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夕ちゃんに見られながら

鉛筆を走らせる。



もう、

自分が何を描くのか

わかっていた。



夢中に描いてた。



びっくりしたのは

手が勝手に動いてた。

























『祐・・・さ』

『夕、あっち行ってろ。今、祐作に話しかけるな。』



涼ちゃんは

じっと、祐作さんの絵を見てた私の

肩をポンッと叩いた。



『ダメ・・・・?』

『あぁ、今はダメ。』

『うん。わかった・・』



アトリエから出ると

キッチンでコーヒーを入れた。



正直・・

落ち着かなかった。

今、祐作さんの見てない間に

おばあちゃんの絵を

見たかった。


じっと、アトリエのテーブルの上の

白い布に被った絵を見ていると

涼ちゃんが頭を

ポンポンっと叩く。



『あれ、描きあがったら見せてくれるって。』

『うん・・・。』



心の中は

台風。



おばあちゃんの事

やっぱり好きだなぁって思った?

忘れられないって思った?


私の事なんか

目に入らなくなっちゃった?

祐作さん・・

今、何を考えながら

その絵を描いてますか・・?



ぐりっと私の目線を

アトリエから戻した涼ちゃん。


見上げると

ふっと笑った。



『大丈夫だって。』

『何が・・?何が大丈夫?』



わかんないよ。



じ~っと見上げてたら

涼ちゃんにぎゅ~って抱きしめられた。


暖かくって

涼ちゃんの匂いがして・・


勝手に泣けてくる。

声を出さずに

泣いてた。


背中を撫でてくれる涼ちゃんの大きな手。 

甘えて泣いてた。























夕ちゃんが、何を思って

泣いてるのか知らないまま

俺は、絵を描き続けてた。


下書きに

色を入れて

そして・・・・



『描けた・・』



やっとかけた。


ふと、振り返ると

涼さんが俺を見てた。



『描けたよ、涼さん。』

『おう。見ていいか?』

『うん。』



俺は、涼さんのイーゼルを借りて

昼間、描いてきた絵と

今、描き終えた絵を

並べて置いた・・・。


涼さんは傍によると

白い布をはぎ取る。


そして・・

ふっと、笑った。

それから、さっき描き上げた絵を

見る・・・



『夕が、泣いてたぞ?』

『え・・?』

『今、上で寝てる。さっき、コーヒー入れてくれてたぞ?飲むか?』

『・・・うん。』



返事をしたけど

俺はそこから

動けなかった。


涼さんが、

キッチンに戻って

コーヒーを持ってきてくれた。


じっと、見てた俺の絵。



『ね・・・涼さん。』

『ん?』

『これ、誰に見える?』



俺は、自然と

そう聞いてた。























2階に上がると

部屋のドアをノックした。



『夕ちゃん?起きてる?』



中から、布団のこすれる音。

とすんっと足が降りた音。

それから、

ドアが勢いよく開いた。



『うわ!』

『祐作さん!』

『どわ!』



勢いよく出てきた夕ちゃんに

思いっきり抱き着かれて

俺は、しりもちをついた・・


夕ちゃんを抱き留めたまま・・


背中を壁につけて

しっかりと夕ちゃんを抱きしめてた。



『絵・・・描けたよ?』

『はい・・・。』

『見ない?』

『見たいです・・・。』



ポンッと叩いた

夕ちゃんの背中。

ゆっくりと体を起こして

立ち上がる・・。


手を引いて、階段を下りた。



『見て・・・来ていいですか?』



俺の手を離して

夕ちゃんが言った。

顔を見て、頷いた俺を見て

少し、不安そうに夕ちゃんは歩いてった。


絵の傍には

涼さんが立ってた。

その傍に立つと

きゅっと、裾をつまんで

夕ちゃんはじっと、

俺の絵を見てた。



昼間、描いた絵。

それから、さっき描いた絵。



何度も

何度も

見比べて・・


夕ちゃんは俺に言った。

こっちを見ずに・・・



『祐作・・さん?』

『ん?』

『こ・・れ・・・、誰・・です・・・か?』



うん。

君だね。







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うん。




ありがとうございます☆