あきひで | 京都1975

あきひで


現時点で京都で一番美味いと、大仰ではなく素直に思えるラーメン。こってり風味の極北ながらも、短絡的で合理的な後付けのくどさはなく、あくまでもスタンスは実直、それも、ほぼ「愚直」の域に達しそうな実直さ。骨だけをただひたすらに煮込んだスープ。舌の柔突起の上を、微細な骨の粒子がさらさらっとかすめていく、この感触、この名状し難い異物感。舌で味わい、鼻で嗅ぎ、脳味噌に刻まれるこの確固たる存在感は、誤解を恐れずに言えば、既に唯我独尊の、ひとつのアートだ。のちに登場した割節ラーメンは、魚系のダシが追加された新機軸。世に蔓延る「Wスープ」なる低俗で恣意的な表現を駆逐するぐらいの、実直な「和」がここにある。しみじみ、でもがっつり美味い。こいつは和食だ、日本だ、うーん、イッツ・ジャポーン。不定休という点が「あきひで」の唯一のウィークポイント。かくいう私も何度もフラれた。意気揚々と一乗寺へ赴き、店の前で茫然自失で立ち尽くしたあの日。何度もフラれた結果、休店の場合を想定して「高安」「鶴はし」「夢を語れ」等、別候補を想定しつつの一乗寺行脚。しかし世はネット。灯台もと暗し。営業情報を掲載する公式サイトの存在に気付くのが遅すぎた。でも、今でもそれは敢えて見ない。これからも実直にいく。意固地とはまた違う。営業日にたまたま出会えた僥倖、その高揚を大切にしたいから。愚直だな、いやいや、これは馬鹿以外の何者でもない。

らーめんや亜喜英 (あきひで) (ラーメン / 一乗寺)
★★★★★ 5.0