まず表紙に貼ってあるピューリッツァ受賞作のシールに惹かれ、作者が同世代の女性だと知ってほぼ心は決まり。
最初の1、2ページを読んで間違いなく自分のテイストに合うと確信しました。
家に帰るとすぐ読み始め第1章を読破、予想通り面白くて読み進めたものの、次の章に入って全く別の話になっているのに当惑。
なんだ短編集だったのかと、しばらく読むのを休みました。
そして数日後再び読み始めると、タイトルの主人公らしき女性(オリーブ)が次の短編にもひょっこり登場するではありませんか。
そうなんです、話は繋がっているらしいのです。
とても洒落た仕掛けだと思いました。
しかも第1章の主人公はオリーブの夫ヘンリーで、オリーブの登場場面は少なく、ヘンリーの言動を通して彼らの夫婦関係やらオリーブの性格が垣間見えたりするのです。
全部で13編のストーリーは、アメリカはメイン州の小さな港町クロスビー(架空)での様々な日常生活を描いたものでした。
ある時はクロスビーの住人の誰かの話だったり、又ある時はオリーブの話になって彼女の心の動きが語られたりするのです。
量はまちまちですが、いずれの話にもオリーブが登場します。
かつて彼女はこの町の中学で数学教師をしていて、夫のヘンリーは薬局を経営していました。
二人の間にはクリストファーという息子が一人いて、彼の最初の結婚と破局、そして二度目の結婚が次々と起こります。
クリストファーとオリーブの親子関係は少々こじれていて、これは彼女の性格に起因する所が大きい様でした。
少しばかり強権的な母親と、内向的な息子という有りがちなパターンです。
身体つきも大柄な彼女は、威圧的な教師と見られる事が多く、対照的に夫のヘンリーは気が優しく人から好ましく思われるタイプ。
そんな二人の夫婦仲は、彼女の性格の様にさっぱりしているけれど、決して悪くもなさそうです。
自分達の手で家を作るという共同作業を成し遂げた位ですから。
二人の間の悩みの種は息子で、思うようにならないのは世の常です。
彼等の家庭以外の様々な問題も描かれ、以外と根深い親子関係や、小さな隙間からひび割れる夫婦関係など、狭い町に起こる出来事が淡々と描かれていました。
主人公なだけにオリーブが一番詳しく描かれ、彼女自身の内面や人々の目を通して語られる彼女が多角的に描かれています。
皮肉や辛辣な言葉の陰に隠れた優しく傷つきやすい心を読者は見逃しません。
夫ヘンリーもそれを知るからこそ、離れることなく傍で温かく見守っているのでしょう。
作者が同じ女性だからか、母親の存在が子供に大きな影を落としている話が多く、大なり小なり私達女性には心当たりがあったりするのではないでしょうか。
読み進むうちに、大西洋に面したメイン州のこの小さな町に親しみを覚え、情景が目に浮かぶ様になりました。
いかにもアメリカらしい話だなと思う所もありましたが、身に覚えのある様な話、共感できる部分も沢山あり、面白かったです。
ただ何分にも英文で読んでいるので、想像力で補う事が多く、どこまで正確に内容を把握しているかは疑問。
でも小説は原文で読むに限ります。
生の感覚が伝わってきますから。
メイン州と言えば東海岸のカナダ寄り、私にはLLBeanのイメージしかありませんが、観光地ではない普通のアメリカのこんな海辺の町にしばらく滞在してみたいという欲求がフツフツと湧いてきました。
オリーブみたいな女性とお友達になって、海辺のカフェでおしゃべりしたら楽しいでしょうね。
という訳で、梅雨時は読書に限ります。
この所、ゴーヤ君がぐんぐん育ってきています。
前はクルクルちゃんという愛らしい呼名をつけて、必死にしがみつく姿に目を細めていましたが、あれから随分と逞しく成長してくれました。
あと数日も経てば収穫できるかと思います。


