「ころばないようにね。」おかあさんが、かんちゃんにいいました。
「うん!だいしょうぶ!」かんちゃんは、じょうずに、かいがんにごろごろところがる
いしやいわのあいだをてんぽよく あるきます。
おかあさんのほうが、あぶなっかしいよ、ふふっ ・・・かんちゃんはそうおもって、
くちびるのはしっこだけでわらいました。もちろん、こえにはだしませんでしたが。
かんちゃんは、かいがんからおおきなどうろにあがるいしだんを、
「よしっ、うんしょっ、うりゃ」とこえをかけながら、のぼっていきました。
すると、かんちゃんよりさきに、うえへうえへとのぼっているちいさないきものが
みえるのです。
「あ
かにだっ。おかあさーん、おかーーさーーん
」かんちゃんは、
まだずっとしたにいるおかあさんをおおごえでよびました。
「かにー
かにさんがいるよーーー」
「え~?
おおきい?」
「うん、けっこうおおきいなー、いままでにみたなかでいちばんおおきいよ。」
おおいそぎでやっとおいついたおかあさんは、いきをはーはーつきながらいいました。
「ほんとー
おおきくてあかくってかわいいね。」
「うん、はさみもおおきくてすごいねー、うえまでのぼっていくのかな。」
かんちゃんとおかあさんはそのかにをみながらたくさんはなしました。
しゃがんでかにをみていたおかあさんが、「さっ」といいながら、たちあがりました。
「さっ おそくなったね、いこう。」するとかんちゃんは、びっくりしたようなこえで、
「えーーっ?もう行くの?もっとかにさんみたいよ。っていうか、もってかえりたい。」
こんどはおかあさんがびっくりしたこえで、いいました。
「えー!むりでしょ。かになんてかえないよー。それにかにさんだって、うみにいたほうが
うれしいはずよ。」 「いやだ、いやだ、せっかくこんなにおおきなかにみつけたのに。」
かんちゃんは、おかあさんのけち、だとか せこいよ とか、わけのわからないことをいって
すねました。おかあさんのてをひっぱったり、うしろへまわって、ぽかぽかっとおしりを
たたいたりしました。
おかあさんは、むっとしたようなこえで、「しつこいなあ」といったあと、かんちゃんをにらみ
ました。かんちゃんは、おかあさんのかおをみないようにしながら、
「どうしても、だめなの?」と、ちいさなこえで、つぶやきました。
そのこえが、あまりにもせつなくて、まるでこなざとうがしゅるりととけるように、
おかあさんのこころにもとけました。
おかあさんは、かんちゃんのてをにぎり、ひざをついて、かんちゃんのかおをのぞきこみました。
そして、やさしいこえでたずねました。
「ねえ かんちゃん。どうして、そんなにかにさんをもってかえりたいの?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つづく・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・