若い女性の間で「戦国ブーム」が起きている。ネットの世界でお気に入りの武将を語らい、史跡を巡る。知識は専門家も舌を巻くほどで、戦国時代をテーマにした居酒屋、グッズを売る店も登場している。テレビゲームや大河ドラマがきっかけで、のめり込む人が多いという。
東京都新宿区の雑居ビル6階。エレベーターが開くと、薄暗い店内に実物大の甲冑(かっちゅう)が飾られていた。武田信玄と上杉謙信の甲冑のレプリカだ。入ってきた女性たちが声を上げた。「かっこいーい」
昨年3月にオープンした居酒屋「大河の舞」は信玄と謙信が戦った川中島の合戦がテーマだ。着物姿の店員が「武将殿、こよいは宴(うたげ)でございます」
と個室に案内。通路を歩くと「曲者(くせもの)」が現れた。店員は「お待ち下さい。成敗いたします」と言って刀を振りかざした。客は大喜びだ。
大学の友人4人と来た女性(21)は「関ケ原を戦った大谷吉継が好き」という。ゆかりの史跡を巡り、城下町も歩いた。自宅の本棚は歴史小説で埋
まっている。「戦国時代の武将は自分の信念や生き方があった。現代にはないかっこよさを感じる。友人にも戦国ファンはかなりいます」
東京都港区で7月下旬、イベント「戦国Bar」が開かれた。集まったのは20~30代の約100人。9割が女性だった。お題は四国統一をした「長
宗我部元親(ちょうそかべ・もとちか)」。「この戦で別の動きをしていたら」「長男が生きていたら」。グラスを片手に盛り上がった。
○か×で答えるクイズもあった。「真田幸村の家紋は3種類か」「元親の初陣の年は真田昌幸の初陣と同じ年か」。多くの人が正答した。
元親が戦勝祈願をしたとされる高知市の若宮八幡宮の大久保千尭宮司(65)は「この1、2年は衝撃的な変化」という。「若い女性が次々やって来て、お墓はどこか、銅像はどこかと聞く。元親はしょせんローカルな武将だったのに、どうなっちゃったの」
案内の小冊子を作り、元親の絵馬やミニチュアののぼりを作ったところ、飛ぶように売れた。毎年5月、地元でひっそり行われていた元親ゆかりの祭り
に、今年は県外から若い女性9人がやって来た。11月の顕彰会にもすでに20人以上の女性グループから参加申し込みが入っている。
「まったく驚くばかり。我々より歴史に詳しくて、うっかりしていられない」と大久保さんは言った。
天下分け目の決戦が行われた岐阜県関ケ原町では14、15日、合戦に参加した武将たちの子孫による顕彰行事があり、戦国ファンたちが甲冑を着たり、コスプレを楽しんだりするイベントもある。
ブームの背景には、戦国時代をテーマにしたゲームの売り上げが好調なことや、昨年のNHK大河ドラマ「風林火山」にミュージシャンのGacktさんが上杉謙信役で出演したことがあるらしい。
都内の会社員女性(27)はテレビゲーム「戦国BASARA」から元親のファンになったという。「部下思いで人間味あるキャラクターだった。史実を知りたくて、ネットで語り合ったり、歴史書を読むようになったりした」
12日に5作目が発表された「戦国BASARA」は計110万本を出荷。シリーズを通じて31人の武将が登場する。プロデューサーの小林裕幸さん
(36)は「実在した武将たちを現代風にかっこ良く見せ、感情移入しやすいキャラクターを作ったことで女性にも受け入れられたのではないか」とみている。
一方、東京都世田谷区の田中秀樹さん(37)は04年、戦国好きが高じ、戦国グッズのブランド「もののふ」を立ち上げた。武将や鎧(よろい)のイラスト
などをあしらったTシャツ、アクセサリー、財布など約100点をネット販売する。アクセス数は1日約5千件。8割が20~40歳で、4割が女性客だ。11
月には東京・新宿に店舗「もののふ 天守」を構える予定だ。田中さんは「ファンが情報交換をしたり、イベントを開いたりする場所に」と意気込む。