まぶたが重くて頭のてっぺんから串を刺されてるような疼きがあった。
足を一歩ずつ運ぶのだけがおれができることのすべてだった。
集中力を使い果たした帰り道はいつだってこんなものだ。
悪い気持ちはしない。
街には相変わらず人がつまってる。
ここはおれの学校だったけど家でもあった。
もう動けなくて帰れなくなって道端で寝ることもあった。
たまたま女の子と出会えてしゃべりまくってるうちに友だちになって朝までベンチで一緒にいたりした。
なぜか誰かの車に乗ってて気がついたら海にいたこともあった。
それほど広くない車内に八人くらいいて知らないやつばかりでやたら盛り上がってた。
そういうこともあったというだけの話で、本当のことを言えばおれはかなりの人見知りなんだよ。
今日は家にいる。
帰ってこれてよかった。
おれひとりだったらわかんない。
途中で座りこんじゃったかも。
もう寝るよ。
今夜、会おう。
会いにくるだろ。
こないだみたく。
あの頃、おれたちはどんな話をしたんだろう。
ぜんぜん覚えてないんだよ。
教室っていうのがおれの記憶に一切ないんだ。
おれはさ、今でも本物の学校にある教室に行くのがつらいんだよ。
娘の授業参観日とかさ、泣きそうになるよ。
教室って木ばかりでできてるんだから。
息を止めて泣きたくなるよ。
やさしすぎる色。
おれは子供のころから授業を受けるのが苦手でね。
教師の話っていうのを聞いた覚えがほとんどないんだ。
勉強は参考書を読んで問題集を解いてどうにかやったよ。
目的があれば方法なんかどうだっていいと思うのは今でも変わらないし。
授業中はたぶん、いつもおまえに話しかけてたんじゃないかな。
だって、他にやることないんだから。
悪かったな。
迷惑かけたよ。
そんなこともないのかな。
おれはひとりで遊んでたのかもしれないな。
勝手に。
机に何かかいたり。いやらしいことを想像したり。
おまえは利口だからおれのつまらない興味なんかは踏みつけてくれてたのかもしれない。
人はそれぞれできることしかしないから。
おまえはおれと遊んでくれなかった。
冷たい女の子。
一緒に朝までいてくれたらよかったのに。
隣りにいてぼくの知らないことを教えてよ。
おれは変わった。
それと同じように君も変わった。
会いたい夜、会いにきてくれる。
そうだろ。
君がもしそうしたかったら何もしゃべらなくていいよ。
おれが一つひとつ言うよ。
今日あったことを。
ちょっと噓もまぜるけど。
そのほうがたぶんおもしろいから。
今日はいい一日だったんだよ。
本当にいい日だった。
聞いてほしいんだ。
おまえに。

