ちら、と横を見ると、筆箱にかかれた名前が目に入った。
かなえちゃんか…どんな字なんかなぁ。
漢字は得意な方だったが、どうしても「かなえ」という字が浮かんでない。
しばらく頭を悩ませると、何個かこれかな?というものがあがった。
可奈絵、香菜恵…違うなぁ。
花苗…ってそんなはずなかよねぇ。
とりあえず「かなえ」と読める字をあててみるが、どれもしっくりとこない。
そんなことを考えていると、突然頭に痛みを感じた。
「いった!」
「いった!じゃなかよ!何回呼んだと思っとるとね!?」
小さな頭をフル活用していたせいか、先生に頭を叩かれたのだと理解したのは数秒あと。
ずっと名前を呼ばれていたと知ったのは、まだみんなとおなじ教科書を持っていないかなえちゃんと机をくっつけたあとだった。
「けんたろうくん…やったよね?」
「え?なんで!?」
「さっき先生言うてたやん。何回呼んだと思うてんのん?て」
「え!?そうやったと?」
はじめて見る笑顔に、違う土地の言葉に、2人で話している、ただそれだけのことに妙に胸がドキドキさせられる。
顔、赤くなってないかな?
心臓の音、聞こえてないかな?
心配なことが山ほどあって、でも当然聞くことなんてできなくて。
頭のなかをぐるぐるまわる想いはとどまることを知らず、僕を混乱させる。
「けんたろうくん!」
慌てたようなかなえちゃんの声になにごとかと思う間もなく、本日2度目の頭への衝撃。
それも、1回目よりもはるかに強く。
不穏な空気を感じて上を見ると、そこには噴火直前の火山のような先生が立っていた――。