2019年3月8日。
ついにこの日が来た。
「Wake Up, Girls! FINAL LIVE ~想い出のパレード~」その日だ。
以前ならこの日が来なければいいとだけ思っていたのに、いざ近くなってくると最高のパフォーマンスが見たいという気持ちも沸きあがってくる。
結局俺はただ美しいものが見たいのだろう。現金な人間だ。



●公開リハーサル

 

 

13時から、わぐらぶ会員限定の公開リハーサルが催された。
約2600人が参加したというこのリハーサル。
コールも入り実質ミニライブのようなものだった。
『7Senses』『極上スマイル』『僕らのフロンティア』『スキノスキル』がフルで披露される豪華っぷり。

そして「本番でやらない曲をやります」と言って披露されたのが『リトル・チャレンジャー』『止まらない未来』の2曲だ。
リハーサルにもかかわらず、ここの『リトル・チャレンジャー』で号泣してしまった。
いつも以上に泣いたのは「本番でやらない」という前置きに「今ここで歌われているのが最後になんだ」と強く実感してしまったから。
I-1 Clubの曲で一番セトリに組み込まれそうなこの曲が歌われたということは、本番ではI-1の曲はやらない=WUG曲だけで勝負する。という覚悟が見えたからだ。

失われていく寂しさを感じるのと同時に、ライブへの期待が膨らんだ。
間違いなく最高のライブになると。



●本番
連番者が遅刻するというアクシデントがあり、開演10分前の慌ただしい入場となった。
エントランスをぐるりと回り場内に入ると『ハートライン』が流れていた。
「よっぴー!よっぴー!」「まーゆしぃ!まーゆしぃ!」とコールをしながらペンライトや飲み物の準備をする。

開演前の影ナレはアニメWUGから松田、丹下社長、早坂さんによる会話だった。感慨に浸る3人。
アニメのWUGちゃん達も登場。激励の言葉を受けた彼女たちは「行ってきます!」とステージへ歩を進める。
新章の最終回の後、彼女たちもここに至ったのだろうか。

オープニングムービーが流れた。4thツアーを思い出させる演出だ。
制服に身を包むリアルWUGちゃんが、それぞれの出身地からさいたまスーパーアリーナへと集う映像。
日本各地から集まった少女たち。この7人が集まったことがいかに運命的であるかを実感し、図らずも涙を流してしまった。

映像から抜け出してきた7人のアイドル、「Wake Up, Girls!」のお出ましだ。
始まりはもちろんこの曲から。


『タチアガレ!』
「行くぞ!SSA!」というまゆしぃの咆哮が引き金となり、センターステージ前のバズーカが発射される。
火花と轟音はこれから始まるパレードの開幕を告げる祝砲のようだった。
一曲目から燃え尽きる勢いのコールをぶつけた。
さいたまスーパーアリーナという会場ですら収まりきらない熱量の歓声が天を叩いた。
俺が初めて聴いた曲も『タチアガレ!』だ。TVアニメの第1話のOPはまだこの曲が使われていた。他にもたくさんの想い出がある。
WUGちゃんが一番歌ってきていつも寄り添っていたこの曲は、自分にとっても“特別”がいっぱいだ。
この日もまた勇気をもらって、ファイナルライブという戦場へ飛び込んだ。


『16歳のアガペー』
サビで推しメンの名前を呼ぶコールがある。
箱推しの俺はいつものように「WUGちゃーん!!!!」と叫んだ。
最後の呼びかけになるからだろうか、心なしか同じように呼ぶワグナーが多くいるように聞こえた。
この曲も最初期の曲で幾度となく歌われてきた。

運命みたいな瞬間 信じて まっすぐ君と歩いていたい

信じて歩き続けた結果、この運命みたいな瞬間を迎えられたのかもしれない。


『7 Girls War』
スクリーンにはアニメ1期のOPが流れていた。サイリウムの海はもう車中で見る夢ではないんだなと、会場を埋め尽くす13000人の光を眺めて思った。
でもね 一緒に流した涙ふぁー!」と高らかに歌うよっぴー。
ここでやってくるかとニヤけてしまった。
この歌い方がわざとなのだと分かる人間はこの会場の半数くらいなのかもしれないと思うとまた不思議な気分になった。
みにゃみの声、ちゃんと聞こえてるよ。


自己紹介も兼ねたMCパートを挟む。
今回のライブは曲数を増やした代わりに全体的にMCが短めだった。
その短い挨拶の中にもこのライブへの感謝と、絶対に成功させるという熱意が強く感じられた。


『ゆき模様 恋のもよう』
「この服で歌いたい曲があります」と聞いたときは『言の葉 青葉』が来ると思いワグナーブレードを緑色にした。予想は外れた。隣の友人よすまなかった。
制服姿での『ゆき模様 恋のもよう』もいつぶりに見るのだろうか。
ウィスパー気味の歌声は広い会場の隅々まで届けられた。
清純なイメージ溢れるこの曲にはやはり制服姿が似合う。
そうして舞台「青葉の記録」のことをまた思い出した。あの時のようにすれ違っていた彼女たちはもういない。あたたかな光の雪が頬をほころばせた。


『言の葉 青葉』
盛岡公演以来、またひとつ意味が加わったと思われるこの曲。
がんばってねと かんたんに言えないよ」という歌詞がある。
逆説的に言えば、簡単に言えないその「頑張って」にこそ強い力があると俺は解釈している。
活動を始めるにあたって東日本大震災とWUGちゃんは向き合ったのだろう。
私たちに何ができるのか、私たちがすることに意味はあるのかと悩んだこともあっただろう。
それでも未来につながる何かがあると信じてこの道をずっと歩いてきたのだ。
間奏ではスポットライトが振りに合わせて移動していく。魂の光がWUGちゃんの手を渡っていくようだ。
逆光気味で彼女らの表情ははっきりとは見えなかった。
WUGのルーツとなっている震災復興への想いが確かに感じられた。初めてWUGに触れた人にも何かしら切なく感じるものはあったのではないだろうか。
『言の葉 青葉』はイーハトーヴシンガーズという合唱団の方々が歌い継いでくれる。
まずひとつ、思いが、声が未来へ枝葉を伸ばしていく。


新劇場版までのいわゆる「旧章」WUGのアニメ映像がスクリーンに映される。
短いながらもWUGの半生がわかる数分間だった。
『そして次のステージへ』の文言の後、2度目のWUGちゃんの登場。
イメージカラーの大きなリボンを付け加えたHOMEツアー黒衣装の改造版を着ていた。


『One In A Billion -Wake Up, Girls!ver.-』
今公演のセットリストは時系列順だろうと思っていただけにここでの「OIAB」は予想外だった。
WUGちゃんに当たる7色のスポットライトに加え8つ目の白いスポットライトが灯る。オリジナルでは共に歌唱するMay'nさんもそこに立っているかのような演出は嬉しかった。
『OIAB』の中では「ファジュファジュ」(find you find you)というコールが好きだ。
WUGちゃんとMay'nさんが、あるいはWUGとワグナーが出会えた、“見つけ”合ったという奇跡を実感する。
この時代この場所に生まれて、WUGを知れたということがとても幸せなことなのだと噛みしめられる一曲だ。


『素顔でKISS ME』
横一列に並ぶサビのフォーメーション。
1フレーズ歌うと90°回って下手側に向けた横一列になった、と思ったらまた180°回って今度は上手側に向けてのパフォーマンス。見事なフォーメーションチェンジに「舞台回転してないよな!?」と驚きを隠せなかった。
このSSAという会場に合わせてさらに進化を続けるWUGちゃんにはただ感服するばかりだ。


『恋?で愛?で暴君です!』
同じくアップテンポな曲でもアダルトでクールな前曲から一変して、キュートでポップなパフォーマンスにメロメロになってしまった。
センターのよっぴーのイキイキした表情にはつられて笑顔になってしまう。
ダンサブルな曲が続いても衰えないパフォーマンスには確かな成長を感じた。


~キャラソンサビメドレー~
『ハジマル』『可笑しの国』『ステラ・ドライブ』『スキ キライ ナイト』『オオカミとピアノ』『歌と魚とハダシとわたし』『WOO YEAH!』とキャラクターソングvol.1を披露。
一人一台のトロッコに乗り、隅から隅まで移動するWUGちゃん達。
今歌っている子を見ればいいのか、それとも目の前に来た子を見ればいいのか。ペンライトは何色を振ればいいのか。
若干の混乱はあった。そして、この時ほど目の数が足りないと思ったことはない。
サビ始まりで心の準備ができてないにもかかわらず「かやが好きー!」や「シャンシャンシャンシャン!」というコールは高らかにホールに響き渡った。
自分も含めたワグナーの身体に染みついてしまったのだろう。練度の高さが少し誇らしい。
この日、初参加の友人に対して「サイリウムは赤青白緑4色渡せばいいか。いや、キャラソンが来る可能性もあるな……」と新品の8色ペンライトを準備して貸したのは我ながらいい仕事をしたと思った。

『Non stop diamond hope』
止まらないで走り続ける私たち
 レベルアップを繰り返して

とは最高を更新し続けたWUGちゃんにはなんてふさわしい歌詞なのだろう。
このメドレーでは近くに来たメンバーカラーにペンライトの光が変わっていき、客席は七色に塗り分けられた。
そうして自然と生まれた七色のキラメキは宝石のように曇りなく輝いていた。


『ワグ・ズーズー』
初めての人もサビの振りは見よう見まねでやってくれた気がした。
童心に帰ったような純粋な「楽しさ」をこの曲には感じる。
曲終わり、まゆしぃに襲いかかるポーズをしたみゅーちゃんはしっかりカメラに捉えられていた。
いや楽しい。



次の幕間に流れたのは「WUGちゃんねる!×がんばっぺレディオ!」のコラボ映像だ。
2年、3年と続いた冠番組、そのスタッフからのプレゼントのようにも思えた。
ジャージ姿のWUGちゃん7人での和気あいあいとした雰囲気は初見の人にも伝わっただろうか。感情爆発野郎よっぴー。
センターステージに板付きで現れたWUGちゃんは5周年衣装を身に纏っていた。


『HIGAWARI PRINCESS』
普段は持ち回りのソロパートを7人で歌うという超レアな7人プリンセスver.。
今日は私がプリンセスです」のラストも全員で歌った。
俺が思うWUGの魅力として「全員がセンター級」というものがある。
それがこのワンフレーズだけでも証明されたかのようで嬉しかった。
一人でもWUG、七人でもWUGなんだよな。


『スキノスキル』
優雅で可憐なダンスに見惚れる。
「like fairy tales  your fairy tale
「事実は小説より奇なり」という言葉のようにWUGの活動はファンから見てもドラマティックなものだった。
七人の個性あふれる女の子が織りなす物語はまるでおとぎ話のよう。
完結してたはずの世界を 変えてゆけるんだね」とはWUGちゃんにこそ投げかけたい言葉だ。
レールを外れ、誰も知ることのない物語を紡いでいく様はいつもワグナーを次のワクワクへと引っ張って行ってくれていた。
そうして未来を切り開いていく姿に心底惚れていたんだなと、そんな想いをこの曲中は抱いていた。


『僕らのフロンティア』
いつまでも競争しよう
 きっとどこ切りとっても
 たぶん何年たっても
 先までゆけるはずだ もっと もっと
 なんて 思っているんだろう

という言葉がこれからのWUGちゃんたちの行く末を暗示しているかのようでグッときて、涙がこぼれてしまった。
みにゃみが強く凛々しく見えたこの曲。アリーナ前方に見えた黄色の光はまさに太陽のようで彼女の光を照らし返していた。
最後の「進め 僕らのフロンティア」の歌声は澄んで重なり、どこまでも遠くに響き渡った。


『7 Senses』
この曲を初めて聞いたのは4th仙台の時。

「だからみんなすてき 違う役目があるんだ」という言葉に感動したのを覚えている。
ひとりひとりの個性が強くてそれが集まるとより輝く、というのがWUGの一つの魅力であり、それを歌にしたかのような曲が『7Senses』だ。
コールでもそうだ。「みにゃみー!」「あいちゃーん!」とそれぞれのメンバーの名前を呼んだ後の2番サビ前、「WUGちゃーん!!」のコールが入る流れがとても嬉しくて気持ちいい。
コールが入らない曲が続いたことで喉は回復したが、まゆしぃの「来いやぁ!!!」の煽りに応え叫ぶとまた一気に消耗してしまった。
この曲はリハーサルでも歌われたが、「約束の地でみていて 約束の時みていて」のフレーズの刺さり具合は本番の方が段違いに強かった。
この場所が“約束の地”であり、この瞬間が“約束の時”なんだと実感し、達成感を感じていた。


『極上スマイル』
ステージにコールの文字が出ていたが、トロッコのWUGちゃんに夢中でおそらく誰も見ていなかった。
知名度の高さからも全体の盛り上がりとしては一番だったのではないだろうか。
間違いなくWUGの代表曲の一つといっていいだろう。
去年のアニサマもこんな風に盛り上がったのだろうかと頭の隅で考えたのは一瞬で、あとは無我夢中でコールをしていた。
この曲を歌うWUGちゃんの前では笑顔にならざるを得ない。



WUGちゃんが一度退場した後、スクリーンにはアニメWUGでI-1Club、ネクストストーム、Run Girls, Run!を務めたキャストの方々からWUGへのメッセージが流れる。
ほぼ無言でモニターを見る観客。名前が表示されるとただ拍手を送る。
この時も不思議と観客の心が一つになっていたように感じた。
再び舞台に戻ったWUGちゃんが着ていたのは白と緑のMemorial衣装だった。



『雫の冠』
魂のようなものは続く」というフレーズもまた、今このときのWUGを表している。
この日のまゆしぃのソロ歌唱はどこか儚さを感じるものがあった。
最後のこの時だからと凝縮された気持ちが一言・一音に乗せられとても大事に紡がれていた。


『少女交響曲』
人と人とが つながるって奇跡
 次の瞬間 この手は離れるから
 ごめん、さよなら

Cメロのまゆしぃとよっぴーのソロパートの掛け合いが史上最高に凄まじかった。
いつもは二人手を合わせるだけの振りもこの日は握り合っていて、二人の絆がいかに強いかを示していてゾクゾクした。
別れの言葉が強く胸に刺さり、嗚咽を漏らしていた。


『Beyond the Bottom』
「来たか──」
4人と3人が向き合うフォーメーションのシルエットがセンターステージに並んだ時に呟いていた。
ずっとずっと待っていた時が来たのだ。

それは圧巻の一言。
「アニメ映像の直後じゃない」「衣装が違う」といった演出の物足りなさは些末な問題だった。
魂を削り、命を燃やす7人のパフォーマンスはこれまで見たことがない次元のものだった。
見ている俺は手足が震えて立っているのがやっとで、ペンライトを振ることも振りコピも口パクもできない。初めての体験だった。

こうして誰も彼もが 心と歌を忘れる」と本当に“心を忘れた”ように無感情で歌うよっぴー。
徐々に感情を昂らせていくその表現の幅の広がりに鳥肌が立った。

1番が終わり放たれた「WUG 最高!」の一言は、実波のセリフ再現にとどまらない、みにゃみが心の底から湧き出た思いが乗ったものだった。

伝えてよ 優しかった君に」、初めて聴いてから3年以上の月日が流れた今、みゅーちゃんの声もどこか大人びて聴こえた。

世界はまだ闇の中 でも新しい朝は来るさ」と悶えるように身を竦めるあいちゃん。
小さい体で、傷つくことに耐えている姿にいつも胸が苦しくなる。
その後の間奏での解放された笑顔が際立つ。

幸せに裏切られた君を抱きしめる」と手を差し伸べたななみん。
感情・表現の違いが顕著に表れるこの部分。
時に苦しみ、時に憤りながら歌ってきた彼女が最後に見せた表情は笑顔だった。
強く、本当に強くなった。

まゆしぃはまるで誓いを立てるように「世界中の憎しみを 全部僕が受けとめるから」と歌う。
数々の逆境を潜り抜けた彼女らならその言葉も真実味を帯びてくる。

かやたんの「祈り捧げる」姿はHOMEツアーPart2あたりでは激しさを抑えているように見えた。
今まで外に出していた熱を一度内へ内へと凝縮して
HOMEツアー後半では再び放出して、外から中からこちらの心を叩き始めた。
そうしてたどり着いた一つの完成形は女神のようにどこまでも美しかった。

『Beyond the Bottom』という楽曲は最も完成から遠い曲だと俺は思っている。
あまりにも業が深すぎるこの曲。抽象的な歌詞は何度解釈をしても正解にたどり着いている気はせず、そんな心境で踊る振りも全てを表現しきれているか分からないまま舞っていたこともあるだろう。
それでもこの時はこの楽曲はひとつの極致に至った。
ヒトの根源的な強さと美しさを垣間見ることができた。
Wake Up, Girls!にしかできないパフォーマンスが確かに存在した。

 


『海そしてシャッター通り』
新曲でありながら原点・始まりを思わせる不思議な楽曲。
東北に根差したWUGの背景が初めて来た人にも伝わってくれてれば嬉しい。
この曲には鎮魂歌のような印象も受けていて、3/11を目前に控えたこの日に聞くとより心にくるものがあった。


『言葉の結晶』
熊本公演以来、二度目の衝撃が襲いかかってきた。
WUGの“歌って踊る”行為のレベルの高さを最も表しているのは『言葉の結晶』だろう。
あれほどの激しいダンスを踊りながら、ほぼブレず、かつ思いを乗せて歌えるアイドルはなかなかいないだろう。ひとつの芸術作品のような楽曲だ。
よっぴーが「輝きだけが 言葉の絶唱」と歌い終えた後に、声とも息ともつかぬ音がマイクに乗っていた。
「休符を歌う」彼女ならではの表現が沈黙が訪れる数瞬前にわずかに残り、すっと体の中心に届いた。


『土曜日のフライト』
初めて見るしボロボロ泣くだろうな──と思っていたがシクシク止まりだった。
それよりもWUGちゃんの美しさと気高さにただただ見惚れてしまった。
棘は抜いておいた もうそのレベルじゃない」と不敵に笑うななみんには「女性」の怖さのようなものも感じた。
みにゃみが歌う「悔しい怖い泣きたい もうそのレベルじゃない」のフレーズではWUG7人曲ではあまり見せることのなかった激情的な面が見られた。


『さようならのパレード』
この曲でもWUGちゃんの「強さ」が一番に伝わってきて、泣くよりも今この一瞬を見届けなければならないという使命感のようなものが先立った。
別れの曲でも、暖かみのある彼女たちの歌声に寂しさはさほど感じなかった。
間奏の「Wake Up, Girls!」コールも以前はイメージが沸いてなかったが、スクリーンに映し出されたロゴを見ると確かに体の内から言いたくなるなと、声に出しながら思っていた。
そして最後のかやたんの「みんなで、せーの!」の呼びかけには、「Wake Up!」と応えて「また会おう」と新しく約束を交わせた気がした。
ひとりひとりのお辞儀には万感の想いを込めて拍手を送った。


本編は一度幕を下ろす。
耳慣れた歓声が鼓膜を叩く。
「Wake Up, Girls! Wake Up, Girls!」
今まで何百何千とこの言葉を口にしただろうか。
そんなアンコールもこの日が最後となる。
もちろん席に座ることはない、渾身の想いでその名を呼び続けた。
過去最大の歓声に応えて再び7人が舞台に姿を現した。


『SHIFT』
アンコール明け一発目はHOMEツアーPart1でも皮切りとなった『SHIFT』だ。
何十回と「Wake Up, Girls!」と叫んだのに、ものともせず喉奥から出てくる「レッスン!レッスン!」のコール。
しんみりした空気はどこへやらと、はじける笑顔でパフォーマンスをするWUGちゃん。
鍵はもう探す必要はないか。


『地下鉄ラビリンス』
乗り込めないと歌いながらもトロッコに乗り込むWUGちゃん。
よっぴーの煽りも板についたラップバトルという名のコール&レスポンスは最高に盛り上がった。
これからは7人全員が先頭車両になって、いちばん前の風景を見ていくことになるんだな。
ね いちばん前の風景が見たい
 ぐっと 夢を胸に抱いて
 ね 迷いながらも進んでく



『TUNAGO』
東北6県とはこの曲が一番向き合ってるのかもしれない。
東北・ワグナー・そして自分をWUGが懸け橋となって繋がりを広げてくれた。
4thツアーの表題曲となったこの曲だが、先のHOMEツアーでも「ふるさとが にぎわい広がっていく」感覚があった。
WUGのコンセプトにして魅力の一つでもある、故郷を感じさせる温もりが『TUNAGO』には詰まっている。
曲の最後はWUGちゃんと共に7度手を前に差し出した。


姿を消したWUGちゃんを呼び戻す2度目の「Wake Up, Girls!」コール。
予定調和だろうがなんだろうがおかまいなしだ。
1度目と変わらないかそれ以上の熱量で叫び続けた。
そんなダブルアンコールの中Polaris衣装でWUGちゃんが戻ってきた。
その手にはこの日のために書き上げた手紙があった。

ひとりひとり読み上げていく。

みゅーちゃんは何度も「ありがとう」と言ってくれて、その度にしあわせがひとつずつ増えていった。
終いにはその「ありがとう」に「ありがとう」と答えていた。

ななみんはちょっとしたユーモアも混ぜていてななみんらしいなとほっこりした。
そして「Wake Up, Girls!は声優山下七海の核」と言い切る芯の強さにまた惚れ直した。

みにゃみはいつものようにしっかりと読み始めても、途中から涙を堪え切れずに詰まってしまって。
俺はただ見守ることしかしなかったけど、最後には笑顔を見せてくれて。
いっぱい泣いていっぱい笑うみにゃみが好きだなと改めて思った。

まゆしぃはほんのちょっとだけ芝居がかって読み上げた。
「この7人のセンターに立つことは無い」と言葉にした時には現実が一気に押し寄せてきた。
「Wake Up, Girls!をこれからもよろしくお願いします」と託された時には使命感が生まれた。
まゆしぃがWUGのセンターで良かった。

あいちゃんは俺たちと一緒でWUGは最強のグループだと言ってくれて。
今気づかれなくても5年後10年後に評価される自信があると言ってくれて本当に嬉しかった。
少しポエミーな文章があいちゃんらしくて素敵だった。

かやたんは最後までかやたんらしかった。
たぶん本人は思ったことをつらつら書いてるだけなのだろうけど、それがまた面白い。

よっぴーは感情爆発野郎だった。いやもうずっと泣きながら読んでるんだから。
「WUGは7人じゃないとなんかダメでした」ってふんわりした文章が一番心にキタ。
「みんなの人生も明日から第2章です」なんて勝手に決めちゃってくれて、そう言われたらまた始めるしかないよな。
いややっぱ3月いっぱいは浸らせて。


7人が7人なりの文章を綴り、口に出していく。
ずっと小出しにしていた涙も、この言葉を聞いては抑えが効かなかった。
次の曲も彼女たちが紡いだ言葉が乗せられた一曲だった。


『Polaris』
手紙を読んだ直後で歌いだしからよっぴーは涙声だった。

センターステージで作られた7人の円陣、それが表現する「7人だけの世界」にはもちろん泣かされた。
でもこの日はそれだけで終わらなかった。
WUGちゃん自身が作詞し、あいちゃんが振り付けをしたこの曲は一番WUGの想いが詰まっているだろう。
去年のアニサマでも歌われた『Polaris』だが、また意味合いは変わってくる。
今日この日この場にWUGを知らない人はいない。
会場の大半が白から赤へ変えたペンライト。
「lalala…」やラストの大合唱や肩組み。
あの時とは比べ物にならない一体感や信頼感がそこにはあっただろう。
WUGちゃんと共にワグナーたちも、歩んできた証をSSAという約束の地に刻んだのかもしれない。

落ちサビでまゆしぃが「満天の星空を ありがとう!!」と叫ぶと銀テープが発射された。
最後の煌きを放つ超新星爆発のようにも見えた。



とても充実した時間。
もう歌い残した曲はないと言ってもいいのに、
「Wake Up, Girls!」のコールは鳴りやまなかった。
そうしてWUG初のトリプルアンコールが実現する。
次が最後の曲なら歌ってほしい曲が俺にはあった。



『タチアガレ!』
「もっとはしゃぎたいはずだ!まだまだ声が出せるはずだ!」
そんなまゆしぃの煽りに内心不安になっていた。
(タチアガレ!だよな……頼むタチアガレ!を……!!)

流れ始めたイントロは願っていたメロディだった。

縦横無尽にステージ上を駆け回るWUGちゃんを見て2014年のWUGfesを思い出す。
それまではシリアスな曲であまり笑わずに歌う曲だと思っていたが、あの日にガラッと印象が変わった。
「あぁこんなにも自由で前向きな曲でもあるんだな」と。
まゆしぃの「叫べ!」の煽りには史上最大の「タチアガレ!」コールが産まれた。
落ちサビではよっぴーの「みんなで!」の掛け声でWUGちゃん7人で歌い、ワグナーも一緒に歌っていたように聞こえた。
『タチアガレ!』が最後の最後でまた目覚めた瞬間だった。

「Wake Up! 眩しい日差し浴びて
 今 胸の希望が君と重なる
 Stand Up! 明けない夜はないから
 明日の笑顔 信じるんだ

 Wake Up! この祈りよ届け
 今 夢に向かうよ 両手伸ばして
 Stand Up! 迷いなく走りだそう
 この世界で 生きるために
 
 君と共に my only one.」


始まりの曲が終わりの曲になって、再起が旅立ちとなった。
こうやってWUGちゃんの背中を押していくんだと、最後は清々しい気持ちになれた。



応援と称賛の気持ちが込められた4度目の「Wake Up, Girls!」をコールを背にWUGちゃんはセンターステージへ駆け出した。
上段のステージまで登り詰め、横一列に並ぶと何かを察してかコールはだんだん小さくなる。

一瞬の静寂の後よっぴーが口を開き、WUGちゃんが続いた。


「以上、「Wake Up, Girls!」でした! ありがとうございました!!!!!!!」


最後の挨拶はマイクを通さない飾らない7人の声だった。

客席の自分とステージのWUGちゃんとの遠い距離が嘘かのように、その声は確かに耳に届いた。





最後の「Wake Up, Girls!」コールはステージから彼女たちが姿を消しても止むことはなかった。










●お見送り会

終演後はわぐらぶ限定のお見送り会に参加した。
遅々として進まない列に並ぶこと数十分、いよいよ自分の番が来る。
横並びのWUGちゃん7人の前を通過するだけのイベントで、与えられるのは一人頭1秒程度の時間。




よっぴー ありがとう


かやたん ありがとう


あいちゃん ありがとう


まゆしぃ ありがとう


みにゃみ ありがとう


ななみん ありがとう


みゅーちゃん ありがとう




――と、それでもひとりひとり目を合わせて名前を呼んで感謝の言葉を伝えることができた。
5年分の想いと好意を「ありがとう」の一言に込めて。





●まだ

「Wake Up, Girls!」最後のライブは最高のライブとなった

解散という現実を忘れるくらい夢のように楽しいひと時だった

これほどまでに人の心を動かしひとつにした

WUGちゃんは最強の7人だと今なら力強く言える

……本当に終わったのかまだ信じられない

これから実感していくのかもしれない

いつかなにかが起こるかも

そんな未来を信じて今は前を見ていようか


まだ目覚めない夢が永遠に続くならば
振り返らず進むだけでいい

 

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