裏庭の広場にある大きな大きなどんぐりの木が沢山の実を地面に落とし始め、薄暗く薄ら寒くしんとした空気に包まれる秋の早朝霧、いつものようにボケーっとを散歩させていましたら、どんぐりの木の下辺りから、“タスンッ!”と、言うような音が響いてきまして。 


朝も早くぼんやりとしていたため、気のせいだろうとくらいに思い更に足を進めましたら、今度は、“そこを行く者、止まれ、えぇい聞かぬかむかっと言う明らかな意思を持って、“タンっ、タスンっ!!”とやられまして。 そこでようやく、誰かの自己主張であると気がつき、薄暗いどんぐりの木の下に目を向けますとかなりの至近距離で、こちらに警戒の目を向ける大きな母鹿と二匹の小鹿(バンビよりは大分トウが立っておりましたが)目が合いました。 


正直なところ、我が町にてリスやウサギを含め、鹿も、さして珍しい動物とは認識されません。 ぶぶぅ~んと車を走らせていれば、道の脇に渡るか渡らぬべきか迷う鹿に出会うだけでなく道路渡りに敗れた鹿ドクロも転がっています。 それに私も日本育ちゆえ奈良にお邪魔し鹿にセンベイやるついでに頬ずりした事が何度かあります。


けれど、やはり、我が家の裏の広場のどんぐりを目当てにやってきた野生100%鹿親子に出会うと言うのは格別の感動クラッカーがあります。 目の前にいる鹿は、奈良の彼らよりも大分大きめで、こちらを窺い、あなた達などにつかまるようなマヌケではありませぬが、これ以上近づく事は許しませんと言う堂々たる姿勢。 


大きな鹿さまを目の前に、あぁ、シシ神さま、どうか我々の事など相手にせず、そこでどんぐりを食べ続けて下さいまし、でもどうか飛び掛ってきたりせぬようお願い致します、など、色々な思いを廻らせながら息をつめ見つめていましたが、は彼らを遊び相手と認識したかどうかは謎にせよ、母上、手綱を放せ! 我にあの者達を追わせよ!とばかりに興奮し始めましてね。 これ以上、無駄に怖がらせては、この裏庭が危険地域扱いになってしまうと考え、後ろ髪を引かれる思いで、来た道を我が家へ向かって戻り始めました。


ところが、歩き始めると何やら後ろに気配を感じます。 をとめ、ふっと振り返ったところ、つけてきていた鹿親子がぴたっと歩みを止めて、こちらを見ているんです。 びっくりし、お、おぉ?何か御用かね?と思いつつ、また、歩き始めると、やはり、後ろについてくる気配、、再度振り向くと同じようにまた、ぴくっと歩みを止める鹿。  


どうも彼らの住処は、我が家の道を挟んだ向かいにある住宅の裏を流れる小川沿いの森らしく、彼らとしては、思ったより早起きしてきた人間からはやく離れて森に帰りたい、あぁ、何だって、人間と言うのは、こうも歩みが遅い挙句に何度も振り返るのでしょう?と、イライラしていたご様子。 私達が、家の方向へ歩みを向けると同時に、ぱっかぱかぁ~と道路を渡り森に帰って行きました。 

陸に上がった人魚の日記-image

*鹿さまとダルマさんが転んだ。 乙女この上なし音譜


近づくなサインメラメラを見過ごし至近距離まで近寄った挙句に、興奮した犬と共にジロジロ眺め目、意図はしていなかったもののダルマさんが転んだ遊びまでしてしまい鹿達は、もう戻ってこないかもしれない心配はしたものの、その後も、この親子だけではなく、立派な角をもつ牡鹿の群れなどが、早朝裏庭に度々姿を見せてくれるようになり、どんぐりが落ち寒くなるこの時期に、早起きも悪くはないものだと早起きする原因の犬感謝グッド!するのである。