管理会社に転職して三年目の夏、上司からさらりと言われた一言が今も忘れられません。「資格、そろそろ取ったら?」。事務員として働いていた私にとって、それはただの雑談ではなく、暗に評価に関わる話だと分かりました。
その日の帰り道、書店に寄って参考書を手に取ったものの、正直なところ何から手をつけていいのか見当もつきませんでした。仕訳や会計処理、建物の設備に関する知識まで、業務では触れたことのない分野が並んでいて、めくるたびにため息が出たものです。
転機になったのは、同じ職場の先輩の存在でした。彼女は数年前に取得していて、休憩時間に少しずつコツを教えてくれました。「範囲は広いけど、出るところは決まってる」という言葉に救われ、闇雲に全部を覚えようとするのをやめ、頻出テーマから固めていく方針に切り替えました。
秋が深まる頃には、休日はほぼ勉強に費やす生活になっていました。友人からの誘いを断ることも増え、正直つらい時期もありましたが、模擬試験で点数が伸びていくのを見ると、不思議と続けられました。
余談ですが、先輩いわく、こうして勉強を続けた人の中には、マンション管理士と管理業務主任者試験にダブル合格した猛者もいるそうで、その話を聞いたときは驚きと同時に、自分もいつか挑戦してみたいという気持ちが芽生えました。まずは目の前の一つに集中しようと、気持ちを引き締め直したのを覚えています。
試験当日は思った以上に落ち着いていました。積み重ねてきた自信が、そのまま支えになっていたのだと思います。合格通知を手にしたとき、上司のあの一言から始まった一年間が、ようやく報われた気がしました。