「アルゴ」に続くベン・アフレックが出演、脚本、監督と渾身のオレ様映画だけど、
おいしいところは脇のエル・ファニング持っていかれた感じ。
無垢な良家のお嬢さんが映画界を目指し、ロスへ向かい、麻薬と性のまみれて堕ちていく。
その後、神をへの信仰を唯一の糧として布教へと講じる。
壇上から罪と罰、救済を高らかに叫ぶ教祖さまとしての姿が強烈だ。
エル・ファニングの昨今の作品選択って意図的な堕天使感がある。
この年齢が放つ、一瞬しかない輝きと真っ白な容姿を逆手にとって、常に堕ちていく女ばかり。
例えば今作以外にも「ネオンデーモン」「20センチュリー・ウーマン」など。
輝きがやがて消え去ることを知っていて、その儚い瞬間を刻むこむかのような衝動を感じる。
眩いばかりに姿は手慣れの名優たちの熱演も食ってしまう。
更にはこの物語の根幹こそは、良き者が堕ちていく様であり、
堕ちながらも何とかその先で生き抜こうとする人の生々しい足掻きであり、
ちょうどエル・ファニングの演じたキャラクターと共鳴して、圧倒的な印象を放つ。
デニス・ルヘインの原作は未読だが、第一次世界大戦後の禁酒法の時代という設定が基調となる。
ロストジェネレーションと呼ばれる世代だ。
冒頭のモノローグで語られる通り、大戦で多くの死者を目の当たりにして、
善であることへの失望感、虚無感、諦観に囚われ、善悪の彼岸を越え、
日々を生き抜くために己だけを信じて行動する主人公ジョーの生き様と重なる。
アフレック特有の表立った感情表現の乏しい、平坦で朴訥な無表情演技(?)がピッタリだ。
知れた仲間内のみで行動し、
組織に属さない一匹狼を望みながらも、やがては対立する組織間に揉まれていく。
イタリア系とアイリッシュ系というギャング映画お馴染みの構造だけど、南部の辺境地へと
河岸を変え、あの手この手で巧みに立ち回る姿はフォルムノワール感いっぱいだ。
語り口は割と事実関係を細部にまで丁寧に追うが、淡々としている。
外連味に満ちた仰々しいアクション連発という感じではない。
虚無感に囚われながらも、愛情や希望を捨てきれない主人公がいる。
カジノ絡みのエル・ファニングの役柄への甘さや直接の殺しを避けたがるなど
どこか矛盾を持て余す善でも悪でもない主人公像がリアルだ。
やがてたどり着くラストのホテルを舞台とした銃撃戦は見事でアガル。
描写が淡々としているだけに痛々しさが巧い。
また物語全体の構造があの時代を生き抜いた、俯瞰的な人生譚となっている。
まさに夜に生きた者の物語だ。
偏愛度合★★★