冒頭の10分程度の僅か2カットで観客を物語の渦中へ誘い、

謎を探る同伴者として引き込む見事な脚本と演出に感服。

メールで送られれきた地方の女優志願の少女のスマホでの自死を

思わせる自撮り映像と女優とパナヒ監督自身が現地へ確認に

向かう車中風景の長回しで、物語の主人公と状況設定を全て説明する。

一切無駄がなく、僅か10分程度で目が離せない緊張感を生じさせるツカミが本当に見事。

 

山を越え村へ向かう。

村に通じる道は幅狭い坂道一本という隔絶され、排他的で保守的な村。

コミュニティ外からの訪問者を暖かく出迎えるわけはなく、

何やら思わせぶりな人物と発言が続く。

勿論パナヒ監督なので、黒幕や陰謀、ドンデン返しが待っているはずもなく、

割とあっさりとネタは割れてしまう。

 

現実世界と映画という虚構のレイヤーを行き来する。

英題の3 Facesの意味がわかった時の高揚感ったら。

監督自身が映画監督として傍観者を演じているのも面白い。

物語の語り手でもあり、同時に物語の中で生きる登場人物でもある。

虚実のバランス感がお見事。

やっぱり、虚構と現実を交錯させるメタ視点の映画はツボだ。