一週間の期間中、毎日3人の作家が登場します。
今回は中島京子、川本三郎、町田康の3人の日を選びました。
最後の町田康は昨年に引き続いて2度目。
昨年たまたま書店で見つけて読んだ氏の「ギケイキ」が大変面白く、今年は「古典のおもろみ」のタイトルでの講演だったので期待して出かけました。
彼が古典と初めて出会ったのは、中学の国語の教科書。
平家物語の敦盛が討たれる所を、教師が数ヶ月かけてクラスの生徒全員に朗読させたのだそうです。
内容に感動した訳でもなく、特に印象に残った訳でもないのに、その中のフレーズが頭の中にこびり付いた様に、思いがけない時によみがえって来るのだとか。
そうした体験を通して古典を身近に感じたのか、その後古典を現代語に翻訳する事に喜びを見出して行きます。
自分にとってピッタリくる言葉を選んでゆくその過程に醍醐味がある様です。
単に翻訳するだけでなく、時には背景を描写する上であったらいいなと思う説明や語りを挿入したりもするのだとか。
講演のトークも関西弁ですが、「ギケイキ」も関西弁の語りで活き活きとしたライブ感に溢れています。
古典作品が今に甦る感じです。
町田氏のトークは最後で、一番始めは中島京子が「帝国図書館と作家たち」のタイトルで語りました。
彼女の新作「夢見る帝国図書館」をベースにしたトークでは、帝国図書館の歴史的背景や帝国図書館に縁の深い作家についての熱い思いが伝わって来ました。
江戸時代末期に渡航した福沢諭吉による図書館設立の要請もあって、明治5年に日本初の図書館が出来ました。
文部省の官吏だった永井荷風の父がその任に当たります。
その後、明治39年に東洋一を目指して造られた図書館は上野に移り、名前も帝国図書館と変わりました。
今の国際子ども図書館の建物がかつての帝国図書館です。
多くの著名な作家たちがその図書館に足繁く通いました。
樋口一葉、田山花袋、宮沢賢治、芥川龍之介、谷崎潤一郎、菊池寛、等々。
彼らの図書館を巡ってのエピソードなども語られました。
早くその本を読んでみたいです。
彼女の次に登場したのは、評論家の川本三郎氏。
実は2年前にも「庭を愛した作家たち」のタイトルで氏の講演を聴きました。
とても面白く、是非また氏のトークを聞きたいと思ったのです。
壇上に上がるやその軽妙な語り口で聴衆の心を掴みました。
とつとつとした語り口ですが、広範な知識に裏付けされた味のあるトーク。
タイトルは「小説が映画になるとき—-松本清張「張込み」を中心に」です。
まず松本清張の小説の特色——
① 超人的な名探偵が事件を解決するのではな
く、現場の刑事が足を使って地道に解決してゆく。
② 犯罪の動機を重視する。①と相俟って、社
会性が出る。
③ 地方を舞台にした作品、あるいは、東京に
出てきた地方出身者の物語が多い。
——を語ってから、映画「張込み」のあらすじに移り、野村芳太郎監督の手法とその効果について詳しく語りました。
まるで自分もその映画を観ている様な気持ちになる程、詳しい描写と見所が語られます。
鉄道ファンでもある川本氏ならではの見所解説は大変面白かったです。
今回の講演も期待通りで、図書館で川本氏のエッセイを借りて来た程です。
暑い中出かけていった甲斐がありました。

