握手
品川へむかう山手線の中です。
私は1番端に座り、外を眺めていました。
本当にいい天気で心がやすらぎます。
現在、停車駅は渋谷駅。
やはり凄いですね。人が沢山乗ってきます。
その中で額に汗がにじみながら飛び込んで来た外国の方がいました。
南国の装いです。
大きな荷物。
彼は車内の路線図を確認し、まだ少し落ち着かない様子のまま、
私の隣に座りました。
座った・・・。のですが、私も荷物が大きいため、私の上に半分おしりがのりました(笑)
彼は、笑顔満点に「ソーリー」と。
私は、「I am all right」と、肩を上げました。
(自然と肩が上がってしまったのは、なぜだ・・・。(笑))
「この電車は東京駅へ行きますか?」
この電車は「品川・東京方面行き。」めずらしく確信があったので、即、
「yeah!! yeah!!! yeah!!!!」 と、答えました。
彼は安心した様で、そこで初めて、腰をドスっと、
イスに深々落とし、「ふうっ」と呼吸しました。
肩からは大きな荷物をかけて、
右手にはシワシワになった地図と路線図を握りしめて、
左手にはデジカメをそのまま手に持ったままです。
仕事ではなく旅行であることがわかりました。
私は旅行の時、場所や美味しい食べ物も心に残りますが、
やはり、1番残るのは現地で出会えた人でした。
日本でのほんの一瞬だけれど、何かの1ページになれたら、と思い
「trip?」(旅行?)と聞きました。
彼は、キラキラした目で「yes!!」と答えました。
話しを聞くと、東京方面へ向かい新橋で下車する。
とのことでした。新橋からバスに乗り換えるそうです。
友人でしょうか、すぐに携帯で連絡をとり、
小さな声で話し、電話をきりました。
「maybe, OK・・・」
と眉を少し下げた感じが気になり、
(ん?バスの時間は、間に合うのか?)と、脳裏をよぎりました。
携帯で新橋の到着時間を調べました。
14:37着。
彼に何時に駅に着ければ問題ないか確認すると、
「14:30」という答えが…(汗)
リアリーΣ(゚д゚;)
37分着な旨を伝え、バスの時間を聞くと・・・
14:40。移動時間3分です。
少し、顔色の変わる彼に、とっさに出た言葉は、
「you can do it !!!」 (あなたなら出来る!!!)
冷静になって、(今の発言は無責任かも)…なんて思た瞬間、
「yes!!!!!!! I can do it!!!!!!!!」と(苦笑)
(※こぶしまで、握っています。(苦笑)(;^ω^A))
彼は即座に友人へ電話をしました。
くち元を手で覆いながら電話する彼の声が、
「二言」、指と指の間からこぼれてきました。
その言葉は、
■「ピー」
■「カップカップ」
タイ語です。
「ピー」はタイ語で、年上の方、目上の方を呼ぶ言葉。日本でいう「○○さん 」。
「カップ」は、日本語で、「はい」や「です。ます。」を意味します。
電話を切りその目は、バスへ一直線!!!
「俺はやってみせる!!!」「俺は乗ってみせる!!!
」
と言わんばかりの輝きでした。(笑)
その彼に、「タイ?」 (*^ー^)ノと聞くと、
「なぜ?」「なぜタイだとわかったの?タイ言がわかるの!?」
と、凄く嬉しそうな表情。
「ニッノイ」 (少しだよ)
そう答えると「ニッノ~イ」(喜)
彼の心のバンザイが見えて、
あまりに少年の様で、思わず笑ってしまいました。
「タイには行ったことがある?」「タイのどこに行った?バンコク?」
「タイは好きですか?」×∞(笑)
全て笑顔でうなずくと、彼は本当に嬉しそう&少し真剣な口調で、
「聞けてよかった。僕にとって(タイ人にとって)凄く嬉しいことだ。有り難う」
と言いました。
私も嬉しさをそのままぶつけながら、
タイが大好きな事を、限られた時間の中で精一杯伝えました。
電車のイス。とても狭い空間。
だけど、彼の背景に写るタイの大草原はただただ壮大でした。
太陽の下を駆け抜ける幼少時代が、一瞬見えた様な気がしました。
「どこの国の人間だと思った?」
私は、正直タイだとはわかりませんでした。
あまりにも流暢な英語。綺麗な発音。そう答えると笑っていました。
電車は大崎駅を通過しました。
私は次の駅、品川で下車します。
彼に伝えました。「次おります。」
「What is your name?」
ここで、お互いの名前を交換しました。
「Nice to meet you 」
品川駅につきました。
「バイバイ」
「バイバイ」
席を立とうとしたその瞬間、どちらが先というわけもなく、
お互い右手を出しました。
本当にたった数分。日本とタイという全く違う国。
だけど気持ちは心は海も何かもかもを越えます。
「握手」。強く握りしめました。
そして、タイの挨拶「合掌」。
「サワディーカー(^人^)」と両手を合わせると、
彼も笑顔で「サワディカップ。」
その右手には赤と白のミサンガ。指をさし微笑むと、あうんの呼吸で、
返ってきた言葉は、「yeah、タ~イ」。
「チョークディーナ」(元気でね、検討を祈っています。)
「コープンカップ。」(ありがとうございます。)
これが、この電車に乗っていた数分の出来事です。
彼がくれた数分を、私はしっかり大切にします。有り難う。
私は、品川駅で下車し、品川のスタバでこの文を書いています。
こんなにも多くの人がいて、その中で偶然にもふれあえる瞬間がある。
人は傷つけ合うために生まれてきたんじゃない。
この世に起こる争い事がなくなる事を願っています。
痛いことを痛いと思わない人なんて絶対にいない。
みんな本当は泣いてる。
喜んで傷つきに行く人なんてどこにもいない。
だからこんなにも、ちっぽけだけど伝えられる事があると信じています。
本当はみんな、もっと優しい。
だけど、傷つくことを知ってから守る兜を備えた。
本当はもっと裸でいいんだと思う。
ひとりじゃ耐えられない夜に、大切な人がそばにいてくれたら、
何でも出来る気になれる様に、みんなもっと強くて、みんなもっと優しい。
弱さなんて、どれだけ積み上げたって決して無駄なんかじゃない。
逃げることに走ったら、きっと、自分を逃がした甘さが、
人の努力を否定してしまう人間になってしまう。
そうじゃなくて、もっと肩の力ぬいて、ありのままで生きていこう?
あなたには、あなたの形がある。
それだけで充分。
誰かと比べたりするのではなく、まずはしっかり自分を愛そう。
一番身近な存在。「自分」を、大切にしてください。
※ハンドクリームを買う時に聞こえた声。
(このためだったのかなぁ・・・)と、不思議な感覚が残ります。