留学 vol. 1 | 留学 虎の巻  -TIGER's Blog-

留学 vol. 1

まず、留学を決めた頃から遡って書いていきたいと思う。

 

留学すると決めたのは、高校二年の頃だった。
それまでは、いわゆる優等生で毎日毎日朝早くから学校へ行き、
深夜まで勉強していた。
テストでは常に高得点で、学年でも何度か一位を取ったりもした。
最初はそれが楽しくて仕方なかった。
親からも教員からも褒められ、悪い気はしない。
次々にくる答案をいつも楽しみにしていた。

 

そして高校が始まり二年が過ぎようとしている。

 

この頃から、どこか毎日が途方もないラットレースに思え始めていた。
正直、テストの範囲は広いと言っても、
前日に詰め込めば要領はわかっている(あの先生はここ出すな等)ので、簡単に点は取れる。
ただマシーンになって暗記しておけばいい。


数学も授業中にした記憶のある問題の数字を変えたもの。
英語なんか翻訳機のごとく、手が真っ黒になるまで日本語訳をする。
Writingでは例文を丸暗記して、用紙に書き込む。
(これらももちろん教科書と同じ内容。よって、もう日本語訳というか内容を丸暗記して
問題文の英文も見ずに書くという芸当をやっていた。それでも90点は取れる。
しかし力試しのつもりで前もって全く読まずに初めて出会う文章のつもりでやれば、
確実に解き終わらない。読めても日本語訳していたらチャイムがなる。
それで一度60点くらいを取って、どうしたの?と言われたことがあった。
初めの半分以降は真っ白だった)


いつものように考査が終わり、次々に渡される答案をみて思う。

うれしくもなんともない、いつもと同じ点たち。

いったい自分は何を勉強しているのだろうか・・・?

 


学校生活にも慣れ、本を読む余裕もできた。
近所の図書館に行くのが日課になっていた。

 

本棚の間をぐるぐる回り、何か楽しそうな本はないかといつものようにぶらぶらしていた。
図書館の隅の方にある本棚がやけに気になった。暗くじめじめした感じが興味をそそる。
古ぼけた木製の年代物。
自然と足はそれをめがけて動いていく。

 

それは作家たちのエッセイを集めた棚だった。
人の随筆を読むのはそこまで好きではない。考えを押し付けるものが多いからだ。
その中でも挑発的なタイトルが目に飛び込む、


「1度の失敗であきらめるやつ、10度の成功で満足しないやつ」

 

手を伸ばし、広げてぱらぱらとめくる。

 

読み始めたとき、この筆者は何を偉そうに人生訓を語っているんだ、と冷めていた。
「考えない人間は、豚と同じだ」
「俺はくじけそうになったとき、こうやった・・・。だから成功したんだ」、等。

 

まぁ、世間に溢れた処世訓を書いた本だろうと思って、ざっと流していた。

 

ふと、ある章に興味を引かれる。

日本教育についての章だったと思う。

 

 

この時から、僕の人生は大きく変り始める。

 

 

自分の今感じていること(日本社会の閉塞感、意味の薄い受験戦争)を的確に表現していた。

教育に対する怒り、そして思考が停止してしまっていた自分への憤り。

それを感じずにはいられない文章だった。

 

 

彼は僕に強く語りかける。

 

「おまえは何を勉強しているんだ?」
「顔を上げ、もっと世界を見回してみろよ」

 

大切なものを失いかけていたことに気付いた。

 

 

それ以降、僕は本をむさぶるように読み出した。
政治、経済、歴史、コンピューター関連の本、あらゆるものに手を出した。
どんどん世界が広がっていくことがわかる。
楽しい、なぜこんなにもワクワクするんだろう。と思った。

 

「今まで自分はなんと小さな檻の中に閉じこもっていたことか!
そして、なんと現状に満足し思考を停止させていたことか!」

 

 

それからというもの、もう学校にもあまり行かなくなってしまった。
朝から図書館に行って、本を読む。


退屈な授業はもう必要なかった。

 

そうして、僕の目は世界へと向かっていった。

 

feg   photo; N. Y.




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