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「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)11月9日(火曜日)
通巻第7114号 
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 イカロスの翼を馬雲は失ったのか。アリババの風雲児、スペインで隠棲?
   霜月の朝顔は、萎んで花を咲かせる力がない
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 イカロスはギリシア神話にでてくる有名な逸話である。蝋で翼を固め、空を自由自在に飛んでいたイカロスは太陽に近付きすぎて、翼の蝋が溶けて失速、海に落ちた。
 現代文明のテクノロジーを信じて、ネットワークの新業種で瞬く間にのし上がった新興財閥は、最高権力者の怒りに触れて落剥の身となった。
新しい寓話が成立した。

 アリババ創業者の馬雲は、共産主義全体社会のパラダイムのなかにあって、何処まで自在に商業活動が可能かを示した。
すなわち、かの「中国的社会主義市場経済」なる奇妙奇天烈な枠組みのなかで自由競争の限界に挑戦し、権力に敗れた典型の事例を満天下に示した。

国際大会で馬雲は、「システマティック・リスクというけれど、中国にはシステムがない」と本当のことを発言し、中央政府の怒りを買ったといわれ、子会社の「アント」という金融企業の上場が突如阻まれた。

 その前に、馬雲は誕生したばかりのトランプ政権に食い入り、ソフトバンクの孫正義、鴻海精密工業の郭台銘らと組んでアメリカへの大々的投資を行うファンドを創設するとした。
中国共産党は、この出過ぎた「民間外交」にも怒りを露わにしたと事情通が言う。

 一年以上も消息が絶えていた馬雲は、極秘裏に香港へ現れ、その後「農業研修」と称してスペインのマヨルカ島に滞在している。ビル・ゲーツのように農業の新ビジネスに打って出る準備とも言われる。

 筆者が思い浮かべたのはイカロスではなく、霜月の朝顔だった。
 朝顔は生薬の原料になり古くは平安時代から珍重された。中国では「牽牛」と言われるほどに貴重な薬草の扱いを受け、贈り物には牛車で届けた。
 
 「朝顔につるべとられてもらい水」(加賀千代)
 朝顔は真夏に咲き乱れるほど盛んな勢いを見せるが、季語は秋である。そして秋も霜月となると蕾がちらほら、花とはならず、萎んだままである。生気を失って、朽ち果てるのを待つ。
ひょっとして馬雲は「霜月の朝顔」?
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