テレンス・マリックを自己完結型映像ポエマーと揶揄したが、このフィリップ・ガレルも同様だ。
共通しているのは、そもそも客観的な物語を語る気が薄く、完全に閉じて自己完結しているのに、
なまじ映像が美しいだけに性質が悪いのだ。
個人的にはどちらの監督も相性が悪く、毎回睡魔との闘いを強いられる。

エリックロメールの撮影監督を借りだし、初期ゴダールと組んだラウル・クタールを思わせる
モノクローム映像でパリの町並みを切り取る。
舞台は現代であるはずなのに、60年代の作品を思わせる映像美なのだ。
でも肝心の物語はスカスカ。夫婦の身の回り3メートル以内みたいな痴話喧嘩の顛末。
何処でもいつの時代でもありがちな浮気話でそれ以上に裏も表もない。
「パリ、恋人たちの影」とまた狙ったようなポエマーな邦題だけが
ヌーヴェル・ヴァーグ直系と言えば聞こえがよいのだが、いい加減にそれなりのキャリアを
積んだ監督なのに、いまだに確信犯的に過去の「遺産」流用ばかりに始終している。
そのためか、何か親の七光りというか、オリジナリティのないパチモン感、模造品感は否めない。

まずは女優二人に華がない。
これまではジーン・セバーグ、カトリーヌ・ドヌーヴと大物起用でで直球勝負だったが、
今回の二人の貧乏くささは否めない。味も素っ気もない容姿。
更に貧乏くさいといえば、劇中での飲食物の不味そうな貧しさは群を抜いている。
冒頭いきなり男が街頭でフランスパン(バゲット)を棒のまま丸かじりしている姿には流石に引いた。
パリの現代の住宅事情を反映しているのか、昔の学生のワンルーム部屋並なのだ。
ガスが使えないのか電気ポットで湯を沸かして、ティーパックで飲む。
夫婦ともそれなりの年齢なのに、バイトしながら完成しないドキュメンタリー映画を共同制作している。
そんな最中に起こった浮気騒動。
「愛は、影のように身勝手。追いかければ逃げてゆき、逃げるものを追いかける」
と宣伝文句まで安っぽいポエム全開だけど、そんな仰々しく煽られても、観客の心も逃げてゆくばかりだ。
唯一の救いと言えば73分という尺。睡魔と闘いに負け、意識が遠くへと逃げる前に終了する。


偏愛度合★★