彼女は閉口した。
目線が悲しげに下へと吸い寄せられる。
「シエラザード!なんで寝かせるんだよっ!」
「駄目です、寝てください!貴方が死んでしまいます!このままでは…」
「書かせてくれ!もう少しで完成するんだ!!」
主人はベッドの中で暴れました。
寝かせようとしていた私を振り切って、机に向かいます。
「やめてください!死ぬ気ですか!?」
彼は息を弾ませながらも私にこういいました。
「ああ、死んでやる。この曲を完成させられないのなら、死んでやるさ!」
何がそこまでして彼を奮い立たせたのでしょう?私にはちっとも解りません。
ただ、私が知っている事実は一つだけ。
彼は心臓の病に侵されていっていることだけでした。
だからなのでしょうか。
本当にそれだけ?
彼は、少しでも長く生をつかみたいとは思わなかったのでしょうか。
理解不能です。
私には…理解不能です。
「アーサー…」
あの曲に命をささげた彼はそのあと、死んでしまいました。
ただ、私には気にかかることが一つだけあります。
洗練されたあの曲の題名の場所には何も書いてありませんでした。
できたぞ、と言って嬉しそうに彼は笑みを浮かべました。痩せこけた顔には満足の表情しか残っていませんでした。
なのに…。
題名がないのです。
続く。