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絲山秋子さんの「エスケイプ/アブセント」を
図書館から借りてきて、読んだ。
エスケイプ/アブセント
絲山 秋子
新潮社

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名前は知っているけど、その読み方さえ知らなかった作家さん。
いとやまさんと読みます。
「沖で待つ」という小説で芥川賞に選ばれたことがある方です。
なんだろう。
普遍的なテーマを描いているんだけど、
読んだことのない感じ。
乱暴なのか、繊細なのか、よく分からない。
絆と別離。
歳をとるということ。
真実のありか。
いろんな要素が混ざり合って、独特の雰囲気を醸し出している。
面白い作品でした。
「エスケイプ」は、
大学で学生運動を始めて、40歳まで活動を続けていた男の話。
辞めたきっかけは、セプテンバーイレブン。
彼は我に返り、旅に出る。
そこで出会った人、出会わなかった人。
この出会わなかった人が、「アブセント」の主人公になる。
関係性は、読んでのお楽しみ。

私はこれを読んで、ある記憶がよみがえった。
2日後、受験する大学が、
学生運動が活発で、授業を妨害し、
学校側から訴えられたというニュースを新聞で読んで、ビックリしたこと。
実際に、受験の帰りにサングラスにマスクの人に、
「大学の横暴を許すな」というビラを貰ったこと。
衝撃でした。
安保闘争から20年はたってるし。
入学してから、大学の寮が機能していないことを知った。
「壁に穴あり。ドアにノブなし。」とも言われる寮だった。
他の大学の人達も入り浸っていると噂を聞いていたが、
何のためなのかなんて、興味もないまま過ごしていた。
そんなこんなで日が過ぎて、
共に時間を過ごしていた友達の一人が授業を休みがちになった。
たまたま一緒になった授業の休み時間に、
カバンの中がシャンプーまみれになったため、
中を洗うためにトイレに向かった。
私もトイレに用を足しに行きつつ、
カバンの中身を取り出す作業を手伝っていたところ、
真っ黒な大きいサングラスがシャンプーまみれで出てきた。
その時、私は理解した。
彼女が来なくなった理由を。
何も言えなかった。
そして、どんどん疎遠になっていった。
ある日、昼休みに学内で休んでいると、
ビラを持った人がやってきて、「原発に反対しよう」と言ってきた。
ぼーっと話を聞いていると、関心がなさそうだと思われたようで、
「福井の原発に事故があると、大阪にも被害が出る」と言われた。
私はカチンときて、その人を追い払った。
きっと彼は本心で言ったのではないと思う。
きっとちゃんと理念を持って活動をしているのだろう。
でも、きっと私を甘く見たんだと思う。
いくら軽薄な学生でも、ちゃんと話してくれれば分かるのに。
そんなに利己的な人間に見えたのだろうか。
当時は、考えさせられたものです。
そんな後日、すっかり疎遠になっていた彼女から、
自宅に電話がかかってきた。
携帯電話のなかった時代だ。
今度の土曜日の予定を聞かれた。
週6日でバイトしていた私の予定は、かけもちバイトの日だった。
電話は、その日に行われる運動の一環であるパレードへのお誘いだったのだ。
その電話の中で、私は原発の一件を話したところ、
「そういう考えをもつあなただから、誘ったんだ」と言われた。
私はそれに、内心「違う」と思いながら、
「力になれないけれど、体には気をつけて。授業にも来てな」と答えた。
彼女とは、それっきりになってしまった。
彼女の誤解を解けないままだった。
私は、そんなに立派な考えを持つ人間じゃないよ。
バイトの予定が入っていて、心底よかったと思ったんやで。
口だけは立派で、何かを変えたくても、他力本願な卑怯者なんだよ。
そんな苦い思いも、年月が経つごとに風化していった。
今回、この本に出会って、
彼女はどうしているんだろうかと、久々に思い出した。
自分の苦い思いと共に。

私はそれからも、いろんな活動に
「一緒にやらないか?」と誘われることになるのだが、
それはまた別の話。
でも身近な人からの宗教の勧誘だけは、なぜかない。
ま、いいか。
私としては今のところ、友人と作った前向き教で十分です。