シュール劇場 サトルと鈴枝 | ちくちくタウン

シュール劇場 サトルと鈴枝

日差しがやわらかくなった秋の午後


サトルと鈴枝はローラーシューズを履いてデートを楽しんでいた。


マンボウの生態について盛り上がった時、


「血が出てるよ、」


鈴枝の鼻を指差して


サトルはそう言った。


「別にいいの。」鈴枝はいつも強気だ。


「でも・・・・・。」


「いいの!」 鈴枝はさえぎる。


そして何ごともなかったかのようにマンボウの話に戻る鈴枝。


しかし、サトルはドバドバでてくる


鼻血が気にならずにはいられなかった。


「違う! 違うんだ!」 サトルはなにが違うのか分からなかったが、


なんだか  違う ような気がして 思わず叫んでいた。


鈴枝の顔はもはや血まみれだ。


血まみれでマンボウの話を楽しそうにしている。


サトルはふと思いついた。


そうだ、僕は鈴枝の鼻血を使って、


赤ペン先生になればいいんだ!


鈴枝の鼻血を指につけた。


それを色んなものに○や×をつけていくサトル。


床屋の古臭いモデル写真は×、


イニシャルTシャツを着ている人は○だ。


そんなサトルに鈴枝もまんざらでもない顔だ。


そうするうちにドンドン子供達が集まってくる。


子供が大好きなサトル。


先生! 僕にも赤ペンで○をつけて!


子供達は目を輝かせて言います。


「甘えんな!!」 サトルは鬼の形相で思い切り子供の頬をビンタした。


世の中は簡単に○をつけてもらえるほど甘くはないのです。


また、見知らぬ人に簡単に近寄ってはいけないというのを示したのです。


子供達は自分達の愚かさに気づき


さわやかな顔で去っていきました。


ありがとう、赤ペン先生サトル!


子供達の心の中から、そう聞こえたきがしたサトル。


あくまで気がしただけだ。


鈴枝はそんなサトルを惚れ直したのか、


サトルにヒザカックンをして、腹をかかえて大笑いし、


それを3回ほど繰り返したあと、


急に冷めて帰っていきました。


「違う、違うんだ!!」


なにが違うのか相変わらずさっぱりわからないが


とりあえず、そう叫ぶサトルは


 ハッ と我にかえって思った・・・・・・。


体がかゆいのに、かゆいところがどこかわからないときがあるなあ。


秋風がサトルの頬をやさしく撫でた・・・・・。








                            ―おわり。