やはり年老いた両親には、気を使う。
運転手が決まった。80歳の理事長の運転は
ちょっと心配でハラハラする。狭い所も
スピードを出してしまったりどうも落ち
つかない。決まった運転手が続けばいいのだが
何しろ、揉めるらしい。理事長が物忘れも
あったりして上手く話が伝わらなかったり、
暴言があるから雇われた方としてはキツイ
仕事だ。高血圧の治療で病院に通って
る理事長だが、病院帰りは特に機嫌が悪く
イライラしている。待ち時間が長いから、
疲れるし、病人扱いされるのも嫌らしい。
でもしょうがない、薬をもらわないと健康
に働けそうもない。朝 夜 と血圧を
安定させる薬を飲んでいる。その日も
病院が押して午前中に本社工場に行く予定が
午後14:00頃になった。理事長はずいぶんと
機嫌が悪く、玲子さんもいつとばっちりを
受けるかとヒヤヒヤしていたらしい。
皆んな理事長の
怒った姿やイライラしてる所しかみたこと
がないので、必要以上に顔を伺う。
運転手の沢田さんは、まだ一度も理事長に
キレられた事がない。要領がいいし、運転も
上手で理事長の機嫌もよくなった。
時々ニコニコ雑談しながら戻ってくるほど
の和やかさだった。あえて運転手の仕事
を選ばなくてもよさそうな感じの人で頭は
キレそうだ。年齢は30前半だろうか、細っそり
してきれいな手をしている。
会釈程度で、沢田さんとは話した事はない。
理事長を事務所のドアまで送って、車に戻る
スタンス。こういう人が来ると、嬉しい気持ち
になる。理事長をお迎えに来る時も、パリッと
スーツを着こなして爽やかな感じに、惹かれて
しまう。離婚で傷ついていた心も癒される。
その日は予定時刻になっても理事長が
来なかったので、沢田さんに事務所で
待ってもらった。
さりげなく冷たいお茶を用意し、くつろいで
もらう。近くで見ると👀目が輝いて素敵だ。
ちょっと雑談を交わしながら、お互いに
ニコニコ微笑み合う。
最近忘れていたドキドキ感が新鮮だ。
話題は理事長の事になり、理事長のお父さん
について聞かれた。ミホは、行方不明だと
いうことしか知らない。
沢田さんも、理事長が誰も居ない所で「お父さん
。」と呼ぶのを聞くらしい。
幻覚なのか、幽霊なのか見えないこちらも
気味が悪い。特によく幻覚が現れるのが、1階の
本社工場に続く長い通路らしい。
沢田さんは、足腰が悪くなった理事長を支えて
近くまで行くが、工場🏭の扉までだ。
社員に支えられてるところを見られたくない。
プライドの高い理事長らしい。
沢田さんは、理事長について身辺を探ってる
ようなふしがある。夕方仕事帰りに、スマホ📱
を忘れた事に気付いて戻った時のこと。
消したはずなのに、明かりが漏れていて
沢田さんが何か探していた。
理事長の机や、引き出し、棚を開けていた。
一瞬泥棒かと思ったが、通報する気には
ならなかった。何も見なかったかのように
スマホは諦めて、ミホは帰った。
家に帰ってからも、モヤモヤしていた。
「どうして沢田さんが!」何を探している
のか気になってしょうがない。
現場を押さえて乗り込むことは避けた。
次の日、事務所に行っても元の場所に
片付けられて何もなかったかのようだった。
理事長も無くなった物もなかったようで
事件にはならなかった。
理由もないのに、沢田さんのような人が
来る所ではないと思うので、しばらく
この事はミホの胸に閉まっておくこと
にした。悪い人には、思えないし、
惹かれている弱みだろうか。
いずれは、聞くかもしれないが、今で
はない。