DeepMindは「知性の謎を解くこと」を目標として、イギリスで2010年に設立され、2014年にグーグルに買収された人工知能を研究する企業だ。
同社を買収しつつも、グーグルも社内で「Google Brain」などでAIの研究をしてきたが、2023年4月に、Google DeepMindとして統合され、OpenAIの「ChatGPT」の台頭を猛追する体制を整えた。
DeepMindの研究成果として有名なのは、「AlphaGo」といわれる囲碁プログラムだ。2015年に発表されて以来、プロ棋士を破る成果を挙げてきた。囲碁はチェスや将棋に比べてパターンが限りなく多く、コンピュータではアマチュアレベルまでしか強くなれないことが知られていただけに、AlphaGoは大きなインパクトをもたらした。
(中略)
「驚くべきことに、AlphaGoには、碁のルールをプログラムしていないのです。つまり、ルールを知らずに学習を始めて、プロを打ち負かしているのです。そのため、異なる遊び方や地域によって異なるルールでの対局になったとしても、AlphaGoは等しく成果を発揮することができます。さらに、碁以外のゲームを学習させることで、同じアルゴリズムであっても、異なるゲームで勝つこともできるようになるのです」
https://deepmind.google/research/breakthroughs/alphago/
「AlphaGo」という言葉は出てこなくても、AIがなんらかのプロに勝ったということは、たいていの人が知っていることである。
ただ、その仕組みとして、「ルールを知らずに学習を始めた」ことは、ほとんど知られていない。
なにが言いたいかというと、「AlphaGo」と同様に、人間も同じことをしなければならないのではないかということだ。
それはすでに、現実の世界で起きていることであり、たとえば、政治を含む世界で話題沸騰のSNSは、ほとんどのユーザーがルールを知らないまま一気に普及した。
もちろん、SNSを生み出すことになったインターネットもそうである。
これまでの社会では、まずはルールを勉強して、基本を練習して、それからやっと実践するという流れだった。
しかし今の時代は、情報が溢れていることもあり、そんなことは不要になっている。
「だから誹謗中傷や犯罪が起きている」のは、まさにそうなんだが、もはやそれを止めることは不可能だ。
であれば、「ルールを知らずに学習を始めた」を、人間にとっても当たり前にすればいい。
この考えに対して、否定的な意見が多いはずだが、そうでもしないと「人間とAIの共存」など無理なのだ。
いまや、どんなことであっても、ある程度のルールなどは、生成AIにプロンプトを送信すれば確認できる。
何か新しいことにチャレンジする際には、「お前にはまだ早い」「お前には無理だ」などという言葉は無視して、とにかく自分なりの学習をどんな形でもいいので始めてみることが「人間とAIの共存」を実現する肝になると、私は確信している。
そこで生み出されたアルゴリズムは、実践によって自然にブラッシュアップが重ねられ、いろんなケースで役立つことになる。
もちろん、その目的は「人の役に立つ」ことでなければならないことを、絶対に忘れてはならないのは言うまでもないことである。
臆病な人間は生き残れない時代なのだ