TimeShare~タイムシェア【恋愛小説集】 -18ページ目

【髪結いの亭主・第20話】遊園地の休日

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「ギャー!!!大吉~~~!!助けてえ~~~!!!」



髪を逆立て、絶叫する珠水の隣で、大吉はゲラゲラと爆笑している。
その真後ろで、目を閉じて歯を食いしばっているのは、そう、あの、篠原誠司だ。

スカッと抜けるような青空の真下、まあるく弧を描きながら急降下するコースター、
その背景には、北斎も真っつあおの、輝かんばかりに鎮座した、富士の山。



そう、ここは、かの有名な、富士急ハイランド。
花やしきなんざ、比べものにならねえ。迫力満点の絶叫マシンとやらがずらっと並んだ、どでけえ遊園地だ。



珠水に白昼堂々プロポーズした篠原。



「将を射んと欲すれば、まず馬を射よ」



のことわざよろしく、珠水を射止めるには、まずは、大吉のハートを掴むのが一番だとばかり、
次の休日に、珠水親子を遊園地に連れ出す作戦に出た。


この誘いに、喜んで乗っかった大吉。
そりゃあ、仕方ねえ。生まれてこの方、東京を出たのは、今日が初めてだ。



甲斐性のない親父に、働きづめの母親。
両親の田舎だって、浅草だから帰省すらなく、旅行なんざ、夢のまた夢。


初めて乗った外車に高速道路。
初めて目にした富士山に、どでかいジェットコースター。

大吉にしてみりゃ、盆と正月と誕生日とクリスマスが、一気にきちまったようなもんだ。
その、はしゃぎっぷりは尋常じゃあ、なかった。


大吉の、キラキラと輝く笑顔を目の当たりにした珠水もまた、この上ない幸せを感じていた。


「大吉、楽しい?」



「うん!」


ホットドックを頬張りながら、にんまり笑う大吉。


「来てよかった?」


「あたりまえじゃん!よし、明日、金森に自慢してやろう。」


「金森って?金森不動産の子?」


「そうだよ。アイツんちは金持ちだからさ、オレ、いっつもバカにされるんだ。だから、今日のこと、アイツにたっぷり自慢してやるんだ。」


「バカねえ、そんなヤツ、相手にするんじゃないよ。」


そう言いながら、珠水は胸がちくんと痛んでいた。
ああ、今まで大吉には、随分と不憫な思いをさせてきちまった、ってね。


そんな空気を察してか、篠原がふたりの間にすっと入った。


「大吉君、次はどうする?オバケ屋敷でも行こうか?」


「うーーーん、その前に、オレ、アレに乗りたい。」



大吉が指差したのは、ぐるぐると大きく廻る、どでかいブランコだ。



「えーっ。お母さん、食べたばっかりでアレはちょっと…」



「いいよ、オレ1人で乗ってくる!!!」



そう言うと、一目散にブランコへと走る大吉。
珠水と篠原は、笑顔でその背中を見送った。



ブランコに乗り込み、シートベルトを締めると、大吉は笑顔で大きく手を振った。
その様子を眺めながら、珠水は篠原へ礼を言った。


「今日は、本当にありがとう。あの子のあんな笑顔、本当に久しぶりで…」


「いいんですよ。僕も、子供の頃にかえったみたいで、楽しいです」


そう言って笑う、篠原の笑顔。上品で優しくて繊細だ。
笑顔だけじゃねえ、服だって、品のいいポロシャツにチノパンツ、肩にニットを引っ掛けて、こんな格好が嫌味なく決まるのは、日本じゃ、石田純一とこの男くらいなもんだ。
そんなことを考えながら、ふと、珠水は、幸太郎と篠原を頭の中で較べていたことに気付き、慌ててぶんぶんと首を振った。


こんな風に、ふたりを較べるのは、篠原にとっても、幸太郎にとっても、失礼なことだと、珠水はそう思っていた。








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