
先日、たまたま小関智弘さんの「職人学」という本を購入したのですが、その本の76~79ページにステンレスの切削についての興味深い記述があります。
ステンレスは「加工硬化性」が強く、「バイトで削る時に発生する切削熱で、削るそばから表面が硬化」してしまうのだとか。したがって、「送りがこまかいと、硬化している表面を削るから硬いと感じられるしバイトも傷むが、送りを荒くすれば表面の硬化部分を避けて、柔らかい部分を削っていくから、刃先はへたることがないということになる。」のだそうです。
※「送り」とは、材料が1回転するごとに、バイトを0.3ミリ進ませるとか、0.5ミリ進ませるとかの進み具合のこと。かつては機械工の間で「ステンレス鋼は硬い」という神話があり、送りをこまかくして、だましだまし削っていたのですが、ある事情から小関氏が思い切って送りを荒くしてみたところ、「送りをこまかくして削るよりも、送りを荒くしたほうが削りやすいし、バイトはへたらない」ということを発見するに至ったのだそうです。


ステンレスの比重は約8g/cm3でアルミ(約3g/cm3)の2倍以上の重さがあるのですが、硬度も抜群なので、競技用のヨーヨーをオールステンレスで製作する、というアイデアは決してナンセンスではないように思います。ただ、荒削りの部分はともかく、仕上げの段階での加工難度は、やはりアルミとは比べものにならないのでしょうね。