「ああ、俺たちずっと一緒さ。愛してるよ、直美。」

「私も愛してる。琢也のこと、付き合ってからどんどん好きになってる。」


二人は、九十九里浜で自分の愛を誇示し合う。恋人同士になって3ヶ月。


「初めて二人でデートしたのもここだったよな。覚えてる?」

「もちろん!あの時は、まだ友達同士だったけど、琢也が私のことずっと想ってくれてただなんて、夢にも思わなかったのよ。」


春先のまだ冷たい風が頬を撫でる浜辺で、仲良く体を寄せ、お互いの体温で温まる男女は、専門学校で同じクラスの恋人同士。ファミリーレストランでアルバイトをしていた二人は、同じ専門学校であったことから話が弾み、今に至る。


「やっぱり運命だよな。直美に会えたこと。」

「絶対そうよ。もう生まれたときからずっと決まってたのよ。」


押し引きする波は、二人の沈黙を盛り上げる。波が崩れる音のひとつが、お互いの相手への気持ちをひとつステップアップさせるかのようなリズムを紡ぐ。


「そろそろ車に戻ろう。直美には体を大事にして欲しい。この幸せな時間がずっと続いて欲しいけど。」

「うん・・・、優しくしてくれてありがと。大好き。」



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



「結局、合わなかったんだな俺ら。」

「結構前からずっと我慢してたけど、さすがに私、もう付いていけない。」


3年後の春先の九十九里浜、二人はまた波を見つめて会話していた。


「さぶっ!帰るわ。」

「あっそ、もうちょっと引き止めるかなんかするのかと思ってた。」


押し引きする波は、時々お互いの思いやりの無い言葉を掻き消し、せめて和らげようと何度も努力する悲しいリズムを紡いでいた。


「まぁ、最後送ってってやるから乗れよ。」

「ありえない。純君が迎えに来てくれるっぽいから早く帰って。」


幸せを、嘘偽り無く、本当に幸せだったあの時の幸せを思い出して欲しかった。

別れる運命ではなく、出会った運命を大切にして欲しかった。

自分が古から、途方も無く長い時間をかけて育んだ二つの生命の、その出会いを、掛買いの無いものとして、もっと大事に扱ってほしかった。


波は、すすり泣くかのようなリズムを紡いでいた。



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「そっか、じゃあな。」