「あのね、おかあさん」

たいちゃんは、かけっこする前の自分の胸のどきどきと、それからりゅうちゃんのも、どんなだったかおかあさんに話した。

「すごく、きんちょーして面白いナーって思ってたのに、りゅうちゃん泣き出しそうになったんやで」

「それで。自分の番がきて、よーイドン!ってなっても走らなくって、そいで先生がきてね。」

うんうん、おかあさんはせんたくものをたたみながらうなずいた。


「先生が どうしたの?ってきいたら、たいちゃんがいやなこというから、もうはしりたくないって。」

「なんでやねん  なー」


「りゅうちゃん、そんなこと言った?」

「うんそうや。 ぼくが悪いって。」

「それで先生はなんて言ったの?」

おかあさんは、せんたくものをひざの上においたまま、たいちゃんをみて聞いた。

「うん。意味がわっからへんねんけど こうやってさ」

といって、たいちゃんは人差し指で自分の頭を、さしながらしゃべり続けた。

「ここで考えてごらんって。りゅうちゃんの気持ちを考えてごらんって。」

「僕がりゅうちゃんに言ったのは、ここが同じだっていったんだ。」

たいちゃんの手は頭から胸に動いていた。

「どきんどきんって胸がなってるのは、きんちょーしてるからで、病気なんかじゃないって。泣くことなんかないのにさ。」


おかあさんは、もうすっかりたいちゃんの話に聞き入っていて、少し考えているような顔で口を開いた。

「りゅうちゃん、走るのが好きじゃないのよ。だからどきどきしたんでしょうね。走りたくって楽しくってどきどきしたのとは違うんじゃないかしら。」

「・・・・でもおんなじだったよ。別に。」

たいちゃんはおもしろくなさそうにつぶやいた。

「じゃ、本当に僕が悪いのかな。」



ーーーーーーつづくーーーーーーーー