ドイツは中世より高い印刷技術を誇っていました。
伝統とたしかな技術力に支えられ、絵葉書の生産量も抜き出ておりました。
それまで主に本の挿絵などを扱っていましたが、石版印刷の発達と需要が
伸びるにつれ絵葉書を扱う業者が増え、一大マーケティングを築いたそうです。
当時ヨーロッパは古き良き伝統と新たな可能性の追求が、
せめぎ合っておりました。
特にドイツ語圏では伝統からの脱却を目指す世紀末芸術運動が盛んでした。
オーストリアのウィーン分離派を始め、ミュンヘン分離派や
ベルリン分離派が積極的に活動してました。
絵葉書の中でも伝統に重きをおいた風景画や抒情画と、
世紀末芸術家たちのアヴァンギャルドなグラッフィク・アートが、
それぞれの美意識や主張のもとに製作してました。
そのためドイツの絵葉書は一言では言えない、ヴァリエーション豊かな
世界を見せてくれるのです。
ポストカードの発展
通常の郵便よりも約半額の料金で送れたポストカードは、瞬く間に人気に火がつき、ヨーロッパ中で大流行しました。
ポストカードの誕生には諸説ありますが、20世紀に入る直前から生産量が一気に増え、一般にも広く流通したそうです。またグラフィックデザインにも深く関わっていた、最新流行のアールヌーヴォの作家たちもポストカードに注目。
有名な作家によるデザインが次々生み出され魅力的で、
デザイン性の高いポストカードが流通しました。
特に郵便はがきが発明されたオーストリアは、ポストカードでも
質・量と主にヨーロッパでも抜きんでておりました。
長い歴史とヨーロッパ文化の発信地でもあり、優れた印刷技術を
持っていたことから、芸術性の高い美しい絵葉書が次々創作されました。
当時のイギリスやフランスでもオーストリア製やドイツ製の
絵葉書が数多く輸入されていましたが、第一次世界大戦後は、
それぞれの自国でも印刷を行う様になっていきました。
特に世紀末ウィーンは前衛的で今までにない革新的な芸術活動が
目覚ましく、若き才能のある芸術家が集まりました。
彼らは活動をより多くの人々に知ってもらう媒介として
ポストカードに着目しました。
そのため他国にはない個性的なデザインのポストカードが誕生したのです。
年賀状、クリスマスカード、お誕生・・・それともお土産に売っている
観光名所？
皆さんが思い浮かべたどれもが、ポストカードの正しい姿なのです。
1869年10月1日、オーストリアにて官製はがきが発行されました。
当初は国営企業のみはがきの印刷・発行が許され、各国内でしか
使用できませんでした。
しかし郵便制度の改正と共にはがきの標準規格が決められ、
切手を貼ればどこにでも送れる私製はがきの発行許可がおりました。
ヨーロッパ中で、カラフルでバリエーション豊かなポストカードが
印刷されたのです。
19世紀末から20世紀初頭はポストカードの黄金時代とも
呼ばれています。
電話も普及してない時代、どこにいてもやり取りできる
ポストカードはとても便利。しかもカラフルで話題性抜群。
ある人は旅行先で名所の風景を一筆送り、ある人はロマンチックな
イラストに恋人への想いをしたため、またある人は
新商品の売り込みに使いました。
まさに空前の大ブーム。当時最新の技術、豊かな発想力を、
小さなカードに詰め込みました。
そして後にも先にもない、ユニークで美しい
ポストカードが誕生したのです。
こちらのブログでは、毎回テーマを決めてポストカードの魅力に迫ります。
様々な角度からポストカードのエピソード・楽しみ方にスポットを
当てていこうと思います。
