壊れていくものを眺める。
おれにとっても大切なものだったけど。
なにかを信じることはむずかしい。
未来とか。
強さとか。
形あるものとか。
だれかの気持ちとか。
あたりまえのことさ。
どんなものもかんたんに信じることはできない。
壊れていくものは眺めるしかできない。
そのことをおれはよく知っている。
すべてはなるようにしかならない。
別にそれでもいい。
どうでもいい。
むしろそんなときは好機だ。
おれにとって本当に大切なものを考え直すことができる。
形のないなにかがおれの肩におりてくるのを感じて耳をすます。
風の子どものようにおれになにかを伝えて通り過ぎていく。
目をとじておれはそれに従う。
彼は人びとにとって悪いことはぜったいに伝えない。
おれは彼に守られてきた。
これまでそうやって生きてきた。
ずっとそうやってきたんだ。
おれにはそれしかできない。
だからそうするしかない。
耳をすます。
静かに。
壊れていくものを眺めながら。
彼の言葉を感じている。