結局、月曜日は病院に行きました。

ゼミの説明会があって、そのおかげでゼミが休講になったので

本当は図書館で1コマ分、時間をつぶすつもりだったけれど

なんだか無性に弟に会いたくなって、

弾丸スケジュールを覚悟でまた埼玉へ飛び立ちました。


そして今日も病院に行きました。

お父さんがどうしても赴任先でやらなければならない仕事がある

とのことだったので今日は一番下の弟とお母さんと一緒に行きました。

昨日は先生が忙しいらしくCTの結果を聞くことができなかったので

お父さんがお母さんに聞いてきてほしいと頼んだそうです。


病院についてICUに通され、用意してきた音楽プレーヤーを

さっそく弟の耳につけました。

ICUの独特な空気感やチューブにつながれた弟をみるのにも

だいぶ落ち着いていられるようになった私は血圧や脈拍、呼吸数を

一番下の弟と確かめながら10分くらいいたんだと思います。

すると看護師の方が「今日先生からお話がある」という旨のことを伝えられました。

私は前回、先生の診断でめまいを起こしたのでできれば直に聞きたくない

というのが本音でしたが、この状況でそんなことは言えませんでした。


それこそドラマに出てくるような個室に連れられ、先生とけがの経過と今後の治療方針について

お話がありました。

体を強く撲ったときのけがはだいぶよくなったことを伝えられました。

液体状ではありますが、食事(栄養剤)を投与することができるほどだといわれ安心しました。

人工心肺はまだ外すことはできないと言われました。弟自身、自発呼吸が完全にできているというわけでは

ないからだそうです。今後もしばらく外すことができないことから口から入れているチューブを

のどを切開して直接肺に送り込む手術が必要だと言われました。

見た目はとても痛々しく見えますが本人にとってみると、ストレスがだいぶ減るし、

チューブの交換も容易になることから衛生面としても必要な手術だそうです。

かわいそうだけれど、2次被害を起こさないためにもとお母さんは手術の同意書にサインをしました。


一通り、体のほうは安心していいと説明を受けたあと、話はやはりあの話題に移りました。

脳です。

先生がとても前置きを多く使うようになりました。

「一概には言えませんが」「急なことで、非常にお伝えしにくいですが」「厳しいことを言うようですが」

そんな決まり文句のようなものを使うたび、私の体はびくっと反応しました。


今後弟が意識を戻す可能性は低いといわれました。


どんな名前かは忘れましたが脳の根幹の部分のダメージはやはり大きく

以前のままの弟に戻ることはないと覚悟してほしいとのことでした。

涙がのどにつまって苦しかったけれど、お母さんも一番下の弟も気丈に振る舞っていたので

私1人だけ泣くなんてできませんでした。

弟の状況は厳しいものでした。

いずれ一般病棟にうつることになるが、寝たきりのままである場合、

療養施設に移らなければならないといわれました。

病院では年単位のケアというのはベット数の関係上難しいそうです。

そして弟はまだ20歳でとても若く、頭以外の体はほぼ正常に戻るため

看護の期間が高齢者よりもずっと長く、受け入れてくれる療養施設も少ないと言われました。

そして何より、療養施設は都心部にはなく、地方にうつり、週末だけ通うといった手段を考慮する必要があると言われました。


30分弱の説明が終わり、私たち3人は何か魂を吸い取られたような放心状態で

また弟に会いに病室に戻りました。今の説明の書類を受け取るまで病室にいて良い

とのことだったので、イヤホンをとり、お母さんがいつものように弟に話しかけ髪をなでてました。

そしてお母さんが弟jの髪を耳にかけた瞬間


弟が寝返りをうったように顔を横に倒れた状態から仰向けになりました。

とてもすごい勢いで、最初はお母さんが無理に弟の首を動かしたのかと思いました。

まるで家にいて、茶化して髪をさわったときに「さわるな!」

と弟が言ってるかのようでした。血圧もいきなり10くらい上がりとても焦りましたが

周りの医師の方が特に気に留めていると言うようでもなかったので、書類を受け取って

私たちはつかの間の面会を終えました。


帰ってから調べてみると、

脳が反応しなくても体が反応する場合がある

という記載を見つけました。弟の意識はなくても、一瞬でも、戻ってきてくれたような気がして

すごいうれしかったです。


帰りの電車は複雑でした。

先生から言われた言葉、意識は戻らないという現実、可能性にかけてみたい期待、

でもそうじゃなかったときの恐怖、これからのこと・・・


家についたら弟のパソコンを開き、写真のフォルダをみると、そこにはきれいな景色と

堂々と構える弟の青いバイクが写ってました。

一青窈より、アイドルより、バイクや、その旅行の写真が多くて

今まではもやもやしてたバイクの存在も、きっと弟にとってはかけがえのないものだったんだと受け入れられるようになりました。

弟が観てきたものを同じようにバイクで観たい、って一瞬思ったけれど、一瞬でやっぱりいいやと思いました。


明日も弟の病院にいきます。

のどからチューブの手術がんばれ!