丸ぎゅ | 京都1975

丸ぎゅ


大局的な視野でいくと「こってり」「あっさり」という二元論で語られるラーメン。特に「こってり」については、その言葉が内包する意味合いがとてつもなく広範で、もちろん食べる人によってもそのニュアンスは十人十色。ラーメン紹介本によく見受けられるダイヤグラムを見てみても「え?このラーメンってこってりだったんだ!」なんて違和感を覚えてしまうこともしばしば。はたまた京都のご当地ラーメンの一つと言っていい背脂醤油ラーメンを評する際の常套句「見た目はこってり、食べてみると意外にあっさり」なんてのもいい加減食傷気味な表現。こんな感じで、目の前にあるラーメンの味を表現するためのボキャブラリーって、実はかくも貧困。「丸ぎゅ」のラーメン、こいつはこういう文脈でいくと、とりあえず「こってり」と表現して間違いなさそう。だけど、どぎつい「こってり」の系統ではなく、まろやかでまとまりがある、優しい風味。なんというか、「こってり」というよりは「まったり」なラーメン。茶褐色の濁ったスープは、表面に背脂がわずかに浮かび、やや粉っぽい舌触りが特徴的。「まったり」なのは逆に言うとパンチがなくて、食べ進めるに連れて舌が慣れ、中だるみの状態になってしまうんだけど、ニラ、キムチ、一味唐辛子、おろしニンニクがセッティングされていて、順に加えることによって味に飽きが来ない。白眉はキムチで、いわゆる普通のキムチとは違い、臭さや辛さが極力抑えられた、あくまでもトッピング用のキムチとして調合されている点がすばらしい(無論、白ご飯のお供としては役不足)。さらに、おろしニンニクを加えた時点で「まったり」だった風味が一気に飛翔。身も蓋もない表現だけど、無茶苦茶美味いラーメンに昇華する。明るい店主の振る舞いも特徴的。厨房の奥から「ガシャーン!」と皿を落とす音。セオリー通りなら「お騒がせしました!」。が……「今の音は割れてへんな!セーフ!」。この店主あっての「まったり」なラーメン。

丸ぎゅ
★★★★★ 4.5