愛情一杯の笑顔を見せ、こちらも笑いかける。
そして思い切り殴られる。容赦なく蹴られる。残忍で恍惚な笑みを浮かべながら。
唇の両端が持ち上がる。「好き。愛してる」と言いながら傷つける。髪の毛を掴み、床に叩きつけ、手元にあるものを手当たり次第にぶつける。
「この世で愛しているのは私だけ」と言いながら、傷つける。
「俺達は仲間だから」「私達は友達同士。仲間よ」と言いながら、傷つける。
周りは見て見ぬ振り。
「困ったことがあったら相談して」と言いながら、相談したら怒られる。無視される。
こういう経験、あるいは似た体験をした人間がいたとしよう。
そういう人間は、一体この先、どう生きていくというのだろう・・・。
今、足りないのは「怒り」。あらんばかりの憎しみで己が身を昇華させるほどの怒り。
いいのだ。怒りに身を任せても。怒りに震えるがいい。
怒りこそが、お前の心にもっとも欲しているものなのだ。
・・・という一面を自作小説のワンシーンに加えようと思います。
俺はいつも思う。人間が持つもっとも許せない「悪」とは、「愛してる」と言いながらナイフで傷つける、傲慢で身勝手な愛情なのだと。
家庭内暴力だとか、DVだとか、そういう表面化したものだけでなく、そこらじゅうに転がっている暴力。弱者救済だとか言いながら、弱者を見捨てる暴力。子供のためと言いながら、子供を危険に晒す暴力。
説いてみよう。キレイごとではなく。貴方に説いてみる。
あなたは、愛情を持っていますか?その愛情は本物ですか?愛情は必要ですか?あなたにとっての愛情とは、そんなに重荷になるほど大事なものなのですか?