どうやら痛快なピカレスクロマンと、
不快なピカレスクロマンがあるらしい。
もちろん主人公は悪漢なので遵法度合が判断基準というではない。
主人公はサイコパス気質な過剰な自意識と自己愛、自己能力過信、無駄に自己主張して、
そのくせ無意味に意識が高い系の極めていやな奴。
ひたすら不快。多分感情移入できる観客は少ないだろう。
本来ピカレスクロマンは、道徳的には悪人を主人公としながらも、その社会の固定概念や既存権力への
アンチテーゼとして、決して踏み外さない人が踏み外すことを疑似的に体験するもので、
ある種の爽快感や開放感を伴うのが基本だろう。
この映画にそれはない。
THE DOORS"Crawling King Snake(オリジナルはJOHN LEE HOOKER)”を思い出した。
真夜中、地を這いつくばる蛇のイメージだ。
人が爬虫類顏を嫌悪するには太古の昔に捕食者として君臨していた種族への怖れが遺伝子に
刻み込まれたものなのか、それともキリスト教的な神話において、アダムとイブに由来する
人類の原罪の仲介役としての存在への反発なのだろうか?
ジェイク・ギレンホールの顔立ちは元来素質を持っていたにしても、爬虫類(特に蛇)顏演技は見事だ。
その異様な目付きだけで人を不快にさせる。
彼は常に変幻自在で与えられた役柄をリアリテイを持って巧みに 提示してくれる。
物語自体は、社会的には名もなく、価値もない都会の闇に巣食うひとりの男が思わぬ天職を見つけて、
やがて超えてはならない一線を越えていくという王道なものでプロットの意外性は薄い。
ピカレスクロマン的にはハッピーエンドなのか、バッドエンドなのか、
観客の受け取り次第なラストまで結構まったりと進む。
個人的には、終盤ホラー映画などでお馴染みに突然画面の脇から車が飛び出し、
その人物を轢き殺すという展開が起こらないかと期待していた。それほど嫌悪感は激しい。
噂通り、深夜の街並みの撮影は見事。
「ミッション;インポシブル/ローグネイション」と同じ撮影監督なのか。
今後要注意人物かもしれない。
偏愛度合★★★