【モンハン3】オトモアイルー:温泉村のど真ん中でアイを叫ぶ猫 | AQUOSアニキの言いたい放題

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徒然なるままに俺自身のネタや、政治・社会ニュースへの辛口コメント、最近観た映画の感想とかを書き綴ります。

たまーにブログのデザイン変更とか自作ブログパーツを出したりします。「ムホホ~♪」

第一話

第二話

第三話

第四話

第五話

第六話

第七話



「愛が欲しい・・・」


唐突にビールを飲みながら顔を真っ赤にしてぼそりと呟いたご主人様の一言。

「いきなり何を言ってるニャ・・・。弟さんのハンマーで殴られすぎてとうとう・・・」

僕の名前はペパローニ。目の前のご主人のオトモアイルーだ。年の暮れで今、ご主人とお酒を呑み交わしている最中だ。これまでの戦績を眺めながら、今年の狩りについて語っている最中だったのだが・・・・。


僕は徳利からマタタビ酒をおちょこに注ぎ、クイと飲み干す。人間にはわからない、マタタビのかぐわしさが僕の酔いを回らせる。

「俺に足りないものが何か、それは愛だ。愛が無ければ人は生きられぬ。愛が無ければナントカ神拳の最終奥義も会得出来ないことくらいお前も知ってるだろうが」

「何を血迷ってるにゃ。・・・つまりご主人は愛に飢えてるってことでいいかニャ?」

普段の僕ならこんな血迷った台詞を言い出した酔っ払いの戯言など無視していただろう。でも僕は、僕自身の酔いの力も借りて、話題を進めることにした。

「そうだ。お前の言うとおり、俺は愛に飢えている。そう、そして愛が欲しくば、何をしなければならないか、それも知っている!」

「ほぉ。どうすればいいのかニャ?」

「愛が欲しくば、愛を与えねばならぬ。求めるものには与えることから始めなければ得られない!」

「ふーん。ご主人・・・ならいい方法があるニャ」

「何だ?

「愛とかなんとか、抽象的なモノよりも、もっと具体的な方法で取り組むべきだと思うニャ」

「確かにな。目に見えにくいもので話をするより、具体的な見方で話をしたほうがいいかもな。それで、その方法ってのは?」

「まず僕への愛を具体的に示す形で、僕の給料を―」

「却下」

僕の台詞が言い終わらないうちに、ばっさりと斬り捨てるご主人。まぁこういうだろうとは計算してたけど。

「でもご主人、身近なところから愛を与えることを始めるのが第一歩だと思うニャ」

「まぁそれはもっともな話かもしれない」

「だから僕の給料を―」

「却下」

僕はじっと目を細めて向かい合わせのご主人を睨む。くそう、この酔っ払いめ。なんとなくチャンスっぽいから”愛=僕の給料”って形で引き上げることは出来ないだろうか?

「・・・ま、一理あるのは認めるよ。身近なところから広げるように始めるということに関しては正直認める。もっと気さくな態度で色々な人に話しかけるというのもいいかもな。自分の中でムリヤリ壁を作って他人と接するのも正直疲れたぜ」

「・・・なんかあったのかニャ?」

「細かいトコは聞くな。屈託の無い話で自分を引き出して話すほうが、結局は自分にも返ってくるってことだろうよ」

「そりゃそうだニャ。個性の無い奴とか壁ありそうな奴と話したって相手はつまらないニャ。そんなショッパいことに今更気づいたのかニャ」

ご主人は僕の言葉に「うー」と唇を尖らせるが、ビールを一口入れ、会話を続ける。

「お前からすりゃ当たり前すぎる話かもしれないが、実際当たり前だと思ってるものを知らないということなんてたくさんあるんだ」


「ニャ。ところでご主人・・・」

僕はさっきから気になっていた。ご主人が唐突に「愛」だとか似つかわしくない台詞を吐いたのがなぜか。僕は疑問に思っていたことを結論付けて質問する。

「もしかしてご主人、女の子にモテないことを気にしてるんじゃ」

「・・・」

ご主人の動きが固まった。コップに注がれたビールの泡がシュワシュワと消えていく。どうやら図星だったらしい。

「・・・ああ、そうだよ。その通りだよ」

素直にあっさりと認めたご主人。こういう弁解をせず素直なところはご主人の長所でもあることは僕もわかるのだが・・・。

「女の子とまともに話せないとか」


ぴしっ。

ガラスが割れた音がした。心なしか、ご主人の手に持ったコップから音がした気がする。でも気にしないことにした。表情が固まったままなのは確かだが。

僕はおちょこからマタタビ酒をなみなみと注ぐ。たぷたぷと揺れる水面から覗く僕の顔は既に真っ赤だった。僕は意を決してグイっと一気飲みする。

喉を鳴らしながら一気飲みを終えると、僕はビシリッ!とご主人に爪を向ける。

「はっきり言わせてもらうニャ、ご主人・・・」

僕は据えた目でご主人を見る。ご主人は言いようの無い僕の威嚇に臆したのか、視線を泳がせている。

「ご主人は、ケルビにゃ」

「・・・ケルビ?」

ケルビとは、ピョンピョンと飛び跳ねながら移動し、草を食べる動物。渓流、孤島など生息範囲は広く、角の形状によって雌雄が分かるらしい。

「ハンターっていう職業上、村の女の子に敬遠されがちなのは仕方ないニャ。だけどそれを差し引いても、女の子にビクつくのはまさにケルビ!村の女性全員をリオレイアに例えるニャ。リオレイアはリオレウスに惚れるのニャ!ケルビに惚れることなど、決してないのニャ!!」

ご主人はぽかんと口を開けて僕の言葉を聞いていた。青天の霹靂だったことだろう。

「さぁご主人!リオレウスになるのにゃ!リオレウスになるには、愛を知らねばならないのにゃ!」

「おお!!!」

ご主人が乗り気になった。僕の檄に促されたようだ。

「リオレウスにゃ!リオレウスにゃ!」

「うおおおお!!」

ご主人はヒビの入ったコップに構わずビールを注ぐ。勢いが強すぎて泡だらけになって側面に泡が垂れているがそれでも構わない。ご主人は一気に注いだビールを飲み干した。

「さぁ!愛の一歩を踏み出すのニャ!」

「うおおおお!」


「・・・というわけで、愛を示すということで僕に臨時ボーナスを」

「いやそれはないから」

「・・・」


ご主人が愛を知るのは、当分先になりそうニャ・・・。