いくら忙しくても空を見るくらいはできるよ。
南からかわいた風が吹いてきたのを感じていた。
まだ朝だからすべてが新しい。
行き交う車の音も尖って聞こえる。
おれの皮膚や粘膜がすべてを拾いあげてくれる。
空をはやい気球が通り過ぎた。
それくらいわかるよ。
いろんなものを感じる。
気持ちが鋭くなるんだ。
そういうのが好きだよ。
夕方までにぜんぶ削りとられてしまう。
ぼくらは恥ずかしい思いを感じながら逃げるみたいにして家に帰るだろう。
毎日。
気球はとっくに遠くへいってしまった。
最初のかたちなんか覚えてられない。
もう見えないくらい遠くへ。
もしそうしたければ追いかけて見にいけばいい。
ずっと遠くへ。
今の気持ちを忘れないでほしい。
たいてい、夕方にはなにもかもなくなってしまうんだ。
大切にしようと思っていた気持ちは水蒸気みたく消えてしまう。
毎日。
毎日。
少しずつ。
