頭がいいだけじゃなくて、マジメだし、努力家だよな」なんて、声を掛けてくれていたので、大本は密かに、畑中は自分のことが好きなんじゃないか、と思っていた。
 そんなわけで、大本は桂をキープしつつ、畑中からの求愛を待っていた。
 ところがある日、畑中がある女の子に告白し、相手もそれを受け入れたのだ。
 その一部始終は、休み時間の教室で、クラスメイトたちの前で堂々と行われて、当然大本を目撃していた。もともと畑中は、ボクシング部で強くてかっこよくて、クラスの人気者だったから。


 その日の放課後、忘れ物を取りに大本が教室に戻った時、帰らずに残っていた女の子たちが、大本についてウワサしているのを聞いてしまった。
 「大本さんさ、畑中が告白したとき、すごい顔してたよね」
 「あの人、鬼みたいな顔してたよ」
 「へー、やっぱり大本さん、畑中のことが好きだったんだ」
 「でもさ、畑中ってずっとアユミちゃん狙いじゃん。見ててもわかんないのかな?」
 「畑中がよくノートを借りにいったから・・・」
 「あー、誤解しちゃったのね。自分のことが好きなんだって」
 「なんかかわいそー。畑中、影ではかなり大本の悪口言ってたのにさ」
 「そうそう、『大本にはノート書く以外の取柄はない』なんてきっぱり言っちゃってね~」
 「畑中も卑怯だよね。ノート借りるときは調子いいくせに。まあ、大本さんの態度もさ、調子乗ってるというか」
 「学級委員でもないのにいつも偉そうにしているし、ムカつくのもわかるかなって」
 「いい気味かもね」
 「きゃははは」


 大本は気づかれないよう、その場を去り、走って走って交換日記の隠し場所のある木ののころまで来たが、汗と涙で顔がグチャグチャになっていた。
 大本はノートを取り出し、その場で書き込むと、またすぐ元に戻した。
 『今日学校でひどいことがあった。もう明日から学校行けない。死にたいよ。助けて』


 翌日大本は学校を休んだ。頭まで布団をかぶって、泣きながら一日を過ごしたが、夕方になって、あの日記の返事が気になって仕方がなくなくなり、あの木の下へ向かった。
 ノートを開くと、まったく予想をしていなかったことが書かれていた。
 『じゃあ、会おうか。
 君が本当に僕の助けを必要としているのなら、会おう。夜中の2時にこの木の下に来て欲しい。僕は君と会えるまで、毎日待っているから』


 夜の2時なると、大本はこっそり家を抜け出し、いつもの木の元に向かったが、途中で、桂と会えなかったらどうしよう、という考えた頭をよぎった。
 なんらかの事情で、桂がこちらに向かえないこともあるでしょうし、もし会えなかったら、待ち合わせ場所に来たということと、彼への感謝の気持ちを日記に書き残しておいたほうがいいだろう、と大木は考えた。


 手ぶらだった彼女は、文房具を取りに家に戻ったと思いますか?
  • 戻った
  • 戻らなかった
 彼女は一度文房具を取りに戻って改めて出発したが、最初から早めに家を出ていたので、木の下には約束の時間の5分前に着くことができた。
 木の下には誰もいなかったので、大本はその場で桂を待つことにした。
 ところが、決められた時間を過ぎても、桂は現れない。
 時間を持て余した大本は、ノートを開いた。すると、昼間の書き込みに新しい文章が付け加えられていた。
 『君が本当に僕の助けを必要としているのなら、会おう。夜中の2時にこの木の下に来て欲しい。
 僕には君を連れて行くことしかできない。
 僕が手伝ってあげるから、気を楽にして』
 大本がなんとなく嫌な予感を覚えながら首をかしげた寸簡、大本の喉に何かが食い込んできた。
 何者かに襲われて、背後から紐で絞められている!大本はそう思い、慌てて喉に手を当てたが、そこには何もなかった。それなのに、喉の肉が何かが食い込んでいるかのように凹んでいる。
 大本はパニックに陥りつつ、息苦しさから逃れるため、顔を上に向けた。
 すると、木の枝から首を吊っている男の子が、大本を見つめていた。
 見えない力に、大本の意識はどんどんと遠ざかっていった。
 (このままじゃ、いや!いやよ!)
 大本はもだえ苦しみながら、鞄の中から筆記具を取り出し、『君が本当に僕の助けを必要としているのなら』の部分に青線を引くと、首の締め付けが少しだけ楽になった。
 『僕には君を連れて行くことしかできない、僕が手伝ってあげるから』
 大本は、桂からの返事に否定の意味の青い線を引いた。
 『死にたいよ。助けて』という発作的に書き込んでしまった自分の後ろ向きな言葉も青いペンで否定した。気が付くと喉を締め付ける圧力は完全に失われており、木の上を見上げても、そこにはもう何もなかった。


 大本は恐怖にもつれる足を引きずりながら、自分の部屋に駆け込み、布団が被って震えていたが、なぜかあの交換日記を持っていた。
 朝が来ても、自分が助かったことに確信が持てず、大本は机の上に投げ出したままにしておいたノートから逃げるようににして、学校に行った。
 もちろん、通学する時も、あの木の近くを通る気にはなれないので、普段は通らない回り道を選んだ。
 畑中の件に関する決まりの悪さも、女の子たちの嘲りも、昨夜の恐ろしい出来事に比べたら大したことではなかった。


 重い足取りで家に帰って、自分の部屋に入った大本は、机の上にノートを見て声にならない悲鳴をあげた。閉じたまま置いていたはずなのに、勝手にページが開いていたのだ。
 『どうしても、こちらに来るのはいやなのかい?』
 そこには、新たな書き込みがあり、大本はちゃんと返事をしなければならないと思った。
 (私が中途半端な気持ちで死にたいなんて書いたからいけなかったのよ。ちゃんと書いて、わかってもらわなきゃ)
 『ごめんなさい。どうしてもそっちには行きたくない。私は死にたくない。あなたの気持ちは嬉しいけど、私はまだ生きていたいのよ。こっちにいたいの。
 あなたのことは、きちんと供養させてもらいます。今までありがとう』


 その夜、不意にある疑問が大本の脳裏をよぎった。それはノートの前半部分には何が書かれていたのだろうか、ということだった。
 ノートを手にとってみると、紙と紙とがくっついてはいますが、へりの部分から剥がれてきていて、うまくやれば閉ざされていたページを読むことができそうだった。
 加湿器のスチームを当ててみたり、定規をすべりこませてみたり、慎重に長い時間をかけて作業を行い、ようやくページを開くことに成功した。


 一番最初のページには、こう書かれていた。
 『私と交換日記しませんか?』
 それは見慣れた桂の文字とは違うものだった。最初に交換日記をしようと誘ったのは、相手の方だった。
 その次は桂の書き込みがあり、桂と大本の時と同じようなやりとりで日記は進んでいった。
 日記の文章から察すると、桂の最初の交換日記の相手は女の子だった。
 大本たちと同じように、お互いに自分の愚痴を書いたり、それを励まし合ったり慰めあったりして、信頼や結束を強くしていったようです。
 そして、恋心を育んでいく過程がひしひしと伝わって来た。
 ある日、受験勉強に苦しんでいた桂が、深刻な書き込みをしていた。
 準備を怠った後悔、勉強しても成績が上がらない苦しみ、模試の結果、ライバルたちの成長ぶり、両親の期待・・・そこには桂の苦悩が書き連ねられていた。
 『いっそのこと死んでしまいたい』
 日記はそう結ばれており、それに対する彼女の返信は、
 『会おうか。今夜2時、例の木の下で待ってるよ』
 そう、桂と自分のやりとりとまったく同じだった。


 そのページを最後に、しばらく空白が続き、そして再開された書き込みは、大本が最初に目にした『僕と交換日記をしませんか?』という桂の誘いだった。
 「約束を破ったね」
 耳元で、背筋が凍りつくような冷たい男の声がした。
 大本は、それは桂の声なのだと思った。そして、恐怖で硬直した大本の前で、ノートのページが勝手にめくられていった。
 ページは、大本の最後の書き込みのところで止まり、途切れ途切れの赤線が引かれていった。


 ごめんなさい。『どうしてもそっちに』は『行きた』くな『い』。『私は死にた』くな『い』。
 『こ』っちにいたいの。あなたのことは供養し『ろ』というならどこかに頼む『し』、任せて『ちょうだい』。今まで『ありがとう』


 どうしてもそっちに行きたい。私は死にたい。ころしてちょうだい。ありがとう。


 大本は次の日、例の木で首を吊っている状態で発見された。
 畑中の一件は、クラス内でもともと孤立していたことを苦にしての自殺だと片付けら、それ以上調べられることはありませんでした。


 「その交換日記や、次々と人が首を吊る木なんですけど、実は、この学校の裏地にまだあるんですよ。皆さんも気を付けてくださいね」


 もし木の洞にノートを見つけても決して触れないでください。
 あ、実は私、うっかり触ってしまって、危ない目にあったことがあるんです。
 例によって前半部分はくっついていて読めず、かろうじて読める最初のページには、
 『私と交換日記をしない?』
 と書いてありました。後になって思えば、あれは大本さんの筆跡だったのでしょうね。その瞬間、私の全身は金縛りにあって、動けなくなったんです。
 それもで少しだけ体の自由が利くようになっていたので、鞄の中なら青いペンを取り出して、ノートの表紙に線を引いたんです。
 『学校に伝えられている、交換日記のルールを思い出しなさい』っておばあちゃんが教えてくれたら、私は力を振り絞って、交換日記という文字の交換の下に青い線を引きました。すると、ふっと呪縛が解けたんです。
 交換を否定したことで、交換日記を続けさせる呪いの効力は減ったようですが、それでもやっぱりたくさんの人の怨念が詰まった危険なものですから・・・
 皆さん、くれぐれも気を付けてくださいね。


 後味が悪いのか、皆一様に下を向き、黙り込んでいる。
 「元木さん、ありがとうございました。今のお話、新聞に載せても、大丈夫ですよね」
 「はい、もちろんです。おばあちゃんは、そのために行けって言っていたんですもの」
 「ところで、ひとつ気になることがあるのですが」と荒井が沈黙を破って口を開いた。
 「僕の元木早苗さんの噂は聞いたことがあります。この鳴神学園に大変能力の高い霊能者が入学してきた、と。
 できれば、一度その能力を後学のためにも一度拝見させていただきたいのですが」
  • 僕も見たいです
  • 見せないでください
 「ええ、僕もぜひ見たいです」
 「あ、でもこれは見世物あじゃないですから~」
 「もったいぶるのは・・・」と荒井が言うと
 「ゴルァ!この若造が早苗を愚弄するか!」
 「早苗ちゃん、ダメ!」
 福沢が慌てて止めようとしたが、元木の身体がブルブルと震えだし、突然彼女の眼球がぐるりと裏返った。
 意識を失っているのか、ガクリと首を落とした元木の口から、白い糸のようなものが伸びてきた。白い何物かは、煙のように立ち上がり、空中でモヤモヤと何かの形を取っていった。
 それは、おじいさんの顔だ!
 首だけのおじいさんは、ギョロリと目を見開いて坂上を睨んだ。
 「あーあ、始まっちゃったね。こうなると後片付けが大変だから。私、先帰るね。早苗ちゃん、さようなら~」
 福沢はこの変化に慣れっこになっているのか、さっさと帰ってしまった。そして、他の語り部もみんな悲鳴を上げて部室から逃げて行ってしまった。
 「ほう、この男が坂上修一か。こやつが早苗の婿になるのか。ずいぶんと腑抜けた顔をしておるなあ。よし、わしがちぃと鍛えてやろうかのう」
 坂上の前に元木が歩み寄って来た。物凄い風圧が彼女の周りに渦巻いているのがよく分かった。
 新聞部の備品が宙に浮かび、無重力状態のように空中を漂っている。もしかしてポルターガイスト減少ってヤツ?
 「かぁ!」
 元木が酷くしゃがれた声を発すると、浮かんだ備品たちは一斉に坂上めがけて襲い掛かって来た。


 エンディング№453:早苗ちゃんの娘婿
 エンディング数 78/657 達成度11%
 キャラクター図鑑 57/122 達成度46%
 畑中亨
 大本真美
 イラストギャラリー 51/283 達成度18%

 

 

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 森の中の小道にいる。
 南→南→西へ。


 森と海岸にはさまれて、街道は東西に続いている。
 真南には小さな桟橋がありボートが1艘もやってある。

  • 東へ行く→一つ前の選択肢に戻る
  • 西へ行く
  • 桟橋へ行く

 東西に続く街道で、路傍にドルイドの小さなお堂がある。

  • お堂に入る
  • 東へ行く→一つ前の選択肢に戻る
  • 西へ行く

 お堂の中には大きな青磁の瓶がひとつ置かれているきりで、瓶の中には澄んだ水がたたえられている。

  • 水を汲む
  • 食事をする→体力ポイントを5回復する(初期値を超えない)
  • お堂を出る

 この水はドルイドの聖水で、異境の魔物を調伏する力を持っている。
 容器1杯分で1回使用できるが、容器の数より多く持つことはできない。

 ドルイドの聖水を汲む。

 

 体力ポイント  
   ティルト①の初期値  17
   ティルト②の初期値  18
   ティルト③の初期値  22
 戦力ポイント  
   初期値  0
   ライオンの加護  +1
 武器   武器ポイント
   剣①  1
   ライオンの爪  +1
 経験ポイント   7
 金貨   3
 所持品  
   食料1個  
   青い卵  
   蚊まんじゅう2個  
   竜の鱗の楯  
   金色の鍬  壁を破ることができるが体力ポイントが2減る
   黄色水晶  37の数字が刻み込まれている
   貧乏徳利  
   ドルイドの聖水  異境の魔物を調伏する力がある
 キーナンバー  
   1:マーリンの祝福  23
   2:竜の鱗の楯  0
   3:ヌー  140
   5:靴底にゴムの吸盤が付いた長靴  19
   17:ガラスが丘の竜を撃破  44
   22:金色の鍬  100
 魔法  
   62:呪いで姿を変えられた者を元に姿に戻す  呪文を詠唱しながら相手にキスをする