このところ観た映画(DVDで)

「マイ・シネマトグラファー」
  (04年 米 監督:マーク・S・ウェクスラー)

マイ・シネマトグラファー アメリカ映画界において、ゴードン・ウィリスヴィルモス・スィグモントと並ぶ名撮影監督ハスケル・ウェクスラー

 過去に組んだ監督(エリア・カザン (「アメリカ アメリカ」)、ノーマン・ジュイスン (「夜の大捜査線」「華麗なる賭け」)、ミロス・フォアマン(「カッコーの巣の上で」)等)のほとんどをアホ呼ばわりし(ただしハル・アシュビー (「ウディ・ガスリー/わが心のふるさと」「帰郷」)だけは賞賛している)、自分がすべて監督すればよかったと豪語する伝説的名キャメラマンの彼が八十歳になった時、息子のマークは長年反目していた父への理解を深めようとドキュメンタリー映画の撮影を開始。しかし、自身ドキュメンタリーの監督として名を馳せた父ハスケルを前に、撮影は難航する……

 余談ですけど、ハスケル・ウェクスラーと並ぶ伝説的名キャメラマン、ネストール・アルメンドロスがアカデミー撮影賞を受賞した「天国の日々」で、仕事の都合で撮影終了前にフランスに戻らなければならなくなったアルメンドロスの後を継いで、ハスケル・ウェクスラーが残りの撮影を行なったのだけど、追加撮影ということで、彼はアカデミー賞をもらえなかったのですね。

 で、彼はストップウォッチ片手に「天国の日々」を観て自分が撮影した部分の時間を測り、「半分はオレが撮影してるじゃないか」と憤ったという。(笑) こういう人を親父に持った息子は、そりゃやっぱツライわな。(フォアマンの「カッコーの巣の上で」とコッポラの「カンバセーション…盗聴…」では、ウェクスラーは撮影途中でクビになっております。どちらもビル・バトラーが後任。後者ではウェクスラーはノー・クレジット)

 そんなわけで、とにかくハスケル・ウェクスラーのキャラクターが強烈で、監督のマークとしては自分がこういう強烈な父親によって育てられ、長年つらい思いをしてきたことを描きたいのだろうが、なんせ相手は筋金入りの左翼活動家にして映画撮影の鬼みたいな人だから、観ている側としては「おまえ、親父の言ってることの方が(概ね)正しいぞ」と思ってしまう。(笑)

 父と息子がお互いを認め合う萌芽が見えるラストは極めて感動的。父と子の関係を描いた佳作。
 

「子猫の涙」 (07年 日 監督:森岡利行)

 うちの映画祭で上映しようかとシナリオを読んだ時は結構感動したのに、映画になるとこれがピンとこない出来だったのは何故か。感動的だった「マイ・シネマトグラファー」のすぐ後で観たというハンディを抜きにしてもである。文字で読んでいた時には感じられなかった安っぽさが映像になると見えてしまったということか。役者たちの熱演が、逆に映画を軽くしている気がする。印象評で申し訳ないが。


このところ読んだ本

『Ⓐの人生』 (藤子不二雄Ⓐ/講談社) ○
『赤塚不二夫 これでいいのだ』
  (赤塚不二夫/日本図書センター) ◎
 漫画修業時代や売れっ子漫画家になってからについてではなく、満州で過ごした少年時代や引き揚げ後の生活についてウェイトが置かれている点が、逆に感動的で面白い。漫画をまったく読まないうちの母に薦めたところ、彼女も「面白い」と言っていた。
『杉浦茂 自伝と回想』 (杉浦茂/筑摩書房) △
『映画をたずねて 井上ひさし対談集』 (ちくま文庫) △
『クリント・イーストウッド
   アメリカ映画史を再生する男』

 (中条省平/ちくま文庫) △