薄雲は星のささやきを聞こえなくしてぼくらにさびしい思いをさせる。
前を見つめて歩くぼくらは団地の穏やかなあかりを見つめていた。
君はぼくのことを嘘つきだと思っている。
駅はもうすぐだから罪悪感もそこで途切れてしまう。
君はすべてぼくの計算通りだと思ってあきれてるけど、けっきょく今夜も何も言い出さないだろう。
似ているんだ。ぼくらは。
ぼくは考えている。
こんな気持ちのとき、君がしゃべらない理由は嘘がこぼれるのが怖いから。
君の唇が好きなのに。
君の動かす唇が。
君の脳が指令を与えてからわずかに動く唇。
ぼくはその一連の動きを見守るのが大好きなんだ。
君の唇は動かないまま。
唇の下の小さなほくろ。
ぼくが守りたいのは、つまりそれだ。
さようなら。
また新しい一週間が来る。
駅が近づけば道がだんだん明るくなる。
君の横顔がかんたんに見れるからぼくはうつむいて歩くんだよ。
光に照らされた看板がやたらと目につくけどそれらの言葉は意味をもたない模様だね。
ぼくは君から何を奪おうと思っているわけじゃない。
息を止めて歩こう。君の雰囲気を消すために。
ぼくが交差点で立ち止まったら君はそのまま行けばいい。
振り返らずに。
星も月もない夜空だけど、かならず明日が来ることを君は知ってる。
薄い背中から覆いかぶさる色とりどりの光は重力を持っているみたい。
ぼくにはそんな文字は読めない。
人の作った光はぼくにとっても重すぎる。
君の背中を見ている。
君はやっとのことで歩いている。
それしかできない。
ぼくが悪い。
きっとぼくが悪い。
早く明日になればいいのに。
何もかもが元に戻れる。
ぼくだって。
きっと。
駅の階段をのぼるときに振り向いた君の目。
ぼくはちょっと顎をあげた。
またね。
