「岸和田人の密かな愉しみ vol.4」
大工方法被

大工方はだんじり祭りの花形であると同時に非常に大事な役割も担っています。
だんじりの向きを小屋根に立つ仲間に伝えだんじりの方向修正をしているのです。
しかも舞いながらもその役目を担いながら舞うという神業的な役割を持っています。
その上、前梃子同様非常に危険な場合によっては命を落とす事も有る危険な役割です。

私は祭りを見ていてもだんじりはほとんど見ていません。大工方法被や衣装を見ているのです。
その図柄の技法や、この大工方が舞った時に法被の裾がもっとしなやかにはためくためには経糸の撚りをしなやかなものにした方が良いか?とかこの大工方さんは高く飛ぶので襟の芯地をもう少し腰の強いものにした方が良いだろうか?などと生地や作りの事ばかり考えながら見るのが、私の密かな愉しみなのです。



その柄には大工方さんの思いや町の誇りを図柄にしたものが多く見る者を楽しませてくれていて、私のだんじり見物はやりまわしなどより、法被を見ながら「この大工方さんの舞には固めの襟芯地が良いかな?この大工方さんにはもう少し生地に腰を持たせた30匁の羽二重が良いかな?」などと考察しながら見物するのが密かな愉しみの一つなのです。
最近では襟芯地もいろんな種類を集めて試してみたり、某ちりめん組合に「経糸は腰の有る糸にして緯糸はしなやかな撚り糸で織ってください」などと注文するので当初は理事長さんも「そんなもん織れますかいな」と渋っていましたが今では「今年は何を考えておますや?」と逆に聞いてくるような状態です。(笑)





その大工方法被は一般の曳き手が着る法被と違い、何百枚という大量に作るものと違い数枚、場合にとっては一枚のために製版しますので、何万円とかかる製版をその枚数でコストに加えるというものですから、一枚十万円前後から二十万円以上になるものまで有ります。
当店もこれまで多くの大工方法被を作らせていただきましたが、京都川島織物で生地から別注し六十万円という高額な法被も有りました。




ただ、通常112cm幅の生地だと岸和田仕様の袖長法被が作れない無いため、越前の織元に依頼し15年前から120cm幅のポリエステルジャガード生地を織ってもらい、昇華転写と言う染料を専用の機械で焼き付ける技法を用いて製版が要らない価格も2万円台から作れる法被として、当店では約15年前から専用の機械を導入しパソコンのデジタル画像で作画して生地からお作りすることで好評を得て、青年團の役員法被や記念法被、太鼓集団様の演舞法被へとその需要は伸び、今や年間200着以上の実績をいただいています。