ダグ・リーマン監督なのに、公開規模がミニマム。製作がAmazonで配給の弱さか?
でも作品自体は、低予算のワンシチュエーション限定で90分という程よい尺で
一気に観客を釘付けにする演出手腕は流石なのでもったいない。
舞台はイラク戦争末期の砂漠のパイプラインに車両と複数の狙撃された死体が転がり、
無線で駆け付けた米兵2名がそれを監視する。
いっこうに姿を見せない敵兵を待ちきれず、1名が現場へと向かうと、遠距離射撃で攻撃を受ける。
もうひとりの登場人である狙撃者の姿は最後まで移されず、無線を通して声のみ。
同じイラク戦争を舞台の伝説的狙撃手を描いた「アメリカン・スナイパー」という傑作があったが、
こちらは逆に敵側の伝説の狙撃手に狙われる側になった米兵の物語。
外部と遮断された砂漠の真ん中のタイトルの漆喰の壁の影に隠れながら、敵と対峙する。
負傷して、動きを封じられ、無線は故障、炎天下に水も食料もなく、傷の出血が止まらない。
時間がだけが緩やかに流れる。
人物の動きは少なく、一方の姿おろか、位置すらも隠されたままで、
限定された状況での会話劇なので、そのまま舞台劇としても成立しそうだ。
生死を賭けるシチュエーションをつくった者と陥った者の言葉の駆け引きのみ。
派手な銃撃戦は最小限で、更には風や鳥の声、接触音など自然音のみで、
心情を描写し煽り立てる劇音楽すらない。
動きがない分、会話の節々に意味を持たせる。
例えば些細な英語の訛りであったり、状況説明うあ個人の身の上話などの細部に意味を隠す。
狙撃手と狙撃手との言葉での闘いというのが面白い。
繰り返し挿入されるスコープ越しの映像ってスリリングではあるが、同時に姿なき敵という恐怖を
象徴し、ましてや狙われる側となればその怖れは画面から伝わってくる。
リーマン監督は絶妙の手腕で、
これ以上長かったらネタ切れになり、これ以上短いと物語として成立しないという丁度の尺で披露する。
確かに見るからに低予算だけど、ワンアイディアだけで、十分に観客楽しませる逸品。

偏愛度合★★★★