”場”の企画

これは僕の頭の中にずっとある言葉。
 

商業施設、主にデパートの、

環境演出の仕事を30年近くやってきました。

ライフワークといっても良い。
 

建物ができ、内装ができあがって、

さて、品物をどう売ればいいのか?というところからが、

僕らの仕事。
 

季節のディスプレイだったり、

陳列商品のサイズを元に設計する陳列什器だったり、

お客様が買い物しやすくなる導線計画だったり。
そういうことを考えて提案する。
 
 
 

何年か前、

関西の有名なブランドが、

天神の有名百貨店に出店することになり、

どこかからの流れで僕のところに設計の話が来ました。
 

そして打ち合わせをして、図面を書いて、

百貨店にプレゼンにいくことに。
 

関西のクライアントさんは、
とっとと形だけの打ち合わせをして、
はやくもつ鍋でも食べて帰ろうと、

楽しそうにはしゃぎながらやって来た。
 
が、僕の気分は決してかろやかではない。
なぜかというと、
 
今日打ち合わせる百貨店の内装監査室の室長は、

一筋縄では行かないキレものとして
九州のこの業界では知らぬもののない存在の方だからだ。
 
 

『こんなんやります〜〜』
 

関西クライアントは軽い気持ちで
自分たちが作ってきた書類を
テーブルに出した。
 
 

室長は鋭い目で書類を一目見て、
クライアントに尋ねる。
 
 

『この通路沿いの商品はどんなもの?』
 

『え?そりゃもちろんうちの商品ですよ?』
 

『いやそうじゃなくて、どんな素材で単価は?』
 

『素材?いや、それは品出しのときに
スタッフが適当に、あるやつを飾れば。。。』
 

『あぁ、それじゃ、うちでは許可できません。』
 

『はい?』
 

『きちんとした商品陳列計画を提示しないと受理できません。』
 

『え?』
 
 
 

関西のクライアントの感覚もわかる。(笑)
 

『こっちは高いテナント料金払って出店するし、
この内装の費用もこっちでぜんぶ出すのに、
なんでダメだしなん?
なんでそんなことまで百貨店が
口だしてくるの?
うちのブランドのことなのに!!?』
 
 

わかる。。。でも。。。これが
この百貨店なんですよ。。。
 
この室長、なんですよ。。。
 
 

良い売り場を作り、お客様から賞賛を得る。

これこそが地域一番のデパートの姿だ。

だからそこに妥協はないのです。
それがキレものと言われる室長の性分。
 
 
その場の空気に暗雲が立ち込める。
室長が静かにフゥーとため息を吐く。
場が凍りついている。
 
さて、
 

そこからは僕が口を出す。
 
 

『こちらのテーブルには、このワンポイントのニットを出そうと思ってます。』
 

あらかじめブランドのネットショップを調べて
プリントしておいた商品のリストをカバンから出した。
 
関西のクライアントが驚く。
 

『あ、それうちの商品。。。?タナカさん、そんなん自分で作ったん?』
 
 

関西のクライアントは、
思いがけない展開がスタートして目を白黒させている。
 
室長の目線に熱がこもり、
プレゼンは再開。
 

『となりのタワー型の什器には、セットアップできるニットの帽子を出します。』
 

『@@@さん、ニット帽のアイテム数は?』
 

室長は関西のクライアントに話を振ったが、
 
何も事前に考えてなかったクライアントさんは、
 

『え〜、いくつやったかいな。。』と、苦笑い。
 
 

しかし室長は笑顔ではなかった。
真顔だ。かすかに顔つきが険しくなる。これは怖い。
 
 

『田中さん、何点?』

次には僕に話が振られた。
 

『6点です。』

『ふ〜ん、ここに六点ならまぁ十分。それでいいかな。
じゃ、この後ろの柱前は?』
  

『前にはモノトーンが来るので、目の高さで
アクセントカラーの多いシューズを展示します。』
 

『なるほど、じゃ柱の向こうの壁は?』
 

『奥は単価が高めのジャケットやスーツになります。』
 

『ふんふん』
 
 
よし、
室長がノッてきた。
 
 
 

『試着質は一カ所。開けるとミラーなんで、通常は通路から姿見に使ってもらえます。』
 

『うんうん。』
 

『壁の上のボーダーには何もなくて寂しいので、ショップサインを設置します。』
 

『田中さん、ここ、文字サインよりもこのアイコンの方が良いね。』
 

『では。。。少し陳列商品ともかぶるようにして、
壁前面にこのアイコンを拡大して貼付けましょうか?
そうすれば天井ボーダーとの境界線が目に入らなくなって
天井が高くて広い売り場に見えますよね。』
 

『おお!それいいね!目立つし見やすいよね!』
 

『そしたらエスカレーターを降りて歩いてくるお客様が見て
かなりインパクトある場の出現になりません?』
 
 
 

関西のクライアントは何も打ち合わせしていなかった
自社商品の特徴や説明、売り方などの話までを
僕が全て事前に調べ上げていて、
室長からの質問を次々にクリアしながら
打ち合わせが進んでいくので驚いて言葉も無い。
 
すごくおしゃべりな方だったのに
本当に一言もなかった。(笑)
 
 

そして打ち合わせは終わり、

部屋を出る時。。。
 
 

『じゃ、田中さん、
今の修正は今日中にメールしてください。』
 

『はい、よろしくおねがいします。』
 

『良い売り場ができそうです。ありがとうございます。』
 

『時に室長、私、この建物がリニュアルする時に関わってましたんで
以前にも室長にお会いしてましたよ。』
 

『あぁ、ほんとに!!?ごめん、名前覚えてなかったよ〜。』
 

『いえいえ、もう昔のことですし。』
 

『でもね、今日、覚えたよ。田中さん。』
 
 
 

打ち合わせが終わったので部屋を出て移動。
関西のクライアントも一緒に
アイスコーヒーを飲みに喫茶店に入る。
 
 

『いや〜。。。。。良かったわ、今日田中さんが
いてくれはって助かりました!!僕らだけじゃどうにもならんかったわ。』
 

『あの方は売り場作りにはすごく厳しいですからね。』
 

『それにしても室長さん、僕らにはなんも訊かずに
田中さんばっかりに話訊きよったなぁ。田中さんって何者?図面屋さんじゃないの?』
 

『僕らはVMDプランナーですから。
商品と購買意欲をつなげることなら何でもしますよ。
図面はそのプレゼンに必要だから作っただけですよ。』
 

『そうなんや!だから室長さんは田中さんばっかりに
話訊いてたんや。僕らにはなんも訊かへんかったもんな。

いや〜、助かったわ。ありがとう!』
 
 
 
 
 
 

ものを買いたくなる『場』を作る。

それが僕たちVMDプランナーと言われる人間の仕事です。

非常に特殊な職業だと思う。
 
 

そういうことを考えるプロであるはずの、

デパートの担当者に、さらに企画を提案する。

プロの上をいくプロであることが求められます。
 
 
 

知識と理論、それからさまざまな現場で起こった
経験を身につけないと一人前にもなれないし、

そのためには、

多くの先輩から学び取ることが必要。
 
 

そして後輩を一人前にできるノウハウも必要。

きっとそれほど多くの同業者は存在しないでしょう。
 
 

現在の僕は、

この華やかな百貨店の場作りからはすっかり足を抜き、
 

田舎の風景の中にポツンとたたずむ小さな牡蠣小屋を、

大人気な居酒屋にできないだろうかなんてことを考えてワクワクしています。
  
 
いつでも考え続けている。

人があっと驚く場を作ることを。
 

楽しくて、誰かの心に一生残る『場』を作る。
 
 

その評価と達成感が、自分の心の糧となる人生。

これが僕の生き方です。
 
 
 

 

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Hideichi Tanaka

 

 
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