先日、メンバー小和田さんの記事にもありましたが、平成22年2月22日、東京・千駄ヶ谷の津田ホールにて、ミシェル・ベッケ トロンボーンリサイタルが行われました。

そして、私たちはこのコンサートで、幸運なことにベッケ氏と共演致しました。

これは、本当に本当にすごいことで、私たちにとって、夢のような出来事でした。

色々な想いが溢れて、どうしても文章に残したいと思いましたので、重複してしまうかもしれませんが、今回の共演のことについて、私(尾山)からも書かせて頂きたいと思います。


私たちは、結成して約5年が経ちますが、その間色々な曲を取り上げて来ました。中でも、パリ・トロンボーン四重奏団のレパートリーは特に積極的に取り組んできました。

その度に、パリトロの演奏を聴いて、イメージを膨らませて、こんな風に吹きたい!と思って演奏しているので、何度パリトロの音を聴いたかわかりません。

パリトロのCDは、ライブ録音のものも多く、なんでライブなのにこんなに完成度が高いんだろう・・・と思うのですが、パリトロの最大の魅力は、やはり音色と、そして流れるような音楽だと思います。


私自身、初めてトロンボーンカルテットというものを聴いたのが、やはりパリトロのCDで、ウーバー作曲『3つの小品』を聴いて、なんだこのキラキラし音は!!そして、トロンボーンカルテットって、なんて美しいんだ!!と思いました。きっと私のトロンボーンカルテット好きは、そこから始まっていたんだと思います。


そんな、憧れのパリトロのメンバーでもある、ベッケ氏との共演というお話を初めて聞いたとき、興奮と感激と、信じられないという思いで手が震えました。


おそらく他のメンバーのみんなも同じような思いだったと思います。


アンコールで一曲ご一緒させて頂けるということで、選曲も自分たちで考えさせて頂きました。


私たちが加わることで、聴衆の方はどういうものを期待するだろう…、どういう曲が聴きたいだろう…

考えあぐねた結果、思いついたのはやはり『パリトロ』でした。

パリトロが、日本公演で演奏した曲を探して、中でも日本人の心にきっと深く刻まれたであろう、日本の曲を選んで、聴衆の方に喜んで頂けたら嬉しいなという思いで、『夕やけこやけ』を選びました。

そして光栄なことに、当時パリトロの為に多くの作品を書かれていた、作曲家の高嶋圭子さんが、今回の為に新たに編曲して下さるということで、もうメンバーみんなで、本当に感激しました。


高嶋さんが今回の為に書いて下さった夕やけこやけを初めて吹いたときの感動は、すごかったです。自分たちで言うのはなんですが、ものすごく温かい音がして、そしてドキドキするほど魅力的なハーモニーがどんどん生まれて・・・あの「夕やけこやけ」がこんな風になるんだ…とみんなでただただ驚きました。


共演までの日は刻々と迫ってきて、ついにベッケ氏とのリハーサルの日がやってきました。


まず、ベッケさんとお会いして、とってもダンディな印象を受けました。

すごく背が高くて、スラっとしていて、オーラがものすごくでていて、温かい人間性が外見からも滲み出てくるような方でした。


そして、初めて間近であのベッケ氏の音色を聴きました。もう溶けてしまうんじゃないかと思うほど、キラキラして潤ったあの澄んだ音色に、茫然としてしまいました。


なんで、こんな素敵な音が出るんだろう、どうしたら…どうしたら…と頭がぐるぐるしてしまいそうでした。


そんなベッケ氏と一緒に演奏にて、日本の歌なのにも関わらず、歌詞が聞こえてくるんじゃないかと思うくらい歌に溢れていて、自分のパートをまともに吹いていられなかったです。


翌日がご自身のリサイタルだというのにも関わらず、時間をたっぷりとって合わせをして下さり、最高の時間でした。


そして、演奏会当日、まだ前日の興奮も冷めやらぬ中、リハーサルをして頂きました。

津田ホールという、素晴らしいホールの中で、前日よりさらにベッケさんの美しい音を堪能しながらアンサンブルをすることが出来ました。


18時。外に出ると開場30分前にも関わらず、すでに千駄ヶ谷の駅周辺には、トロンボーンを持った方々や、関係者の方などがいらっしゃって、なんとなくこれから始まる演奏会に千駄ヶ谷全体がワクワクしているような感じでした。


そして19時。


いよいよ開演です。


前半は、私たちも客席で聴かせて頂きました。


1曲目のギルマン。最初の1音から心奪われる、美しい音。そして、まるで溢れてくるような自然なフォルテ。

ピアノになったときも、潤った音。終始絶えない音楽の流れ。


トロンボーンは最も神に近いと言われた楽器、というフレーズが頭に思い浮かぶような、上品で、高貴で、美しい音楽でした。


この中にこれから自分たちが飛び込むと考えただけで、涙がでそうでした。


また、ピアニストの長尾さんのソロもまた素晴らしく、魅力溢れる音楽を、存分に楽しむことが出来ました。もっともっと聴きたかったです。


ベッケさんが再び登場して、ウェーバーのロマンス、そしてクライスラーの愛の悲しみ。


どちらもベッケさんのまさに「歌声」が聴こえてくるような、美しい音楽でした。


前半が終わり、まだまだ聴いていたい思いでしたが、ドキドキしながら控え室へ。

間もなく迫ってくる一大ビッグイベントにワクワクしながらも、ドキドキして、なかなか平常心になれませんでした。


後半の曲もどれも、席で聴きたい曲ばかりでしたが、モニター越しに客席がどんどん興奮してくるのを感じていました。


プログラムの全ての曲目が終わり、アンコール1曲目はサン=サーンスの白鳥。

舞台裏でドキドキしながら、聴いていました。


そいていよいよ、自分たちの出番。


ベッケさんに招いて頂き、いざステージへ。


会場全体が、とても温かくて、ベッケさんの音楽を、会場のみなさんが心の底から堪能されていたという空気を感じました。


そして、「夕やけこやけ」の演奏。


ベッケさんとの夢の共演の時間。

幸せでした。


この時間がずっと続いたらいいのに・・・

と思うような、幸せな時間でした。


お客様に、このサプライズを喜んで頂けたかは、正直まだわかりませんでしたが、大きな拍手を頂くことがきて、会場のみなさんに、よくやった、と言って頂いているような気が致しました。(勘違いでないことを願います・・・)


そして、舞台裏に下がって、カーテンコールに応えるベッケさんに、心から拍手をしていた私たちは、再び舞台に呼ばれました。


???


もう一回???


すごい、もう一回!!


そう、なんと2回も演奏させて頂いたのです!!


これは、私たちがサプライズでした。


2回目は、ベッケさんが、究極のピアノで演奏されたので、それに応えようと必死でしたが、ベッケさんピアノの音色に脱帽で、力及びませんでした…。


しかし、再び会場のみなさんからたくさんの拍手を頂き、本当に自分たちは幸せな経験をさせて頂いたのだと実感がわき、感無量でした。


今回、このようにベッケさんとご一緒させて頂くことが出来て、あの美しい音は、ベッケさんの温かい人間性からくるものなのだなと感じました。


この経験は、私たちにとって本当に宝物のような出来事となりました。今後、この感動を自分たちの演奏に生かして、たくさんの方に伝えていけたらと思います。


この企画に、協力頂いた皆様、ご尽力下さった方々に心から感謝いたします。



尾山碧