【深海の宇宙】SNSのポエマーが神格化する「52Hzのクジラ」は、孤独な陰キャではなく「孤高の超絶ハイトーン・ラッパー」だった説
SNSのタイムラインやプロフィール欄で、定期的に見かけるお決まりのテンプレ(記号)があります。
「感受性が強すぎて生きるのが下手な私」
「誰にも届かないSOSを呟く、世界で一番孤独なクジラ(52Hz)」
「52Hzのクジラ」といえば、他のクジラには聞こえない高い周波数で鳴くため、「世界一孤独なクジラ」として小説や映画の題材にもなり、今や量産型ポエマーたちの格好の「お気持ちのダシ」にされています。
しかし、生物学的な現実や最新のデータを1ミリでも真面目に調べたことがあるでしょうか?
人間が勝手に「可哀想な孤独のヒロイン」に仕立て上げて、自分の安っぽい生きづらさと重ね合わせて癒やされているの、ぶっちゃけクジラに対して失礼極まりないと思いませんか?
今回は、そのハリボテのエモい設定を、冷徹な現実のデータと圧倒的なバイブスで根底からひっくり返します。
そもそも52Hzは「キンキンの超高音」である
人間の耳からすると52Hzは「ズーン……」という重低音に聞こえますが、クジラ界の基準は全く違います。
普通のシロナガスクジラやナガスクジラは「10Hz〜20Hz」という、人間にはほぼ聞こえない超・超低音(インフラサウンド)で会話しています。
つまり、クジラたちの静かな深海において
52Hzという音は「めちゃくちゃキンキンした異次元の超高音(ハイトーン)」です。
さらに、クジラには人間のような声帯はありません。
鼻の奥にある空気嚢(くうきのう)などを自力で震わせて音を出しています。
つまり、あのクジラは
「声が枯れてSOSを出している」
のではなく、
「俺の超絶ハイトーン・ビートボックスを聴け!」
と、独自の喉鳴らしテクニックを己の意思でカマしている可能性の方が圧倒的に高いのです。
クジラの生態は「フリースタイルバトル」そのもの
そもそもクジラのオスが海の中で鳴く「ソング」は、メスへの求愛であると同時に、周囲のライバルに対するマウンティング、つまり完全にフリースタイルバトルです。
しかも、クジラたちの歌には流行(トレンド)があり、ある群れで流行った最先端のフロウが、回遊ルートを通じて他の群れのクジラたちに
「おい、あいつらの新曲ヤバいぞ」
とサンプリングされ、海全体に広がっていくことが分かっています。完全にヒップホップのカルチャーです。
そう考えると、52Hzのクジラに対する見え方は180度変わります。
周りの凡庸なラッパーたちが15Hzのロー(重低音)でボソボソと同じビートを繰り返している中、
そいつらを鼻で笑い
「チッ、どいつもこいつも同じフロウばかりで退屈だぜ。俺は52Hzのハイ(高音)で、誰も真似できない独自のバイブスを刻む」
と、マイクすら要らない生身のバイブスだけで深海をレペゼンしている、超攻撃的な孤高のカリスマラッパーの姿こそが、生物学的にリアルな輪郭なのです。
最新のデータ:そもそも一頭じゃない説
さらにポエマーたちに追い打ちをかける冷酷な現実があります。
近年の海洋探査において、52Hzの鳴き声が複数のセンサーで同時にキャッチされるなど、
「実は同じ周波数で話せる仲間やツガイが複数いる(一頭じゃない)」という説が極めて有力になっています。
「世界に一頭だけの特別な孤独(笑)」
に浸っていたのに、現実のデータは
「あ、普通に仲間いたわ」
というオチ。孤独のシンボルとして使っている前提そのものが、とっくに科学的に崩壊しています。
ネットの海には「自称・52Hzのクジラ」を気取った量産型たちがうじゃうじゃ群がっていますが、皮肉なことに、本物の52Hzクジラも普通に群れを作ってフリースタイル回遊をしているのです。
切り取りの綺麗さに騙されるな
SNSの「カジュアル生きづらい民」は、
スマホの画面という安全な箱庭の中で、都合よく切り取られた「孤独の物語(ラベル)」を消費して勝手に自己満足しています。
しかし
人間にとって宇宙レベルの絶望的な広さを持つ深海を、水圧も暗闇も物ともせず、生身のバイブスだけで何万キロも泳ぎ続けるクジラの生命力
そんなおセンチでチープなナラティブに回収できるほどヤワではありません。
本人のリアルな生の中身や凄惨な前提(地金)を何も見ず、分かりやすいラベルだけでレッテル貼りして
「分かった気」
になる。
そんな人間の傲慢さと浅ましさに、今日も深海のカリスマラッパーは、誰も真似できない極上のハイトーンでアンサーソングを返し続けているのかもしれません